大家の個人事業税はいくらか — 不動産貸付業になる基準(10室・5棟・10件)、税率5%と事業主控除290万円、計算例、申告は確定申告で足りる
アパートやマンションの貸付けが一定の規模になると、所得税・住民税とは別に個人事業税がかかります。どの規模から対象になるのか、税額はいくらか、申告と納期はどうなるのかを、東京都の認定基準と地方税法で整理します。
この記事の要点
- 東京都では、アパート・マンション10室以上、一戸建10棟以上、土地の貸付け10件以上などの基準に達すると「不動産貸付業」として個人事業税の対象になる。基準未満でも、総床面積600㎡以上かつ賃貸料収入が年1,000万円以上なら対象
- 税額は(不動産所得+青色申告特別控除−事業主控除290万円)×5%で、表の例では不動産所得500万円で年137,500円
- 所得税の確定申告書を出せば事業税の申告は要らず、8月と11月の2回に分けて納める。納めた事業税は翌年の必要経費になる
まず結論 — 10室・5棟・10件の基準に達した年から、290万円を超える所得の5%
個人の事業税は、法律に並んだ業種の事業にかかる都道府県の税金で、不動産貸付業と駐車場業は第一種事業に入っています(地方税法72条の2第3項・8項)。ただ、家賃収入があれば誰でも対象になるわけではありません。「事業」といえる規模かどうかを都道府県が認定基準で判定し、東京都ではアパート・マンションなら10室以上、一戸建なら10棟以上、土地なら10件以上が目安です。
税額は、不動産所得に青色申告特別控除を足し戻し、事業主控除290万円を引いた残りに5%を掛けて計算します(地方税法72条の49の12第1項・72条の49の14第1項・72条の49の17)。所得税の確定申告書を出していれば、事業税の申告は要りません(地方税法72条の55の2第1項)。納期は8月と11月です(地方税法72条の51第1項)。東京都では、8月に都税事務所から納税通知書が届きます。
不動産貸付業の認定基準 — 東京都は住宅10室・一戸建10棟・土地10件、基準未満でも600㎡と1,000万円
では、どこからが「事業」といえる規模なのでしょうか。東京都主税局は、不動産貸付業にあたるかどうかを貸付けの種類ごとの基準で判定し、複数の種類を貸している場合は合計で見ます。ご自身の室数・棟数・契約件数を、次の表に当てはめてみましょう。
| 貸しているもの | 基準 |
|---|---|
| 一戸建の住宅 | 10棟以上 |
| 一戸建以外の住宅(アパート・マンションの部屋) | 10室以上 |
| 住宅以外の独立家屋(店舗・倉庫など) | 5棟以上 |
| 住宅以外の独立家屋以外(店舗・事務所の区画) | 10室以上 |
| 住宅用の土地 | 契約件数10件以上、または貸付総面積2,000㎡以上 |
| 住宅用以外の土地 | 契約件数10件以上 |
| 複数の種類を貸している | 棟数・室数・件数の合計が10以上 |
| 上の基準に達しない | 貸付用建物の総床面積600㎡以上で、かつ賃貸料収入が年1,000万円以上(権利金・礼金・更新料・共益費などは除く) |
| 上の基準に達しない(設備・用途) | 競技・遊技・娯楽・集会などのための基本的設備を施した不動産(劇場・映画館・ゴルフ練習場など)、一定規模の旅館・ホテル・病院など特定の業務の用途に使う建物 |
| 駐車場 | 寄託を受けて保管する駐車場と建築物・機械式の駐車場は1台以上、それ以外は10台以上 |
数え方にも決まりがあります。室数・棟数は空室も含めて数え、信託した物件も件数に入れます。土地は、1つの契約で2画地以上を貸していれば、画地ごとに1件と数えます。
一棟のアパートを丸ごと貸していても、独立した区画が2室以上あれば室数で数えます。共有の物件は、持分にかかわらず物件全体の貸付状況で判定し、税額は持分に応じて計算します。所得税で事業的規模とされる「おおむね10室・5棟」(所得税基本通達26-9)と重なる部分が多いものの、事業税の判定は都道府県が別に行うので、他の道府県の方はそれぞれの基準を確かめてください。
税額の計算 — (不動産所得+青色申告特別控除−290万円)×5%
事業税の所得は、所得税の不動産所得と同じく総収入金額から必要経費を引いて求めます(地方税法72条の49の12第1項・所得税法26条2項)。ただし、個人の事業税には青色申告特別控除が適用されないので、申告書の不動産所得に控除額を足し戻します。そこから事業主控除290万円を引き、残りに税率5%を掛けた額が税額です(地方税法72条の49の14第1項・72条の49の17)。
| 不動産所得(年額) | 計算 | 個人事業税(年額) |
|---|---|---|
| 300万円 | (300万円+65万円−290万円)×5% | 37,500円 |
