役員報酬の手取り計算の仕組み — 額面から何がいくら引かれるのか、月30万円で1行ずつ検算
役員報酬の額面から手取りまで、何がどの順番で引かれるのか。月額30万円の例で、社会保険料・所得税・住民税を1行ずつ計算し、手取りシミュレーションの中身をそのまま見せます。
この記事の要点
- 引かれるのは3つ。社会保険料の本人負担(額面の14.19%)・所得税・住民税
- 月額30万円(年360万円)なら、年間の天引き合計は708,440円。手取りは年2,891,560円(月あたり約24万円)
- 税金は「社会保険料を引いたあと」に計算するため、社会保険料が増えるほど税金は少し減る
全体の流れ — 3段階で手取りが決まる
- 額面から、社会保険料の本人負担を引く
- 額面から給与所得控除・社会保険料控除・基礎控除を引いて課税所得を出し、所得税を計算する。住民税は前年の所得をもとに市区町村が決めた額を、通知どおりに引く
- 額面から社会保険料・所得税・住民税を引いた残りが手取り
会社が負担する社会保険料や法人税は、社長個人の手取りには関係しません。ただし会社のお金という意味では、額面とは別に会社負担分がかかります。
段階1 — 社会保険料の本人負担は額面の14.19%
協会けんぽ(東京支部・令和8年度)の場合、健康保険9.85%・子ども・子育て支援金0.23%・厚生年金18.3%の合計28.38%を、会社と本人で半分ずつ負担します。本人負担は額面の14.19%です(40歳未満の場合。40〜64歳は介護保険1.62%の半分が加わります)。
月額30万円なら、本人負担は年間510,840円(月あたり42,570円)です。正確には報酬月額そのものではなく標準報酬月額の等級で決まるため、実際の額はこの概算と数百円ずれることがあります。標準報酬月額は、役員報酬の月額に通勤手当や住宅手当などの手当を加えた額を等級表に当てはめて決まるので、手当がある方はその分だけ保険料が表より増えます。健康保険の料率は都道府県の支部ごとに違い、毎年3月分から改定されます。
段階2 — 課税所得を出して所得税を計算する(住民税は市区町村が決めた額を引く)
給与所得控除は年収に応じて決まる控除で、年収360万円なら116万円です(令和8年分の計算)。なお、年収660万円未満の場合の正確な給与所得は、速算の式ではなく所得税法別表第五の表で求めるため、実際の課税所得はこの計算と数千円以内でずれることがあります(所得税法28条)。
基礎控除は104万円です(令和8年分・合計所得が489万円以下の帯の場合。所得が多い帯では段階的に少なくなります)。
この104万円は令和8年分・令和9年分に限った上乗せつきの額で、令和10年分以後は同じ所得帯の基礎控除が62万円になり、同じ額面でも手取りは少し減る予定です。
※この表の試算年度: 所得税は令和8年分、保険料は令和8年度の計算前提(個人の住民税のうち給与・事業所得分は翌年度の見込み額)。
| 項目 | 金額(年額) |
|---|---|
| 額面(年額) | 3,600,000円 |
| 給与所得控除 | 1,160,000円 |
| 社会保険料控除(=本人負担の社会保険料) | 510,840円 |
| 基礎控除(所得税) | 1,040,000円 |
| 課税所得(所得税・千円未満切捨て) | 889,000円 |
| 所得税(復興特別所得税を含む) | 45,300円 |
| 住民税(所得割+均等割+森林環境税-調整控除) | 152,300円 |
| 天引きの合計 | 708,440円 |
| 手取り(年額) | 2,891,560円 |
所得税は課税所得889,000円に5%を掛け、復興特別所得税2.1%分を上乗せして45,300円です(百円未満切捨て)。
住民税は、会社が毎月の給与から計算する税ではありません。前年の所得をもとに市区町村が税額を決め、会社はその通知どおりに6月から翌年5月までの12回に分けて天引きします(特別徴収)。上の表の152,300円は、同じ年収が続いた場合に市区町村側でどう決まるかを先回りして示した見込み額です。
住民税の基礎控除は43万円と所得税より小さいため、課税所得は1,499,000円になります。これに10%の所得割と均等割・森林環境税を足し、調整控除を引いて152,300円です。
段階3 — 手取りは年2,891,560円、月あたり約24万円
額面360万円から天引き708,440円を引いた手取りは2,891,560円です。
12で割ると月あたり約24万円で、額面に対する手取りの割合は約80%になります。
額面が上がると手取り率が下がる理由
所得税は課税所得が大きいほど高い税率(5%〜45%)がかかる累進課税です。社会保険料は額面にほぼ比例しますが、厚生年金は月額65万円で上限になります。このため、額面が上がるほど手取りの割合は下がり、月額100万円では約71.5%まで落ちます。
なお、厚生年金の上限は2027年9月から段階的に引き上げられ、2029年9月に75万円になる予定です。
手取りが増える要素 — 表に入れた控除は3つだけ
上の表は、給与所得控除・社会保険料控除・基礎控除だけで税金を計算しています。配偶者控除・扶養控除・生命保険料控除・小規模企業共済等掛金控除などがある方は、その分だけ課税所得が減り、手取りは表より増えます。iDeCoや小規模企業共済の掛金は全額が控除になるため、効き目が大きい部類です。
まとめ — 「額面いくら」より「手取りいくら」で決める
生活に必要な手取りから逆算すると、必要な額面が見えてきます。あなたの生活には、月いくらの手取りが必要でしょうか。下の手取りシミュレーションでは、月額を1万円単位で変えながら、この記事と同じ計算をその場で試せます。目標の手取りから必要な月額を逆算する機能もあるので、ぜひ試してみてください。
※本記事の金額は、社長おひとり・40歳未満(介護保険なし)・所得控除は給与所得控除・社会保険料控除・基礎控除のみ・東京都の令和8年度料率・令和8年分の税制での概算です。住民税は特別区の標準税率で計算しています。
この記事の内容は、あなたの数字でその場で試算できます。
役員報酬の手取りシミュレーションで実際にあなたの数字で試す→この記事のテーマで使える道具・専門ページ
専門ページ役員報酬の手取り早見表→ 試算役員報酬の変更シミュレーション→ 議事録・届出書役員報酬の決定・変更の議事録を作る (無料)→ 専門ページ役員報酬の決め方→この記事の内容、私の場合は? — 普段お使いの AI に相談
押すと、この記事の要点が質問文になって、選んだ AI に渡ります。
Gemini など、ほかの AI に貼り付けて使えます
AI によってはそのまま回答が始まります。回答は各 AI サービスによるもので、当事務所の見解ではありません。
※免責事項: 本コラムは一般的な情報のご提供を目的とするもので、個別の事案に対する税務上の助言ではありません。内容は執筆時点の法令等にもとづいており、その後の改正などにより現在の取り扱いと異なることがあります。正確な記載に努めていますが内容を保証するものではなく、本コラムの情報にもとづいて行われたご判断について、当事務所は責任を負いかねます。実際の手続きやご判断にあたっては、税理士等の専門家にご相談ください。