個人事業主が年明けに出す書類 — 1月20日の納期の特例の納付、1月31日(令和8年分は2027年2月1日)の法定調書・給与支払報告書・償却資産の申告、確定申告の前に片付ける順番
「確定申告より前に、1月に出す書類があると聞いたが、自分にも関係があるのだろうか」— 人を雇い始めた、外注費を払い始めた個人事業主の方に、こうした疑問は少なくありません。本記事では、1月に期限が来る3つの手続きと、自分に関係があるかの線引き、確定申告の前に片付ける順番を整理します。
この記事の要点
- 給与や報酬から源泉徴収した所得税を半年ごとにまとめて納める納期の特例を受けている人は、7月から12月分を1月20日までに納めます(所得税法216条)
- 前年に払った給与・報酬の法定調書は税務署へ、給与支払報告書は市区町村へ、1月31日までに出します(所得税法225条1項・226条1項・地方税法317条の6第1項)。令和8年分は1月31日が日曜日なので、2027年2月1日(月)が期限です(国税通則法10条2項・地方税法20条の5第2項)
- 事業に使う機械・器具・備品などの償却資産を1月1日に持っている人は、1月31日までに資産のある市町村長へ申告します(地方税法383条)
まず結論 — 1月の期限は3つ。関係があるかは主に「給与」「報酬」「備品」で決まる
1月に期限が来る手続きは、源泉所得税の納付、法定調書と給与支払報告書、償却資産の申告の3つです。まず、前年に給与を払ったか、源泉徴収の対象になる報酬を払ったか、1月1日に事業用の備品を持っているか、この3つを確かめることをお勧めします。ご自身には、このうちどれが関係するでしょうか。
不動産業者である個人は、家賃など不動産の貸付けや譲渡の対価、あっせん手数料を払ったときも支払調書を出します(所得税法225条1項9号)。ただし、同一人への年間の支払額が15万円以下(譲渡の対価は100万円以下)なら、その支払調書は出さなくてよいとされています(所得税法施行規則90条3項)。
| 手続き | 関係がある人 | 出す先 | 期限 | 根拠 |
|---|---|---|---|---|
| 納期の特例分の源泉所得税の納付 | 納期の特例の承認を受けている人(給与の支給人員が常時10人未満) | 税務署・金融機関で納付 | 7〜12月分(承認を受けた月以後の分)を翌年1月20日 | 所得税法216条 |
| 給与所得の源泉徴収票の交付と法定調書合計表 | 給与を払った人 | 源泉徴収票は本人へ交付・合計表は税務署 | 翌年1月31日 | 所得税法226条1項 |
| 報酬・料金等の支払調書 | 源泉徴収の対象になる報酬を払った人(税理士報酬や原稿料は同一人に年5万円超) | 税務署 | 翌年1月31日 | 所得税法225条1項・所得税法施行規則84条 |
| 給与支払報告書 | 給与の源泉徴収義務がある人 | 従業員が1月1日に住む市区町村 | 翌年1月31日 | 地方税法317条の6第1項 |
| 償却資産の申告 | 1月1日に事業用の償却資産を持つ人 | 資産のある市区町村(23区は都税事務所) | 1月31日 | 地方税法383条 |
令和8年分(2026年中の支払い)は、2027年1月31日が日曜日です。国税の期限が日曜日や休日に当たるときは翌日が期限になり(国税通則法10条2項)、地方税も同じ扱いなので(地方税法20条の5第2項)、法定調書・給与支払報告書・償却資産の申告はいずれも2027年2月1日(月)が期限です。国税庁の法定調書の手引(令和8年分)も、提出期限を令和9年2月1日(月)と案内しています。
令和8年分(2026年中の支払い)の1月の手続き
- 12月31日給与と報酬の支払いを締め、1月1日に持っている備品を確かめる
- 1月20日納期の特例分(7〜12月分。年の途中で承認を受けた年は承認を受けた月以後の分)の源泉所得税を納付
- 2月1日(月)法定調書・給与支払報告書・償却資産の申告(1月31日が日曜日のため)
- 2月16日所得税の確定申告の受付が始まる
1月20日 — 納期の特例を受けている人の源泉所得税
原則
給与や報酬から源泉徴収した所得税は、支払った月の翌月10日までに国に納めます。
所得税法183条1項・204条1項
ただし
給与の支給人員が常時10人未満で、税務署長の承認を受けている人は、1月から6月分を7月10日まで、7月から12月分を翌年1月20日までにまとめて納められます(所得税法216条)。年の途中で承認を受けた半年は、承認を受けた月からその半年の最後の月までの分が対象です。
