個人事業主の消費税の確定申告 — 3月31日の期限、申告書と付表の作り方、2割特例・簡易課税の書き方、納付と振替納税
「所得税の申告は終わったのに、消費税はまだ?」— 初めて消費税の申告をする個人事業主の方に向けて、3月31日の期限、申告書と付表、2割特例・簡易課税の書き方、納付までを整理しますので、ご自身の手順に当てはめてみてください。令和8年分(2027年3月31日までに申告する分)に使える形で書きます。
この記事の要点
- 個人事業主の消費税の申告と納付の期限は翌年3月31日。所得税の3月15日とは別の日で、令和8年分は2027年3月31日
- 出すのは申告書第一表と第二表に、方式ごとの付表(本則なら付表1-3・2-3、簡易なら付表4-3・5-3、2割特例なら付表6)。2割特例は第一表の欄に○を付けるだけで、事前の届出は要らない
- 申告書を出しても納付書は送られてこない。振替納税は、納期限までに依頼書を出せば4月中旬〜下旬の振替日に口座から引き落とされる。所得税とは別に手続きが要る
期限 — 所得税は3月15日、消費税は3月31日。納付も同じ日
消費税の確定申告書は、課税期間の末日の翌日から2か月以内に出します(消費税法45条1項)。個人事業主の課税期間は1月1日から12月31日までで(消費税法19条1項1号)、12月31日の属する課税期間の申告書の提出期限は、翌年3月31日とされています(租税特別措置法86条の4第1項)。納付も、この提出期限までです(消費税法49条)。
| 税目 | 申告の期限 | 納付の期限 | 振替納税の振替日 |
|---|---|---|---|
| 所得税 | 2027年3月15日(所得税法120条1項) | 2027年3月15日(所得税法128条) | 2027年4月中旬〜下旬 |
| 消費税・地方消費税 | 2027年3月31日(租税特別措置法86条の4第1項) | 2027年3月31日(消費税法49条) | 2027年4月中旬〜下旬 |
令和8年分の消費税の納期限は令和9年3月31日(水)で、振替納税の振替日は4月中旬から下旬の予定です。所得税の振替日とは別の日になるので、口座の残高は2回確かめることになります。期限が土日祝日のときは翌日に延びますが、2027年3月31日は水曜日なのでそのままです。
申告が要るのは課税事業者です。インボイス発行事業者の登録をしている人は、登録日の属する課税期間以後は免税になりません(消費税法基本通達1-4-1の2)。免税事業者が年の途中で登録を受けた場合は、登録を受けた日から課税事業者になる経過措置があり、その年の申告は登録を受けた日からの期間分の取引について行います。
登録をしていない人は、原則として基準期間の課税売上高が1,000万円を超えているかで免税かどうかを判定します(消費税法基本通達1-4-1)。ただし、基準期間では超えていなくても、特定期間(前年1月1日から6月30日まで)の課税売上高が1,000万円を超えると課税事業者になります。特定期間の判定は課税売上高に代えて給与等支払額の合計額で行うこともでき、どちらで判定するかは事業者が選べるので、上半期の給与等がこの線以下なら免税のままでいられます。個人事業主が上半期にこの線を超える給与を払うことは少なく、特定期間の判定で課税事業者になる人は実際には限られると考えています。
申告書の組み立て — 第一表・第二表に、方式ごとの付表を足す
申告書は第一表と第二表の2枚が本体で、課税期間中の資産の譲渡等の対価の額や課税仕入れ等の税額の明細を書いた書類を添付します(消費税法45条6項・消費税法施行規則22条2項)。この明細に当たるのが付表で、計算の方式によって使う付表が変わります。付表の名前がいくつも出てきて、どれを使えばよいか迷うのではないでしょうか。
令和8年分は「令和8年9月30日以前に開始した課税期間用」の様式を使うので、別の様式と取り違えないように確かめてください。
| 方式 | 第一表 | 付表 | 使える人 |
|---|---|---|---|
