役員報酬を上げると手取りはいくら増えるか — 月30万〜80万円の候補で、額面と手取りの差を実額で比べる
役員報酬を上げたのに、手取りは思ったほど増えなかった — そんな経験はないでしょうか。増額分の一部が消える仕組みを、月30万円から80万円までの弊所の実額試算で、候補ごとに確かめます。
この記事の要点
- この表の隣り合う候補の手取りの差は、月約6.5万〜7.5万円。残る割合は等級の境目と税率で前後します
- 消えるのは、等級で段階的に上がる社会保険料と、所得が増えるほど高い税率がかかる所得税。厚生年金は標準報酬月額65万円で頭打ちになり、その先は税金が主役になる
- 会社側は増やした額面に会社負担の社会保険料が加わり、隣り合う候補の差は月約10.4万〜11.6万円になる計算
表の社会保険料と所得税・住民税は、年額を12か月で割った月あたりの平均です。住民税は市区町村が前年の所得から決める税額を先回りして示した見込み額です。 本記事の金額は、社長おひとり・40歳未満・給与所得控除・社会保険料控除・基礎控除のみ・協会けんぽ東京の令和8年度料率・令和8年分の税制での概算です。40〜64歳は介護保険料が加わり、手取りは少し減ります。なお、厚生年金の上限は2027年9月から段階的に引き上げられ、2029年9月に75万円になる予定です。
実額 — 月30万円から80万円までの候補を比べる
※この表の試算年度: 所得税は令和8年分、保険料は令和8年度の計算前提(個人の住民税のうち給与・事業所得分は翌年度の見込み額)。
| 額面(月額) | 社会保険料の本人負担(月額) | 所得税+住民税(月額) | 手取り(月額) | 手取りの割合 | 社会保険料の会社負担(月額) |
|---|---|---|---|---|---|
| 30万円 | 約4.3万円 | 約1.6万円 | 約24.1万円 | 80.3% | 約4.4万円 |
| 40万円 | 約5.8万円 | 約2.6万円 | 約31.6万円 | 78.9% | 約6.0万円 |
| 50万円 | 約7.1万円 | 約3.9万円 | 約39.1万円 | 78.1% | 約7.3万円 |
| 60万円 | 約8.4万円 | 約6.0万円 | 約45.7万円 | 76.1% | 約8.6万円 |
| 70万円 | 約9.5万円 | 約8.4万円 | 約52.1万円 | 74.4% | 約9.8万円 |
| 80万円 | 約9.9万円 | 約11.3万円 | 約58.7万円 | 73.4% | 約10.2万円 |
※社長おひとり・40歳未満・協会けんぽ東京、令和8年度料率・令和8年分税制。給与所得控除・社会保険料控除・基礎控除を反映し、住民税はその所得に対応する翌年度の見込み額です。月額は年額を12で割った平均で実際の振込額とは異なる場合があります。
※表の社会保険料と所得税・住民税は、年額を12か月で割った月あたりの平均です。住民税は市区町村が前年の所得から決める税額を先回りして示した見込み額です。
同じ10万円の増額でも、手取りの差は段によって違います。増えた額面のうち手元に残る割合を並べると、次のとおりです。
※この表の試算年度: 所得税は令和8年分、保険料は令和8年度の計算前提(個人の住民税のうち給与・事業所得分は翌年度の見込み額)。
| 上げ幅 | 増える手取り(月額) | 残る割合 | 会社が追加で用意する額(月額) |
|---|---|---|---|
| 30万円→40万円 | 約7.5万円 | 約75% | 約11.6万円 |
| 40万円→50万円 | 約7.5万円 | 約75% | 約11.3万円 |
| 50万円→60万円 | 約6.6万円 | 約66% | 約11.3万円 |
| 60万円→70万円 | 約6.5万円 | 約65% | 約11.2万円 |
| 70万円→80万円 | 約6.6万円 | 約66% | 約10.4万円 |
※社長おひとり・40歳未満・協会けんぽ東京、令和8年度料率・令和8年分税制。給与所得控除・社会保険料控除・基礎控除を反映し、住民税はその所得に対応する翌年度の見込み額です。月額は年額を12で割った平均で実際の振込額とは異なる場合があります。直前表の隣り合う報酬候補の差分で、残る割合は報酬の上げ幅に対する割合です。
消える理由1 — 社会保険料は等級で段階的に上がる
社会保険料の土台になる標準報酬月額は、健保と厚年それぞれで、報酬月額を等級区分に当てはめて決まります(健康保険法40条・厚生年金保険法20条)。保険料はこの標準報酬月額に料率を掛けた額なので、増額した額面に一律の率を掛ける計算ではありません。月30万円の例では健保の標準報酬月額は30万円、厚年は30万円で、額面に対する本人負担は約14.19%、会社負担を合わせると約28.74%です。
この候補表では、月70万円以上の候補で、厚年の標準報酬月額が上限の65万円に達します。厚年側の保険料の増額はここで止まります。
消える理由2 — 所得税は「増えた分」に高い税率がかかる
所得税は、課税所得を段階に区切り、上の段ほど高い税率を掛ける超過累進税率です(所得税法89条)。月50万円の例の課税所得は10%の段、月60万円の例は20%の段です。それぞれの社会保険料控除と基礎控除を反映して判定します。
住民税の所得割は原則10%です。月60万円の例の所得税率と合わせると30%(復興特別所得税を含まない)で、額面全体ではなく増えた課税所得にかかります。手取りの差は、表の保険料・所得税・住民税をすべて反映して確認します。
会社の側 — 候補間の追加費用は月約10.4万〜11.6万円
会社が用意するのは額面だけではありません。月50万円から月60万円へ変えた例で比べます。
手取りの差約6.6万円に対して、会社の追加費用は月約11.3万円です。増やした額面に会社負担の社会保険料が加わるためです。
毎月の役員報酬を増やした分が損金になるのは、定期同額給与(法人税法34条1項1号)の決まりに沿った改定のときです。原則は会計期間の開始から3か月以内の改定で、期の途中の増額が認められるのは、役員の地位や職務の内容が大きく変わったなどのやむを得ない事情(臨時改定事由)がある場合に限られます(法人税法施行令69条1項1号)。理由なく期の途中で上げると、上乗せした部分は損金になりません。
損金になる増額なら、その分だけ法人税等は減ります。ただし、不相当に高額な部分は損金になりません(法人税法34条2項)。高額かどうかは、役員の職務の内容や同業・同規模の会社の水準などで判断されます(法人税法施行令70条)。報酬を上げるか法人に利益を残すかは、社長個人の税率と法人税率の比較で決まる論点で、報酬を上げる場合と法人に残す場合の比較にまとめています。
まとめ — 「上げ幅」より「残る額」で決める
役員報酬の増額は、額面の増え方ではなく、手取りの増え方と会社が用意する額の両方で判断するものです。あなたの今の月額なら、報酬を変えたときに残るのはいくらでしょうか。
手取りシミュレーションでは、月額を動かしながら手取りと会社負担を並べて確かめられます。ご自身の年齢と数字で、増やした分がどれだけ残るかを見てみてください。
※本記事の金額は、社長おひとり・40歳未満・給与所得控除と、所得控除の社会保険料控除・基礎控除のみ・協会けんぽ東京の令和8年度料率・令和8年分の税制での概算です。40〜64歳は介護保険料が加わり、手取りは少し減ります。なお、厚生年金の上限は2027年9月から段階的に引き上げられ、2029年9月に75万円になる予定です。
この記事の内容は、あなたの数字でその場で試算できます。
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