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「法人化すれば消費税が2年免税」は今も本当か — インボイス後の実際と、免税が消える5つの場合

「法人にすれば消費税が2年免税になる」— 法人化を勧める話でよく聞く言葉ですが、インボイス制度が始まった今も本当なのか、確かめておきましょう。原則は変わっていないこと、インボイス登録で免税が消えること、そのほかの例外を、条文の順に整理します。

本記事は、国内で株式会社・合同会社を新設し、2期目以降の事業年度を1年とする場合を扱います。

合併や分割等があった場合は、納税義務の別の特例を契約内容と合わせて確認しておきましょう(消費税法11条・12条)。

この記事の要点

  • 新しく設立した法人は、基準期間が無い課税期間では原則として免税(消費税法基本通達1-4-6)。個人事業主だった期間の売上は、法人の判定に入らない(消費税法基本通達1-4-6)
  • 最大の例外はインボイス登録。適格請求書発行事業者は基準期間の売上にかかわらず納税義務が免除されない。登録した日から課税事業者になる
  • 資本金1,000万円以上の法人、株主などの売上が5億円を超える特定新規設立法人、1期目の最初の6か月(特定期間)の売上と給与がどちらも1,000万円超の2期目、課税事業者選択届出書を出した場合も免税にならない

まず結論 — 原則は本当。ただし「登録しない」ことが条件になった

消費税は、基準期間の課税売上高が1,000万円以下なら、原則として納税義務が免除されます(消費税法基本通達1-4-1)。法人の基準期間は、前々事業年度が1年なら、その前々事業年度(2期前)です(消費税法2条1項14号)。新しく設立した法人の設立1期目と2期目には基準期間が無く、原則として免税です。ただし、株主などの売上が5億円を超える特定新規設立法人に当たる場合は、基準期間が無くても免税になりません。

「2年免税」の今の答え(弊所の整理)
よく聞く言い方今の答え
法人にすれば消費税が2年免税になる原則は本当。ただしインボイス登録をすれば登録日から課税事業者。特定新規設立法人などの例外もある
個人で売上1,000万円を超えていても、法人にすれば免税本当。個人事業主だった期間の売上は法人の基準期間・特定期間に入らない。ただし個人の売上が5億円を超えていると特定新規設立法人として免税にならない
免税の2期は必ず2年ある「2年」ではなく設立1期目と2期目の「2事業年度」。1期目が短い会社は、免税の期間もその分だけ短い
法人は2割特例で納税額を売上税額の2割にできる令和8年9月30日の属する課税期間まで。3割特例は個人事業者だけで、法人は使えない

免税の2期を使うかどうかは、売上先がインボイスを求めるかを先に確かめて決めることをお勧めします。取引先が個人の消費者や免税事業者中心なら登録しない選択ができ、法人の取引先中心で請求書に登録番号を求められるなら、登録した日から納税が始まります。ご自身の売上先は、どちらが多いでしょうか。

原則 — 基準期間が無い2期は免税。個人時代の売上は入らない

新しく設立された法人の設立1期目・2期目には基準期間が無く、原則として納税義務が免除されます。個人事業主が法人成りをした場合も、個人事業主だった期間の課税売上高はその法人の基準期間の課税売上高には含まれません(消費税法基本通達1-4-6)。

原則

事業年度の基準期間がない法人は、その事業年度の消費税の納税義務が免除されます。

消費税法基本通達1-4-6

ただし

株式会社・合同会社は、その事業年度の開始の日における資本金の額または出資の金額が1,000万円以上なら、基準期間が無くても納税義務は免除されません。

消費税法12条の2第1項

株式等の50%超を直接・間接に保有する株主などがいる場合に、その株主や一定の特殊な関係にある法人等の課税売上高が5億円を超える(または総収入金額が50億円を超える)特定新規設立法人も、納税義務が免除されません。判定するのは、新しく設立した法人のその事業年度の基準期間に相当する期間です。