| 一般課税(本則課税) | 一般用 | 付表1-3・2-3 | 課税事業者なら誰でも |
| 簡易課税 | 簡易課税用 | 付表4-3・5-3 | 基準期間の課税売上高が5,000万円以下で、選択届出書を出した人 |
| 2割特例 | 一般用(簡易課税の届出書を出した人は簡易課税用) | 付表6 | インボイス登録を機に課税事業者になった人(登録がなければ免税だった課税期間に限る) |
税率は、国の消費税が7.8%(軽減税率の品目は6.24%)、地方消費税がその78分の22で、合わせて10%(軽減税率は8%)です。税率の定めは消費税法29条と地方税法72条の83にあります。地方消費税は国が消費税と併せて賦課徴収するので、申告書も納付も1本です(地方税法附則9条の4第1項)。売上税額は、税込の売上高に110分の100を掛けた税抜の額に7.8%を掛けて出します。
この特例を使えるのは令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する課税期間で、個人事業主は令和8年分の申告が最後です。付記の仕方は、確定申告書(期限後申告書を含む)にその旨を書くだけです(平成28年改正法附則51条の2第3項)。控除できる額は売上税額の100分の80なので、納める消費税は売上税額の100分の20になります(平成28年改正法附則51条の2第2項)。
簡易課税と一般課税 — みなし仕入率と、2割特例のあとの届出の期限
簡易課税は、基準期間の課税売上高が5,000万円以下の課税期間について、売上げの消費税額に事業区分ごとのみなし仕入率を掛けた額を仕入れの消費税額とみなす方式です(消費税法37条1項)。使うには、原則としてその課税期間の初日の前日までに選択届出書を出しておく必要があります(消費税法37条1項)。みなし仕入率は、卸売業の90%から不動産業の40%まで6段階です。
簡易課税は一度選ぶと、事業を廃止した場合を除き、選択届出書の効力が生ずる課税期間の初日から2年を経過する日の属する課税期間の初日以後でなければ、やめる届出書(選択不適用届出書)を出せません(消費税法37条6項)。2割特例のように課税期間ごとに使う・使わないを選べる仕組みではないので、届出書を出す前に翌年の仕入れの見込みも考えておいてください。
一般課税(本則課税)は、売上げの消費税額から、インボイスをもとに計算した仕入れの消費税額を引きます(消費税法30条1項)。設備投資などで仕入れの税額が売上げの税額を上回る年は、一般課税なら還付を受けるための申告ができます(消費税法46条1項)。
2割特例や簡易課税では仕入れの税額を売上げの税額から計算するので、還付は生じないと考えておいてください。
納付と振替納税 — 納付書は来ない。依頼書は納期限までに出す
申告書を出しても、税務署から納付書や納税のお知らせは送られてきません。期限内に申告した分の消費税は、提出期限までに自分で納めます(消費税法49条)。納め方の中で手間が少ないのが振替納税で、納税者本人の名義の預貯金口座からの引落しで納める手続きです(国税通則法34条の2第1項)。申告書と同じ日に、依頼書も出してみてください。
振替納税を使うまで
依頼書を出す
「預貯金口座振替依頼書兼納付書送付依頼書」を納期限(2027年3月31日)までに、e-Taxか税務署・金融機関へ出す。使えるのは期限内に申告した確定申告分と中間申告分
税目ごとに手続きする
所得税で振替納税を使っていても、消費税の分は別に依頼書を出す。一度出せば翌年以降は要らない
残高を確かめる
振替日(4月中旬〜下旬)の前日までに口座の残高を確かめる。引き落とせないと、納期限の翌日からの延滞税がかかることがある(国税通則法60条1項)
領収証書は出ない
振替納税では領収証書が発行されない。納付済の納税証明書が出せるまで、引落しから1週間ほどかかる