所得税法216条
人を雇い始めて年の途中で承認を受けた方は、承認を受けた月より前の月の分をまとめられず、翌月10日までに納めます(所得税法183条1項・216条)。国税庁も、申請書を出した月の翌月に源泉徴収する分から特例の対象になると案内しています。
納期の特例の対象になるのは、給与・退職手当と、税理士や弁護士などの報酬(所得税法204条1項2号の報酬)から源泉徴収した所得税です(所得税法216条)。デザイン料や原稿料のように、それ以外の報酬から源泉徴収した所得税は、承認を受けていても翌月10日までに納めます(所得税法204条1項)。12月に外注費を払った方は、どちらの納付書に載せるかを確かめてみてください。
そもそも源泉徴収が要らない人もいます。常時2人以下の家事使用人だけに給与を払う人は、給与の源泉徴収が要りません(所得税法184条)。給与について源泉徴収義務のない個人が払うデザイン料や税理士報酬などの報酬・料金も源泉徴収の対象外ですが、バーなどでホステスなどに払う報酬は源泉徴収が要ります(所得税法204条1項6号・2項2号)。一人で仕事をしていて誰にも給与を払っていない方は、ホステスなどへの報酬を除き、外注先への支払いから税金を引く必要がなく、1月20日の納付もありません。
1月31日 — 法定調書と給与支払報告書。令和8年分から税務署用の源泉徴収票は作らない
原則
給与を払った人は、受給者ごとに源泉徴収票を作り、翌年1月31日までに1通を税務署長へ出し、1通を本人に交付します。
所得税法226条1項
ただし
年の途中で退職した人の分は、退職の日以後1か月以内に出します。
所得税法226条1項
ここが令和8年分から変わります。市区町村へ給与支払報告書を提出した場合には税務署へ源泉徴収票を提出したものとみなす仕組みが、令和9年1月1日から始まります(所得税法226条6項)。国税庁の法定調書の手引(令和8年分)も、令和8年分以降は税務署提出用の源泉徴収票を作成・提出する必要がなくなると案内しています。
法定調書合計表は、法定調書を税務署に提出する際に併せて提出するよう、同じ手引が案内しています。本人への交付は今までどおり1月31日までです(所得税法226条1項)。
給与支払報告書は、1月1日現在で給与を払っている人のうち所得税の源泉徴収義務がある人が、前年中の給与について、受給者が1月1日に住む市区町村へ1月31日までに出します(地方税法317条の6第1項)。家族に青色事業専従者給与を払っている場合も同じです。前年の途中で退職した人の分は、支払額が30万円以下なら出さなくてもよいとされています(地方税法317条の6第3項)。
支払調書は、税理士報酬や原稿料・デザイン料など所得税法204条1項の報酬を払った人が、同一人への年間の支払額が5万円を超える相手の分を税務署へ出します(所得税法225条1項3号・所得税法施行規則84条2項4号)。給与について源泉徴収義務のない個人が払う報酬は、ホステスなどへの報酬を除き、源泉徴収の対象外の報酬として、支払調書の対象からも外れています(所得税法施行規則84条1項・所得税法204条2項2号)。
1月31日 — 償却資産の申告。免税点の下でも申告は要る
原則
事業に使う機械や器具・備品などの償却資産を1月1日に持っている人は、資産の所在する市町村長へ1月31日までに申告します。
地方税法383条
ただし
取得価額10万円未満で一時に経費にした物と、一括償却資産として経費にした物は、償却資産に含めません(地方税法施行令49条・所得税法施行令138条1項)。土地・家屋と、自動車税・軽自動車税の対象になる車も対象外です。
地方税法341条4号
青色申告の少額減価償却資産の特例で全額を経費にした備品は、除外の対象に挙がっていないので申告の対象に残ります(地方税法施行令49条)。東京都主税局の案内でも、中小企業の特例で損金算入した資産は申告の対象とされています。23区内では、資産のある区の都税事務所が申告先です。
使っていない備品でも、1月1日に事業に使える状態にあれば償却資産に当たります(地方税法341条4号)。東京都主税局の案内では、パソコンやルームエアコン、看板、LAN設備のほか、借りた店舗に借主が取り付けた内装・造作も申告の対象に挙がっています。
償却資産の免税点は150万円ですが、令和8年の地方税法の改正で令和9年度分から180万円に上がります。総務省も、令和9年度以後の償却資産の免税点をこの額と案内しています。令和9年度分からは、同じ市町村にある償却資産の課税標準額の合計が180万円に満たなければ、固定資産税はかかりません(地方税法351条)。