消費税法12条の3第1項

設立2期目の特定期間は、原則として1期目の最初の6か月です。その期間の課税売上高が1,000万円を超えると課税事業者になります。

消費税法9条の2

特定期間の判定は給与等の支払額で行うこともでき、給与等が1,000万円以下なら、この特定期間の判定では課税事業者になりません。

消費税法9条の2

1期目が7か月以下の会社は、その1期目の6か月は特定期間になりません。

消費税法9条の2第4項

1期目が7か月を超えていても、最初の6か月の末日の翌日から1期目の終わりまでが2か月未満なら、その1期目の6か月も特定期間になりません(消費税法施行令20条の5)。この6か月の末日が月の末日でないとき(決算日が月末の会社)は、その前の月の末日までを6か月とみなします。決算日が月末でない会社では、6か月の末日が決算日の応当日でないとき、直前の応当日までを6か月とみなして2か月未満かを数えます。

消費税法施行令20条の6

「2年」ではなく「2事業年度」です。1期目が短いと免税の期間もその分だけ短くなるので、設立の月の前の月を決算月にして1期目を長くとることをお勧めします。設立から決算まで3か月しか無い会社なら、免税の期間は1期目の3か月と2期目の1年で1年3か月にとどまり、1期目が7か月以下なので2期目は特定期間の判定もありません。

インボイスで変わったこと — 登録した日から課税事業者

適格請求書発行事業者は、基準期間の課税売上高が1,000万円以下でも納税義務が免除されません(消費税法基本通達1-4-1の2)。免税事業者が登録を受けると、登録日から課税事業者になり、登録日以後の売上から消費税の申告の対象になります(消費税法基本通達21-1-1)。

売上先で決まる「免税の2期」の使い方(弊所の目安)
売上先登録免税の2期
個人の消費者・免税事業者が中心登録しない選択ができる使える(特定新規設立法人などの例外に当たらなければ)
法人・課税事業者が中心で、登録番号を求められる登録する登録日から課税事業者。2期免税は消える
混ざっている売上の割合と、登録しない場合に値引きを求められるかで決める登録しない期間だけ使える。登録すると原則2年は免税に戻れない

原則

免税事業者が経過措置で適格請求書発行事業者の登録を受けた場合、登録日から課税事業者になり、登録日からその課税期間の末日までに行った課税資産の譲渡等が申告の対象になります。

消費税法基本通達21-1-1

ただし

この経過措置は、登録開始日が令和5年10月1日から令和11年9月30日までの日の属する課税期間中である場合の登録を対象とします。

消費税法基本通達21-1-1

経過措置で登録した事業者は、登録日の属する課税期間の翌課税期間から登録日以後2年を経過する日の属する課税期間まで、免税に戻れません。登録日の属する課税期間が令和5年10月1日を含む場合は、この縛りはありません。

消費税法基本通達21-1-1

免税事業者が登録した場合の2割特例(納付税額を売上税額の2割にする経過措置)を使えるのは、インボイス制度の施行日から3年を経過する日の属する課税期間までです。

平成28年改正法附則51条の2

課税事業者の選択が効く期の初日から2年を経過する日までの間に開始した期に、一般課税で調整対象固定資産の課税仕入れ等を行うと、免税に戻るための届出に制限がかかります(消費税法9条)。この場合、仕入れの期の翌課税期間から、その仕入れの期の初日以後3年を経過する日の属する課税期間までは2割特例を使えません。

平成28年改正法附則51条の2

施行日は令和5年10月1日なので、2割特例を使えるのは令和8年9月30日の属する課税期間が最後です。令和8年10月1日以後に始まる事業年度の新設法人には、2割特例を使える課税期間がありません。令和9年分・令和10年分の3割特例は小規模な個人事業者だけの措置で、法人は対象になりません。登録した法人が消費税の申告をする場合は、2割特例が使えない期からは本則課税か簡易課税で税額を計算します。

2割特例を使った翌課税期間に簡易課税へ移るときは、その翌課税期間の確定申告の期限までに届出書を出せば、その期から簡易課税を使えます(平成28年改正法附則51条の2)。この場合の翌課税期間は、法令では「特例対象課税期間」と呼ばれます(平成28年改正法附則51条の2第6項)。

この扱いは、特例対象課税期間が令和8年10月1日以後に終了する場合に適用されます。同日前に終了する場合は、改正前の扱いによります(令和8年改正法附則90条1項)。