| 400万円 | (400万円+65万円−290万円)×5% | 87,500円 |
| 500万円 | (500万円+65万円−290万円)×5% | 137,500円 |
| 700万円 | (700万円+65万円−290万円)×5% | 237,500円 |
| 1,000万円 | (1,000万円+65万円−290万円)×5% | 387,500円 |
この式どおりにならない年もあります。事業税のかかる別の事業も行っている方は、不動産所得と事業所得を合算し、または損益を通算してから事業主控除を引きます。青色申告者は事業の赤字を翌年以降3年間繰り越して控除できるので、繰越しのある年の税額は式で出した額より少なくなります。繰り越すには、赤字の年分は原則として期限内に、その後の年分は期限後でも事業税の納税通知書が届くまでに、毎年続けて所得税・住民税・事業税のいずれかの申告をしていることが必要です。
納めた事業税は、原則として、納税通知書で確定した年の不動産所得の必要経費になります(所得税基本通達37-6)。翌年の所得税・住民税と国民健康保険料がその分だけ下がるので、事業税の実質の負担は税額より少し軽くなります。ただし、事業をやめた年の所得にかかる事業税は、その見込額を、やめた年の必要経費に入れることができます(所得税基本通達37-7)。
申告と納期 — 確定申告をすれば事業税の申告は要らない、納期は8月と11月
個人の事業税の申告期限は3月15日ですが、所得税の確定申告書か住民税の申告書を出した方は、事業税の申告があったものとみなされます(地方税法72条の55第1項・72条の55の2第1項)。大家の方が別に事業税の申告書を出す場面は、ほとんどありません。都道府県が確定申告書の所得から税額を計算し、納税通知書を送ってきます。
納期は、原則として8月と11月の2回です(地方税法72条の51第1項)。ただし、税額が都道府県の条例で定める金額以下のときは、2回の納期のうち1回で全額を納めることがあります。東京都では原則として8月に都税事務所から納税通知書が届き、第1期は8月31日、第2期は11月30日が納期限です。ただし、所得税の修正申告をした場合や、更正・決定を受けた場合、事業をやめた場合などは、別に届く納税通知書に書かれた納期限までに納めます。
東京都で事業を始めた方は、開始の日から15日以内に都税事務所へ事業開始等申告書を出します。年の途中で事業をやめた方は、所得税の確定申告とは別に、廃止の日から1か月以内に事業税の申告が要ります。
家賃収入が増えて法人化を考え始めた方は、個人事業税が法人事業税に変わり、法人住民税の均等割も加わるので、税の種類ごとではなく年間の合計で比べてください。比べ方は、このサイトの家賃収入の法人化の専門ページにまとめています。
まとめ — 基準に達したら、控除を足し戻した所得の290万円超に5%
大家の個人事業税は、東京都では10室・10棟・10件などの基準に達した年からかかり、税額は(不動産所得+青色申告特別控除−290万円)×5%です。確定申告をすれば申告は要らず、原則として8月と11月に納めます(地方税法72条の55の2第1項・72条の51第1項)。納めた額は、原則として納付すべきことが具体的に確定した年の必要経費になります(所得税基本通達37-6)。
家賃収入の規模が大きくなり、法人化を考え始めた方は、このサイトの家賃収入の法人化の専門ページとシミュレーターで年間の差を確かめてみてください。確定申告のご依頼は、このサイトの確定申告のページで案内しています。
※本記事の認定基準・納期限・申告書の提出期限は東京都主税局の案内によります。他の道府県では基準や手続きが異なることがあります。
出典
- 東京都主税局 個人事業税(不動産貸付業・駐車場業の認定基準、税額の計算、事業主控除、納期)
- e-Gov法令検索 地方税法72条の2(事業税の納税義務者等)・72条の49の12(個人の事業税の課税標準の算定の方法)・72条の49の14(事業主控除)・72条の49の17(個人の事業税の税率)・72条の51(個人の事業税の納期)・72条の55(個人の事業税の申告)・72条の55の2(所得税の確定申告書等の提出による事業税の申告のみなし)
- 所得税基本通達26-9(建物の貸付けが事業として行われているかどうかの判定)
- 所得税基本通達37-6(その年分の必要経費に算入する租税)
- 国税庁 事業としての不動産貸付けとそれ以外の不動産貸付けとの区分
- e-Gov法令検索 所得税法26条(不動産所得)・37条(必要経費)
- e-Gov法令検索 租税特別措置法25条の2(青色申告特別控除)
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