年金をもらいながら家賃収入がある人の確定申告 — 「年金400万円以下・他の所得20万円以下」は家賃の所得で判定、住民税の申告は別
「年金だけなら申告はいらないと聞いたけれど、家賃もある」— そんな方に向けて、所得税の確定申告が要るかどうかの線と、要らなくても出した方がよい場合、住民税の申告との違いを整理します。
この記事の要点
- 年金収入が400万円以下で、家賃の所得(収入−経費)が20万円以下なら、所得税の確定申告は要らない。20万円を超えたら申告が必要
- 20万円は家賃の「収入」ではなく、経費を引いた「所得」で見る。青色申告の10万円の控除を引いた後の金額でよい
- 所得税の申告が要らなくても、家賃の所得がある方は住民税の申告が必要。医療費控除などで還付を受けるには確定申告を出す
答え — 年金400万円以下・家賃の所得20万円以下なら所得税の申告は不要
公的年金等の収入金額が400万円以下で、その年金の全部が源泉徴収の対象になっている方は、公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下なら、所得税の確定申告書を出さなくてよいことになっています(所得税法121条3項)。家賃収入のある方にとっての「以外の所得」は、不動産所得です。不動産所得の金額は、家賃などの総収入金額から必要経費を引いた金額です(所得税法26条2項)。
つまり判定に使うのは家賃の収入ではなく、固定資産税・保険料・修繕費・減価償却費などの経費を引いた後の所得です(所得税法26条2項)。家賃収入が年120万円でも、経費が100万円なら不動産所得は20万円で、所得税の申告は要りません(所得税法121条3項)。経費に入るものは不動産所得の必要経費を見てください。
| 家賃の所得(年額) | 所得税の確定申告 | 住民税の申告 |
|---|---|---|
| 20万円以下 | 不要(還付を受けるなら出せる) | 必要(所得税の申告をすれば不要) |
| 20万円超 | 必要 | 所得税の申告が住民税の申告を兼ねる |
年金収入が400万円を超える方と、外国の法令に基づく年金のように源泉徴収の対象とされない公的年金等を受けている方は、家賃の所得が20万円以下でも、税額が出る限り確定申告が必要です(所得税法120条1項・121条3項)。ただし、所得税法203条の7で源泉徴収を要しないとされる公的年金等は「全部が源泉徴収の対象」かどうかの判定から除かれるので、それを受けているだけなら、ほかの条件を満たせば申告は要りません(所得税法121条3項)。
年金の所得の計算 — 65歳以上は110万円まで所得0円
公的年金等に係る雑所得は、年金の収入金額から公的年金等控除額を引いた金額です(所得税法35条2項1号)。65歳以上の方の公的年金等控除は最低110万円なので、年金収入がその額までなら年金の所得は0円です(租税特別措置法41条の15の3第1項)。
65歳未満の方の最低額は60万円で(所得税法35条4項1号)、どちらも年金以外の合計所得金額が1,000万円以下の方の額です。65歳以上かどうかは、その年の12月31日の年齢で判定します(租税特別措置法41条の15の3第4項)。
家賃の所得は年金の源泉徴収に反映されていないので、確定申告で合わせて精算することになります。
20万円の判定は「所得」で、青色申告の10万円の控除は引いてよい
「公的年金等に係る雑所得以外の所得金額」は、確定申告書の提出を要件として適用される特例を適用しないで計算した金額です(所得税基本通達121-6)。青色申告特別控除のうち10万円の控除は申告書の提出を要件としないため、これを引いた後の不動産所得で20万円と比べられます。
一方、10万円より大きい控除は、確定申告書への記載や貸借対照表などの提出、期限内の申告を要件とする特例なので、この判定では引けません。貸している部屋が10室や5棟に満たない方の青色申告の控除は10万円なので、貸付けの規模による違いは家賃収入の確定申告のやり方を見てください。
