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役員報酬を変えたあとの手続き — 月額変更届 (随時改定) の条件と期限、税務署への届出は不要、給与計算の変更

「株主総会で役員報酬を変えた。議事録も作った。で、次は何をどこへ出せばいいのか」— 役員報酬を変えた直後の社長に向けて、税務署・年金事務所・自社の給与計算の3つに分けて、あとの手続きを順番に整理します。変えた月から4か月目までに何が起きるかを、ご自身の月に置き換えて追ってみてください。

この記事の要点

  • 税務署への届出は要らない。定期同額給与の改定は株主総会の決議と議事録を会社で保管すれば足り、届出が要るのは事前確定届出給与だけ(法人税法34条1項1号・2号イ・法人税法施行令69条1項1号)
  • 社会保険は、固定的賃金の変動のあと3か月の報酬の平均で標準報酬月額が従前と2等級以上ずれたら随時改定で、月額変更届を年金事務所へ速やかに出す。改定は、変動後の報酬を初めて受けた月から数えて4つ目の月から(健康保険法43条1項・健康保険法施行規則26条1項・厚生年金保険法23条1項・厚生年金保険法施行規則19条1項)
  • 給与計算は、変えた月の支給分から源泉徴収税額表の月額表(甲欄)を当て直し、社会保険料の控除額は改定後の標準報酬月額の保険料を翌月の報酬から引く形で変わる。住民税の特別徴収の額は前年の所得で決まっているので変えない(所得税法185条1項1号イ・健康保険法167条1項・厚生年金保険法84条1項・地方税法313条1項・321条の5第1項)

税務署 — 届出は要らない。議事録を作って保管する

役員の毎月の給与(定期同額給与)は、事業年度の各支給時期の支給額が同額であることが損金算入の条件で、改定したときは改定の前と後でそれぞれ同額なら足ります(法人税法34条1項1号・法人税法施行令69条1項1号)。この改定について税務署へ出す書類はなく、法人税法が税務署長への届出を求めているのは事前確定届出給与です(法人税法34条1項2号イ)。

改定できる時期は、期首から3か月を経過する日までの改定が基本で、臨時改定事由と業績悪化改定事由(減額だけ)の例外があります(法人税法施行令69条1項1号イ・ロ・ハ)。時期の決まりは別の記事「役員報酬の変更時期はいつまで?」で扱っているので、この記事は変えたあとに絞ります。

株式会社の報酬は、定款に定めがなければ株主総会の決議で決めます(会社法361条1項)。議事録は、開催の日時と場所・議事の経過の要領と結果・出席した取締役の氏名などを書いて作り(会社法318条1項・会社法施行規則72条3項)、株主総会の日から10年間、本店に備え置きます(会社法318条2項)。議事録に署名や押印を求める条文はなく、記名押印は慣行です。議事録の文面は、このサイトの議事録ひな形に会社名と改定後の月額を入れれば作れます。

年金事務所 — 2等級以上ずれたら月額変更届、改定は4か月目から

社会保険(健康保険・厚生年金)の保険料は標準報酬月額で決まり、報酬が大きく変わったときは毎年の定時決定を待たずに改定します(健康保険法43条1項・厚生年金保険法23条1項)。条文は、継続した3か月に受けた報酬の総額を3で割った額が従前の報酬月額と比べて著しく高低を生じたときに、その月の翌月から改定できると書いています(健康保険法43条1項・厚生年金保険法23条1項)。日本年金機構はこれを次の3つの要件で運用し、変動後の報酬を初めて受けた月から4か月目の標準報酬月額から改定します。

随時改定の3つの要件と、役員報酬の場合の見方
要件内容役員報酬を変えたとき
固定的賃金の変動昇給・降給、固定的な手当の追加や額の変更など月額の改定はこれに当たる
2等級以上の差変動月以後3か月の報酬の平均で出した標準報酬月額が従前と2等級以上違う上限・下限にわたる等級変更は1等級差でも対象
支払基礎日数17日以上3か月とも17日以上(特定適用事業所の短時間労働者は11日)月給制は暦日数で数えるので通常は満たす

なお、さかのぼって昇給し、昇給の差額をまとめて支給したときは、差額を支給した月を変動月として、差額を差し引いた3か月の報酬の平均で2等級以上の差があるかを見ます。

要件に当てはまったら、事業主が被保険者報酬月額変更届を速やかに年金事務所(事務センター)へ出します(健康保険法施行規則26条1項・厚生年金保険法施行規則19条1項)。特定法人の事業所は電子申請で出します(健康保険法施行規則26条3項・厚生年金保険法施行規則19条4項)。改定後の標準報酬月額は、6月までの改定なら当年8月まで、7月以降の改定なら翌年8月までの各月に使います(健康保険法43条2項・厚生年金保険法23条2項)。

給与計算 — 変えた月の支給分から源泉所得税を、翌月から社会保険料を見直す

源泉所得税は、給与を支払うたびにその支給額に応じて徴収し、翌月10日までに納めます(所得税法183条1項)。毎月払いの給与は源泉徴収税額表の月額表の甲欄(扶養控除等申告書を出している役員)で税額を求めるので(所得税法185条1項1号イ)、変えた月の支給分から新しい額で当て直します。税額表に当てはめる金額は、その月の給与から社会保険料等を控除した後の金額です。令和8年分は令和8年分の税額表を使い、令和9年分からは防衛特別所得税を含む新しい税額表に替わります。