そのほかの例外 — 課税事業者を選んだ場合と、3期目の判定

課税事業者選択届出書を出すと、原則として、提出した期の翌期から課税事業者になります。事業を開始した期など一定の場合は、提出した期から適用されます(消費税法9条4項)。選択後は、原則として2年間は免税に戻れません(消費税法9条)。設立1期目から選択を適用すれば、2期目も課税事業者として申告します。

設備投資の還付を目的に選択する場合も、まず届出がどの期から効くかを確かめておくことをお勧めします。

免税が消える5つの場合
場合課税事業者になる時期根拠
インボイス登録登録日から(本文の経過措置に当たる期途中の登録)消費税法基本通達21-1-1
株式会社・合同会社の期首の資本金1,000万円以上その事業年度から消費税法12条の2
特定新規設立法人(株主などの売上が5億円超など)基準期間がない事業年度から消費税法12条の3
特定期間の売上と給与がどちらも1,000万円超(1期目が7か月以下なら判定なし。7か月超でも最初の6か月の末日の翌日から期末までが2か月未満なら同じ。6か月の末日が月の末日(月末決算でない会社は決算日の応当日)に当たらないときは、その直前の月末(応当日)までを6か月とみなして数える)2期目から消費税法9条の2・消費税法施行令20条の5・20条の6
課税事業者選択届出書の提出届出の効力が生じる期から。原則2年間は免税に戻れない。選択後2年以内に開始した期に調整対象固定資産を仕入れ、一般課税で申告した場合は、その仕入れの期の初日から原則3年間消費税法9条

※このほか、合併・分割があった場合の特例や、高額特定資産を仕入れた場合の特例に当たるときも免税になりません(消費税法基本通達1-4-6)。

法人化の時期の決め方 — 個人の3割特例を使ってからという順番も

個人事業主のままインボイス登録をしている方でも、3割特例は、登録や課税事業者の選択届出等がなかったとしたら免税となる課税期間が対象です。適用できる令和9年分・令和10年分には、納付税額を売上税額の3割にできます(平成28年改正法附則51条の3)。基準期間(2年前)の課税売上高が1,000万円以下であることに加え、特定期間の判定や、固定資産の取得・相続・課税期間の特例に関する除外も確認しておきましょう。

法人化すると3割特例は使えないので、対象になる方は令和10年分まで個人で3割特例を使い、そのあと法人化して簡易課税か本則課税に移る、という順番も考えられます。

法人化の時期は、消費税だけで決まるものではありません。役員報酬と社会保険料、所得税と法人税の差、設立の費用を同じ土俵に載せて比べたうえで、消費税の免税と登録の判断を重ねてみてください。

まとめ — 「2年免税」は、登録しない法人化にだけ残っている

新設法人の2期免税は今も原則として本当で、個人時代の売上は判定に入りません。ただしインボイス登録をすると登録日から課税事業者になり、資本金1,000万円・特定新規設立法人・特定期間・課税事業者の選択も免税を消します。法人化の前に、売上先が登録番号を求めるかを確かめることが、いちばん確かな判断の材料です。

出典

※本記事は令和8年4月1日現在の法令等によります。2割特例・3割特例の期間と条件は毎年の税制改正で変わるので、国税庁の案内で最新の内容を確かめてください。

※法人化の前に: 法人化すると、赤字の年でも法人住民税の均等割(年7万円ほど)が毎年かかります。増える事務も決算・申告や設立時の届出だけではありません。毎月の給与計算と源泉所得税の納付、年末調整、社会保険の算定基礎届など、個人事業には無かった手続きが毎年続きます。保険料や税金の差だけでなく、この固定費と手間まで含めてご判断ください。

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※免責事項: 本コラムは一般的な情報のご提供を目的とするもので、個別の事案に対する税務上の助言ではありません。内容は執筆時点の法令等にもとづいており、その後の改正などにより現在の取り扱いと異なることがあります。正確な記載に努めていますが内容を保証するものではなく、本コラムの情報にもとづいて行われたご判断について、当事務所は責任を負いかねます。実際の手続きやご判断にあたっては、税理士等の専門家にご相談ください。

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