生命保険契約や生命共済契約に基づく個人年金は公的年金等に当たらないので、その所得も「以外の所得」に入ります。パートの給与がある方は、給与所得も「以外の所得」に含まれ、家賃の所得と給与所得の合計が20万円を超えると、原則として年金の側の申告不要の扱いは受けられません(所得税法121条3項)。
ただし、1か所から給与を受け、その給与の全部が源泉徴収や年末調整の対象になっている方(給与の収入が2,000万円以下)は、年金や家賃などの給与以外の所得が20万円以下なら、確定申告は要りません(所得税法121条1項)。同族会社の役員やその親族などが、その会社から給与のほかに、会社の事業に使わせた部屋や土地などの対価や、貸付金の利子を受け取っている場合は、この扱いを受けられません(所得税法121条1項・所得税法施行令262条の2)。
申告が「不要」でも出した方がよい場合と、住民税の申告
不要制度に当てはまる方も、確定申告を出すことはできます。医療費控除などを受けて1年分の税額が年金から源泉徴収された税額より少なくなる方は、確定申告をすると、差し引ききれなかった源泉徴収税額の還付を受けられます(所得税法122条1項)。年金から引かれた税額が源泉徴収票に書いてあるので、控除証明書と並べて確かめてみてください。
所得税の申告をしない年も、家賃の所得がある方は、市区町村へ住民税の申告書を3月15日までに出すことになっています(地方税法317条の2第1項)。所得税の確定申告をした方は、その申告書が住民税の申告書とみなされるので、別に出す必要はありません(地方税法317条の3第1項)。
自分で出すか、頼むか
年金と家賃だけの申告は、書類がそろっていれば国税庁の確定申告書等作成コーナーで作れます。手が止まりやすいのは、建物の減価償却費と、修繕費か資本的支出かの線引きです。物件を買った年、大きな修繕をした年、相続で引き継いだ年は、申告だけを税理士に頼むことも検討してみてください。
弊所は個人の確定申告だけのご依頼も受けています。料金と受付の範囲は確定申告のページに載せていますので、家賃収入のある方はそちらをご覧ください。
出典
- 国税庁 公的年金等を受給されている方へ
- 国税庁 タックスアンサー No.1600 公的年金等の課税関係
- 国税庁 タックスアンサー No.1370 不動産収入を受け取ったとき
- 国税庁 質疑応答事例 青色申告特別控除(10万円)と確定申告の要否
- 国税庁 質疑応答事例 源泉徴収の対象とされない年金収入がある場合の確定申告
- 国税庁 所得税基本通達121-6(給与所得及び退職所得又は公的年金等に係る雑所得以外の所得金額の計算)
- e-Gov法令検索 所得税法26条(不動産所得)・35条(雑所得)・120条(確定所得申告)・121条(確定所得申告を要しない場合)・122条(還付等を受けるための申告)
- e-Gov法令検索 租税特別措置法25条の2(青色申告特別控除)・41条の15の3(公的年金等控除の最低控除額等の特例)
- e-Gov法令検索 地方税法317条の2(市町村民税の申告等)・317条の3
この記事のテーマで使える道具・専門ページ
試算家賃収入の法人化シミュレーション→ 専門ページ家賃収入の法人化 (いくらから・移し方)→ 準備診断個人事業主の決算・確定申告準備診断→ 専門ページ個人の確定申告→この記事の内容、私の場合は? — 普段お使いの AI に相談
押すと、この記事の要点が質問文になって、選んだ AI に渡ります。
Gemini など、ほかの AI に貼り付けて使えます
AI によってはそのまま回答が始まります。回答は各 AI サービスによるもので、当事務所の見解ではありません。
※免責事項: 本コラムは一般的な情報のご提供を目的とするもので、個別の事案に対する税務上の助言ではありません。内容は執筆時点の法令等にもとづいており、その後の改正などにより現在の取り扱いと異なることがあります。正確な記載に努めていますが内容を保証するものではなく、本コラムの情報にもとづいて行われたご判断について、当事務所は責任を負いかねます。実際の手続きやご判断にあたっては、税理士等の専門家にご相談ください。