ただし、財政上その他特別の必要がある場合は、市町村が条例で定めれば、180万円に満たなくても固定資産税を課すことができます(地方税法351条)。免税点は税がかかるかの線であって申告が要るかの線ではないので、資産を持っていれば金額にかかわらず申告します。
確定申告の前に片付ける順番
1月の書類は、確定申告の集計と材料が重なります。給与と報酬の支払いを締めれば源泉徴収票・支払調書・納付書の数字がそろい、備品の一覧を整えれば減価償却費の計算にそのまま使えます。所得税の確定申告の受付は2月16日から3月15日までなので(所得税法120条1項)、順番を決めて進めれば、2月の申告に入るときには数字の大半が固まっています。
1月に片付ける順番
12月の支払いを締める
給与・外注費の12月分を払い終え、源泉徴収簿と支払先ごとの年間額を集計する
1月20日までに納付する
納期の特例分の源泉所得税を納め、徴収高計算書の控えを残す
源泉徴収票を渡す
従業員と専従者に交付し、給与支払報告書を市区町村へ出す
支払調書と合計表を出す
年5万円超の報酬先を拾い、合計表と一緒に税務署へ出す
償却資産を申告する
1月1日に持っている備品を台帳と照らし、都税事務所か市区町村へ出す
確定申告の集計に入る
2月16日からの受付に向けて、売上・経費・控除証明を集める
従業員や専従者がいて1月の手続きが毎年続く方には、年間を通して見ていく顧問の形が基本です。弊所の個人事業主の顧問のページで、進め方と料金を確かめてみてください。確定申告の依頼の進め方は、このサイトの確定申告のページに書きました。申告の準備がどこまで進んでいるかは、個人事業主の決算・確定申告準備診断ツールで確かめられます。
出典
- e-Gov法令検索 所得税法120条(確定所得申告)・183条(源泉徴収義務)・184条(源泉徴収を要しない給与等の支払者)・204条(源泉徴収義務)・216条(源泉徴収に係る所得税の納期の特例)・225条(支払調書及び支払通知書)・226条(源泉徴収票)
- e-Gov法令検索 所得税法施行規則84条(報酬、料金等の支払調書)
- e-Gov法令検索 国税通則法10条(期間の計算及び期限の特例)
- e-Gov法令検索 地方税法20条の5(期間の計算及び期限の特例)・317条の6(給与支払報告書)・341条(固定資産税に関する用語の意義)・351条(固定資産税の免税点)・383条(固定資産の申告)
- e-Gov法令検索 地方税法施行令49条(償却資産から除く少額の資産)
- 国税庁 令和8年分 給与所得の源泉徴収票等の法定調書の作成と提出の手引 第1章(提出期限・源泉徴収票のみなし提出の特例)
- 国税庁タックスアンサー No.7400 法定調書の提出義務者
- 国税庁タックスアンサー No.7411 「給与所得の源泉徴収票」の提出範囲と提出枚数等
- 国税庁タックスアンサー No.7431 「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」の提出範囲と提出枚数等
- 国税庁タックスアンサー No.2505 源泉所得税及び復興特別所得税の納付期限と納期の特例
- 国税庁タックスアンサー No.2110 事業主がしなければならない源泉徴収
- 国税庁 質疑応答事例「給与等の支払を受ける者が常時10人未満であるかどうかの判定」
- 東京都主税局 固定資産税(償却資産)(申告の対象・申告先・免税点)
- 総務省 固定資産税の概要(免税点・令和9年度以後の額)
この記事の内容、私の場合は? — 普段お使いの AI に相談
押すと、この記事の要点が質問文になって、選んだ AI に渡ります。
Gemini など、ほかの AI に貼り付けて使えます
AI によってはそのまま回答が始まります。回答は各 AI サービスによるもので、当事務所の見解ではありません。
※免責事項: 本コラムは一般的な情報のご提供を目的とするもので、個別の事案に対する税務上の助言ではありません。内容は執筆時点の法令等にもとづいており、その後の改正などにより現在の取り扱いと異なることがあります。正確な記載に努めていますが内容を保証するものではなく、本コラムの情報にもとづいて行われたご判断について、当事務所は責任を負いかねます。実際の手続きやご判断にあたっては、税理士等の専門家にご相談ください。