前年の確定消費税額(地方消費税を含まない国税分)の半分が24万円を超えると、翌年は中間申告と納付が要ります(消費税法42条6項)。年税額でいえば48万円が線で、税務署から届く中間申告書と納付書で納めます。ただし、回数は年1回とは限らず、前年の確定消費税額が大きいほど増えます(消費税法42条1項・4項・6項)。
- 48万円超400万円以下: 年1回。令和8年分の申告で超えた人は、令和9年8月31日までに中間申告と納付をする
- 400万円超4,800万円以下: 年3回(3か月ごと)
- 4,800万円超: 年11回(1か月ごと)
中間申告書を出さなくても、提出期限に出したものとみなされて前年の実績の額が確定します(消費税法44条)。
まとめ — 3月31日から逆算して、方式と付表を決める
令和8年分の消費税の申告と納付
- 2026年12月31日令和8年分の課税期間の終わり(消費税法19条1項1号)。売上と仕入れを税区分ごとに集計する
- 2027年3月15日所得税の確定申告の期限(所得税法120条1項)。決算書の数字を消費税の申告書に写す
- 2027年3月31日消費税・地方消費税の申告と納付の期限(租税特別措置法86条の4第1項・消費税法49条)。振替納税の依頼書もこの日まで
所得税の振替日と消費税の振替日は別の日です。2回分の引落しの日を、依頼書を出した日に手帳へ書いておきましょう。
どの方式がいちばん軽いかは、売上の内訳と仕入れの額で変わります。弊所の消費税の申告方式シミュレーションでは、一般課税・簡易課税・2割特例・3割特例の4つを並べて試せます。申告書を作る前に、一度ご自身の数字を入れてみてください。
出典
- 国税庁 消費税・地方消費税(個人事業者)の確定申告と納税は正しくお早めに(令和8年分)
- 国税庁 主な国税の納期限(法定納期限)及び振替日
- 国税庁 消費税及び地方消費税の申告書・添付書類等
- 国税庁 2割特例 特設ページ
- 国税庁 2割特例(インボイス発行事業者となる小規模事業者に対する負担軽減措置)の概要
- 国税庁 G-2-1 申告所得税及び復興特別所得税、消費税及び地方消費税(個人事業者)の振替納税手続による納付
- 国税庁 確定申告期Q&A 税金の納付
- 国税庁 確定申告期Q&A 消費税及び地方消費税の申告等
- 国税庁 消費税及び地方消費税(個人事業者)の中間申告と納付
- 国税庁 タックスアンサー No.6505 簡易課税制度
- e-Gov法令検索 消費税法19条(課税期間)・29条(税率)・30条(仕入れに係る消費税額の控除)・37条(中小事業者の仕入れに係る消費税額の控除の特例)・42条(中間申告)・44条(中間申告書の提出がない場合の特例)・45条(確定申告)・46条(還付を受けるための申告)・49条(確定申告による納付)、平成28年改正法附則51条の2・51条の3(2割特例と3割特例)、令和8年改正法附則90条(経過措置)
- e-Gov法令検索 消費税法施行規則22条(確定申告書の記載事項等)
- e-Gov法令検索 租税特別措置法86条の4(個人事業者に係る消費税の課税資産の譲渡等及び特定課税仕入れについての確定申告期限の特例)
- e-Gov法令検索 地方税法72条の83(地方消費税の税率)・附則9条の4(譲渡割の賦課徴収の特例等)
- e-Gov法令検索 国税通則法34条の2(口座振替納付に係る通知等)・60条(延滞税)
- e-Gov法令検索 所得税法120条(確定所得申告)・128条(確定申告による納付)
※本記事は令和8年4月1日現在の法令等によります。令和8年分の振替日は国税庁が確定次第公表します(令和7年分は4月30日でした)。飲食料品の譲渡の消費税率は令和9年4月1日から令和11年3月31日までの2年間引き下げられ、飲食料品の譲渡を行う事業者には簡易課税制度の計算方法の特例が設けられますが、始まるのは令和9年4月1日からなので令和8年分の申告には関係しません。期限後の申告・延滞税・加算税は、別の記事「確定申告の期限を過ぎたら」で扱っています。
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