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役員報酬を上げると手取りはいくら増えるか — 10万円上げても7万円前後しか残らない仕組みを、月30万〜80万円の実額で検算

コラム

役員報酬を上げたのに、手取りは思ったほど増えなかった — そんな経験はないでしょうか。増額分の一部が消える仕組みを、月30万円から80万円まで10万円刻みの弊所の実額試算で、1段ずつ確かめます。

この記事の要点

  • 月額を10万円上げたときの手取りの増え方は、低い帯で約7.5万円、高い帯で約6.5万円。上げるほど残る割合は下がる
  • 消えるのは、等級で段階的に上がる社会保険料と、所得が増えるほど高い税率がかかる所得税。厚生年金は月額65万円で頭打ちになり、その先は税金が主役になる
  • 会社側は増やした額面に会社負担の社会保険料が加わり、手取りを7万円増やすのに月約11.5万円を用意する計算

実額 — 月30万円から80万円まで、10万円ずつ上げると

※この表の試算年度: 所得税は令和8年分、保険料は令和8年度の計算前提(個人の住民税のうち給与・事業所得分は翌年度の見込み額)。

月額30万〜80万円の手取りと会社負担(弊所試算・40歳未満・金額はすべて1か月あたり・割合は額面に対する手取り)
額面(月額)社会保険料の本人負担(月額)所得税+住民税(月額)手取り(月額)手取りの割合社会保険料の会社負担(月額)
30万円約4.3万円約1.6万円約24.1万円80.3%約4.4万円
40万円約5.7万円約2.6万円約31.7万円79.2%約5.8万円
50万円約7.1万円約3.9万円約39.0万円78.1%約7.3万円
60万円約8.5万円約5.9万円約45.6万円75.9%約8.7万円
70万円約9.5万円約8.4万円約52.1万円74.5%約9.7万円
80万円約10.0万円約11.3万円約58.7万円73.4%約10.2万円

※表の社会保険料と所得税・住民税は、1年分を12か月で割った月あたりの平均です。住民税は市区町村が前年の所得から決める税額を先回りして示した見込み額です。

同じ10万円の増額でも、手取りの増え方は段によって違います。増えた額面のうち手元に残る割合を並べると、次のとおりです。

10万円上げたときに残る手取りと、会社が追加で用意する額(弊所試算・金額はすべて1か月あたり)
上げ幅増える手取り(月額)残る割合会社が追加で用意する額(月額)
30万円→40万円約7.5万円約75%約11.5万円
40万円→50万円約7.3万円約73%約11.5万円
50万円→60万円約6.7万円約67%約11.5万円
60万円→70万円約6.6万円約66%約11.0万円
70万円→80万円約6.5万円約65%約10.5万円

消える理由1 — 社会保険料は等級で段階的に上がる

社会保険料は、報酬月額を等級表に当てはめた標準報酬月額に料率を掛けて決まります(健康保険法40条・厚生年金保険法20条)。報酬が一つ上の等級に入るたびに保険料が一段上がるため、増額分に対して本人負担で約14%、会社負担を合わせて約29%が保険料に回ります。

ただし厚生年金の標準報酬月額は65万円で頭打ちです。月70万円以上の帯では厚生年金が増えなくなり、社会保険料の増え方は緩やかになります。表で会社が追加で用意する額が70万円以上で小さくなっているのは、このためです。

消える理由2 — 所得税は「増えた分」に高い税率がかかる

所得税は、課税所得を段階に区切り、上の段ほど高い税率を掛ける超過累進税率です(所得税法89条)。月50万円の課税所得は10%の段ですが、月60万円では20%の段に入り、増えた課税所得にはこの高い税率がかかります。

住民税は所得割がおおむね10%なので、増えた課税所得に対して所得税と合わせて約30%が税金に回ります。厚生年金が頭打ちになる月70万円以上の帯では、天引きの増加を担うのは主にこの税金です。

会社の側 — 手取り7万円のために、会社は11.5万円

会社が用意するのは額面だけではありません。増やした額面に会社負担の社会保険料が加わるため、月50万円台では、手取りを約6.7万円増やすために会社は月約11.5万円を追加で用意します。

毎月の役員報酬を増やした分が損金になるのは、定期同額給与(法人税法34条1項1号)の決まりに沿った改定のときです。原則は事業年度の開始から3か月以内の改定で、期の途中の増額が認められるのは、役員の地位や職務の内容が大きく変わったなどのやむを得ない事情(臨時改定事由)がある場合に限られます(法人税法施行令69条1項1号)。理由なく期の途中で上げると、上乗せした部分は損金になりません。

損金になる増額なら、その分だけ法人税等は減ります。ただし、不相当に高額な部分は損金になりません(法人税法34条2項)。高額かどうかは、役員の職務の内容や同業・同規模の会社の水準などで判断されます(法人税法施行令70条)。報酬を上げるか法人に利益を残すかは、社長個人の税率と法人税率の比較で決まる論点で、別の記事にまとめています。

まとめ — 「上げ幅」より「残る額」で決める

役員報酬の増額は、額面の増え方ではなく、手取りの増え方と会社が用意する額の両方で判断するものです。あなたの今の月額なら、10万円上げたときに残るのはいくらでしょうか。

下の手取りシミュレーションでは、月額を動かしながら手取りと会社負担を並べて確かめられます。ご自身の年齢と数字で、増やした分がどれだけ残るかを見てみてください。

※本記事の金額は、社長おひとり・40歳未満(介護保険なし)・所得控除は給与所得控除・社会保険料控除・基礎控除のみ・協会けんぽ東京の令和8年度料率・令和8年分の税制での概算です。40〜64歳は介護保険料が加わり、手取りは少し減ります。なお、厚生年金の上限は2027年9月から段階的に引き上げられ、2029年9月に75万円になる予定です。

この記事の内容は、あなたの数字でその場で試算できます。

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※免責事項: 本コラムは一般的な情報のご提供を目的とするもので、個別の事案に対する税務上の助言ではありません。内容は執筆時点の法令等にもとづいており、その後の改正などにより現在の取り扱いと異なることがあります。正確な記載に努めていますが内容を保証するものではなく、本コラムの情報にもとづいて行われたご判断について、当事務所は責任を負いかねます。実際の手続きやご判断にあたっては、税理士等の専門家にご相談ください。

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