社会保険料は、事業主が被保険者負担分を前月の標準報酬月額に係る保険料として報酬から控除できる決まりなので(健康保険法167条1項・厚生年金保険法84条1項)、翌月控除の会社では改定月の翌月に支払う給与から控除額が変わります。上の例なら、10月分の保険料を11月支給の給与から引く形です。当月控除にしている会社は改定月の給与から変わるので、自社の控除の方式を給与台帳で確かめてください。

住民税の特別徴収の額は、前年の所得をもとに区市町村が決めた税額の12分の1を6月から翌年5月まで毎月徴収するものなので(地方税法313条1項・321条の5第1項)、役員報酬を変えても年度の途中では変わりません。

原則

役員報酬の改定で税務署へ出す届出はなく、社会保険は変動後3か月の平均で標準報酬月額が従前と2等級以上ずれたときに月額変更届を出します。

法人税法34条1項1号・健康保険法43条1項・健康保険法施行規則26条1項

ただし

事前確定届出給与は、定めの内容を期限までに税務署長へ届け出ることが損金算入の条件で、定期同額給与の改定とは別の手続きです。

法人税法34条1項2号イ

まとめ — 変えた月から4か月目までの流れ

役員報酬を変えたあとの手続き(3月決算・6月の総会で改定・7月支給分から適用の例)

  1. 6月 株主総会で改定を決議し、議事録を作る

    税務署への届出はなし。議事録は本店で保管する(会社法318条2項)

  2. 7月 新しい月額で初めて支給する

    源泉所得税は月額表の甲欄で当て直す(所得税法185条1項1号イ)。社会保険料の控除額はまだ前の額

  3. 7〜9月 3か月の報酬の平均で標準報酬月額を出す

    従前と2等級以上の差なら随時改定(健康保険法43条1項・厚生年金保険法23条1項)

  4. 9月の支給後 月額変更届を速やかに出す

    年金事務所(事務センター)へ電子申請・郵送・窓口で(健康保険法施行規則26条1項・厚生年金保険法施行規則19条1項)

  5. 10月 標準報酬月額が改定される

    翌月控除なら11月支給の給与から新しい保険料を控除する(健康保険法167条1項・厚生年金保険法84条1項)

役員報酬を変えたあとの日付(3月決算・6月25日の総会で改定・月末支給・7月支給分から適用の例)

  1. 2027年6月25日定時株主総会で改定を決議。期首から3か月を経過する日(6月30日)までの改定(法人税法施行令69条1項1号イ)
  2. 2027年7月31日改定後の月額を初めて支給(変動月)。源泉所得税はこの支給分から新しい額(所得税法185条1項1号イ)
  3. 2027年9月30日3か月目の支給。7〜9月の報酬の平均で、従前と2等級以上の差があるかを確かめる(健康保険法43条1項)
  4. 2027年10月1日月額変更届を速やかに出す(健康保険法施行規則26条1項・厚生年金保険法施行規則19条1項)。10月の標準報酬月額から改定
  5. 2027年11月30日翌月控除の会社は、この支給分から新しい保険料を控除(健康保険法167条1項・厚生年金保険法84条1項)

届の期限は「速やかに」なので、9月の給与計算が終わったその日に出すと決めておくと忘れません。

届出の要る先は年金事務所だけと覚えて、変えた月の給与計算から順に確かめてみてください。

※本記事の例は架空の会社で、3月決算・6月の定時株主総会で改定・月末支給・40歳未満・東京都の協会けんぽの令和8年度の率を前提にしています。源泉所得税の額は扶養の人数などで変わるので、具体額は書いていません。
※役員報酬をゼロにするときの資格の扱い、70歳以上の方の厚生年金、健康保険組合に入っている会社の率は扱いません。保険料の端数処理は会社と本人の特約があればそれによります。

※合同会社の場合: 本文の「株主総会の決議」は株式会社の場合の手続きです。合同会社の業務は、社員が2人以上なら、定款に別段の定めがある場合を除き社員の過半数で決めます(会社法590条2項)。業務を執行する社員を定款で定め、その社員が2人以上あるときは、定款に別段の定めがある場合を除き業務執行社員の過半数で決めます(会社法591条1項)。定款を変更して報酬に関する定めを置く場合は、定款に別段の定めがある場合を除き総社員の同意が必要です(会社法637条)。いずれの場合も、同意書・決定書の形で日付と内容を書面に残します。税務の届出などで「株主総会等の決議」が求められる場面では、合同会社ではこの決定・同意がこれに当たります(法人税法施行令69条3項)。

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※免責事項: 本コラムは一般的な情報のご提供を目的とするもので、個別の事案に対する税務上の助言ではありません。内容は執筆時点の法令等にもとづいており、その後の改正などにより現在の取り扱いと異なることがあります。正確な記載に努めていますが内容を保証するものではなく、本コラムの情報にもとづいて行われたご判断について、当事務所は責任を負いかねます。実際の手続きやご判断にあたっては、税理士等の専門家にご相談ください。

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