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法人化した年の個人の確定申告 — 事業所得と役員報酬を1枚の申告書に、青色申告特別控除・予定納税の減額・個人事業税の見込控除

年の途中で個人事業を法人にすると、その年の確定申告はどうなるのか。個人としての最後の申告は、原則として無くなりません。1月1日から廃業の日までの事業所得と、法人から受け取った役員報酬の給与所得を1枚の申告書で申告します。青色申告特別控除の扱い、予定納税の減額申請、個人事業税の見込控除、消費税の届出を順に整理します。

この記事の要点

  • 法人化した年の個人の申告書には、1月1日〜廃業日の事業所得と、設立後に受け取る役員報酬の給与所得を並べて書く
  • 青色申告の承認はその年分まで有効で、翌年分から失効する(所得税法151条2項)。正規の簿記と期限内の申告なら、最後の年も青色申告特別控除が使える
  • 前年の所得税が多かった人には予定納税の通知が届く。事業所得が減る年は7月15日(第2期分だけなら11月15日)までの減額申請で減らせる(所得税法111条)

申告書に載せる所得 — 事業所得と給与所得を並べる

法人成りは個人事業を廃止して法人を設立することなので、個人と法人は人格も別になります。事業所得の金額は、その年中の総収入金額から必要経費を引いた額です(所得税法27条)。法人化した年は個人の事業が廃業の日で終わるので、1月1日からその日までの売上と経費で計算します。

設立後に法人から受け取る役員報酬は、俸給や給料と同じく給与所得で、その年中の収入金額から給与所得控除額を引いて計算します(所得税法28条)。収入金額は、法人が発行する源泉徴収票で確かめます。2つの所得を合計して所得控除を引き、税額を計算します(所得税法120条1項)。

ただし、申告書の提出が要らない年もあります。役員報酬を受けるのが1か所で給与等が2,000万円以下、その全部について源泉徴収か年末調整がされているなら、事業所得など給与・退職所得以外の所得が20万円以下の年は提出を要しません(所得税法121条1項1号)。役員報酬を払う法人の事業に不動産などの資産を使わせて対価を受けるときなどは、この扱いになりません(所得税法121条1項)。

20万円以下かどうかを見る所得は、確定申告書の提出などを要件とする特例を適用せずに計算するので、期限内の申告が条件の65万円などの青色申告特別控除は引く前の金額で判定します(所得税基本通達121-6)。

法人化した年の個人の確定申告に載せるもの
項目1月1日〜法人化(廃業)の日法人化の日〜12月31日
所得の種類事業所得給与所得(役員報酬)
計算の元になる書類帳簿・売上と経費の記録法人が発行する源泉徴収票
使える控除青色申告特別控除(その年分まで)給与所得控除

法人化の日までに引き渡した仕事の代金は、入金が法人化の後でも個人の売上です(所得税基本通達36-8)。年の途中で口座が混ざりやすいので、個人の最後の請求と法人の最初の請求の日付をはっきり分けておきましょう。

青色申告の承認と65万円控除 — その年分は使え、翌年分から失効

原則

事業の全部を法人へ移して廃止した場合、青色申告の承認は廃止した年の翌年分以後の所得税について効力を失います。

所得税法151条2項

ただし

失効するのは業務の全部を譲渡か廃止した場合なので、業務の一部を個人に残す二刀流なら、この定めでは承認は失効しません。

所得税法151条2項

つまり法人化した年の申告は青色申告のままです。正規の簿記で取引を詳しく記録し、提出期限までにe-Taxで申告書と貸借対照表・損益計算書の情報を送信すれば、2027年1月1日施行の改正の後も、最後の年に65万円の青色申告特別控除を受けられます(租税特別措置法25条の2)。事業の期間が1年に満たなくても、控除額は月割りになりません。ただし、引けるのは控除額と不動産所得・事業所得の金額の合計額のうち低い方なので、廃業日までの所得が控除額に満たなければ、その所得の額までです(租税特別措置法25条の2)。

控除の区分は、2027年1月1日施行の改正で変わります。改正後の条文では、正規の簿記の控除は期限内のe-Tax送信を条件に65万円となって55万円の区分は無くなり、優良な電子帳簿保存などの要件も満たせば75万円です(租税特別措置法25条の2)。最後の年も、期限内にe-Taxで申告できるよう準備しておきましょう。

予定納税の減額申請 — 事業所得が減る年は7月15日まで

前年分の所得税(源泉徴収税額を除く)をもとにした予定納税基準額が15万円以上の人には、7月と11月に納める予定納税の通知が届きます(所得税法104条1項)。法人化した年は個人の事業所得が年の途中で止まり、役員報酬は源泉徴収されるので、その年の税額は前年より小さくなるのが普通です。今年の通知は、いくらで届いていたでしょうか。

法人化した年の個人の手続き

  1. 法人化の日から1か月給与支払事務所等の廃止届出書(給与を払っていた人)
  2. 7月15日予定納税の減額申請(6月30日の現況で第1期・第2期分)
  3. 11月15日予定納税の減額申請(10月31日の現況で第2期分)
  4. 翌年3月15日個人事業の廃業等届出書・最後の確定申告

その年の6月30日の現況で見込みの税額が予定納税基準額より少ないなら、7月15日までに減額の承認を申請できます(所得税法111条1項)。第2期分だけなら10月31日の現況で11月15日までです(所得税法111条2項)。申請しないで納めた分は確定申告で戻りますが、半年以上資金が寝るので、法人化の年は申請をお勧めしています。

個人事業税の見込控除 — 廃業した年分だけ使える特例

個人事業税は前年の所得をもとに翌年に課され、払った年の必要経費になります。廃業した年は翌年に事業所得がなく経費に落とせないので、廃業年分の事業税の課税見込額を、その年の必要経費に算入できます(所得税基本通達37-7)。事業主控除の290万円は、事業を行った月数で月割りします(地方税法72条の49の14)。

消費税 — 個人の売上は法人の判定に使わない

消費税の納税義務は事業者ごとに判定するので、個人の課税売上高は法人の基準期間の課税売上高にはなりません。

原則

新たに設立された法人のように基準期間がない場合は、設立当初の納税義務は免除されます。

消費税法基本通達1-4-6

ただし

新設法人の納税義務の免除の特例や、前事業年度等の課税売上高による特例(特定期間による判定)の適用を受ける期は、設立当初でも納税義務は免除されません。

消費税法基本通達1-4-6

法人が適格請求書発行事業者の登録を受けると、登録日の属する課税期間以後は、基準期間がなくても納税義務は免除されません。

消費税法基本通達1-4-1の2

個人が課税事業者だった場合、法人化した年の個人の期間については納税義務が免除されず、廃業した年分の消費税の申告は翌年3月31日が期限です(租税特別措置法86条の4第1項)。事業廃止届出書も速やかに出します(消費税法57条1項3号)。適格請求書を交付しようとする法人は、法人として税務署長の登録を受けることができ、受けるかどうかは法人が決めます(消費税法57条の2第1項)。

まとめ — 「最後の個人」と「最初の法人」を日付で切る

法人化した年の個人の申告は、廃業日までの事業所得と役員報酬の給与所得を1枚に載せ、青色申告特別控除は最後の年も使えます。予定納税の減額申請は法人化の日に関係なく7月15日と11月15日が期限で、法人化の日から数えるのは給与支払事務所等の廃止届出書の1か月です。ご自身の法人化の日を上の帯に当てはめ、残っている期限を順に確かめてみてください。

※個人事業税の例は税率5%の業種で、事業主控除は月割り後の額です。消費税の扱いは、個人が課税事業者だった場合のものです。

※法人化の前に: 法人化すると、赤字の年でも法人住民税の均等割(年7万円ほど)が毎年かかります。増える事務も決算・申告や設立時の届出だけではありません。毎月の給与計算と源泉所得税の納付、年末調整、社会保険の算定基礎届など、個人事業には無かった手続きが毎年続きます。保険料や税金の差だけでなく、この固定費と手間まで含めてご判断ください。

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