決算期 (事業年度) の変更はいつまでにできるか — 定款変更の決議・異動届の提出先・変更した期の役員報酬と消費税
「繁忙期と決算が重なってつらい。決算月を動かせるなら、いつまでに何をすればいいのか」— 決算期(事業年度)の変更を考えている小さな会社の社長に向けて、決議の期限と手続きの順番、変更した期の役員報酬と消費税で動くことを整理します。架空の3月決算の会社が12月決算に変える例を置いたので、ご自身の会社の月に置き換えて読んでみてください。
この記事の要点
- 決算期の変更は定款の変更なので、株主総会の特別決議(合同会社は総社員の同意)で行い、変更の登記は要らない(会社法466条・309条2項・637条・911条3項・914条)
- 税務署へは異動届出書を遅滞なく(異動前の納税地の所轄税務署長へ)、東京都へは変更の日から10日以内に異動届出書を出す(法人税法15条)。決議の期限を定めた条文はなく、新しい決算日が来る前に決めておくことをお勧めします
- 変更した期は1年未満の短い期になり、役員報酬は新しい期の初めから3か月以内にまた改定でき、消費税は基準期間・特定期間と簡易課税の届出の期限が動く(法人税法13条1項・法人税法施行令69条1項1号イ・消費税法2条1項14号・9条の2第4項・37条1項)
いつまでに、何をするか — 新しい決算日が来る前に定款を変え、異動届を出す
事業年度は定款に定める会計期間で、法人税もその期間で区切ります(法人税法13条1項)。決算期を変えるには、株主総会の決議で定款を変えます(会社法466条)。
定款の変更は特別決議で、議決権の過半数を持つ株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成が要ります(会社法309条2項)。ただし、定款で出席の割合を3分の1以上に下げたり、賛成の割合を3分の2より高く定めたりできるので、自社の定款の定めを先に確かめてください(会社法309条2項)。合同会社は、定款に別段の定めがなければ総社員の同意で定款を変えます(会社法637条)。
会社法にも法人税法にも決議を「いつまでに」と定めた条文は見当たりませんが、新しい決算日を過ぎてから定款を変えても過ぎた日で締める期は作れないので、新しい決算日が来る前に決議しておくことをお勧めします。たとえば3月決算を12月決算に変えるなら、その年の12月31日より前に総会を開く形です。
| 届出先 | 書類 | 期限 | 添付するもの |
|---|---|---|---|
| 税務署(異動前の納税地) | 異動届出書(消費税の欄にレ印) | 遅滞なく(異動のあと速やかに) | なし。定款の写しの確認を求められることがある |
| 都税事務所 | 異動届出書 | 変更の日から10日以内 | 株主総会の議事録または変更後の定款 |
| 法務局 | なし | 決算月だけの変更なら登記は不要 | なし |
税務署への届出は、定款の会計期間を変えたときに遅滞なく変更前と変更後の会計期間を届け出る決まりで(法人税法15条)、国税庁の案内では「異動等後速やかに」、提出先は異動前の納税地の所轄税務署長です。異動届出書の消費税の欄にレ印を付ければ、消費税の異動届出書を重ねて出さずに済みます。東京23区の会社は市町村民税相当分も都民税として都税事務所に申告するので、地方の届出先は都税事務所だけです。23区以外の市町村に本店がある会社は、市町村民税を市役所・町村役場にも申告するので、そちらへの届出の要否と期限もその市町村に確かめてください。
事業年度は登記事項に入っていないので、決算月だけを変える場合は登記は要りません(会社法911条3項・914条)。本店の移転や商号の変更を同時にするなら、その分は2週間以内の変更登記が要ります(会社法915条1項)。
変更した期はどうなるか — 1年未満の短い期と、会社法の1年6か月
3月決算の会社が年の途中で12月決算に変えると、変更後の最初の期は4月1日から12月31日までの9か月になります。会社法の計算書類は、事業年度の末日を変える場合の変更後最初の事業年度に限り、1年6か月までの期間で作れます(会社計算規則59条2項)。法人税の事業年度は、会計期間が1年を超えるときは開始の日から1年ごとに区切り、残りの1年未満の期間を1つの事業年度にします(法人税法13条1項)。
決算日を後ろへずらして1年を超える期を作っても、法人税の申告は1年分と残りの分の2回になります。ご自身の会社では、短い期は何か月になるでしょうか。
| 項目 | 扱い |
|---|---|
| 法人税の申告の期限 | 期末の翌日から2か月以内。短い期でも同じ(法人税法74条1項) |
| 法人税の中間申告 | 期が6か月を超えるときだけ(法人税法71条1項) |
| 軽い税率を使える年800万円の枠 | 800万円を12で割り、その期の月数を掛けた額。1か月未満の端数は1か月(法人税法66条2項・4項・12項) |
| 法人住民税の均等割 | 年額に事務所のあった月数を掛けて12で割る。1か月未満の端数は切り捨て(地方税法52条3項・312条4項) |
| 消費税の課税期間 | 事業年度と同じ期間なので、同じく短くなる(消費税法19条1項2号) |
役員報酬 — 新しい期の初めから3か月以内に、もう一度改定の窓が来る
役員の毎月の給与(定期同額給与)を損金にするには、各支給時期の支給額が同額で、改定は事業年度開始の日の属する会計期間開始の日から3か月を経過する日までに行うのが基本です(法人税法34条1項1号・法人税法施行令69条1項1号イ)。決算期を変えると新しい期が始まるので、その期首から3か月の間に、もう一度改定の機会が来ます。上の例なら、2027年4月から6月の窓を使ったあと、2028年1月から3月に2回目の窓が来る形です。変更した短い期の途中で報酬を変えても、期首の窓の外なので、臨時改定事由か業績悪化改定事由に当たらない限り定期同額給与になりません(法人税法施行令69条1項1号ロ・ハ)。
消費税 — 基準期間と特定期間が動き、簡易課税の届出の期限も前倒しになる
消費税の課税期間は法人では事業年度なので(消費税法19条1項2号)、決算期を変えると課税期間も変わります。免税かどうかは、基準期間(前々事業年度)の課税売上高が1,000万円以下かで判定します(消費税法基本通達1-4-1)。ただし、適格請求書発行事業者(インボイス登録をした会社)は、1,000万円以下でも免税になりません(消費税法基本通達1-4-1)。前々事業年度が1年未満の法人の基準期間は、その事業年度開始の日の2年前の日の前日から1年を経過する日までの間に開始した各事業年度を合わせた期間です(消費税法2条1項14号)。
基準期間が1年でない法人は、その期間の課税売上高を事業年度の月数の合計で割って12を掛けた額で判定します(消費税法9条2項2号)。上の例なら、2029年の期の基準期間は9か月の2027年4月から12月の期で、その売上を12か月分に換算して1,000万円と比べます。
特定期間の判定も動きます。特定期間は、原則として前事業年度開始の日以後6か月の期間です(消費税法9条の2第4項)。前事業年度が7か月以下の短い期なら、前々事業年度の開始の日以後6か月になります(前々事業年度が基準期間に含まれるときなどを除く。消費税法9条の2第4項・消費税法施行令20条の5)。
特定期間の課税売上高が1,000万円を超えるかの判定は、課税売上高の代わりに特定期間中の給与等の支払額の合計で行うこともできます(消費税法9条の2第1項・3項・消費税法基本通達1-5-23)。上の例の9か月の期は7か月を超えるので、その次の期の特定期間は2027年4月から9月の6か月です。
原則
決算期の変更は、株主総会の特別決議(合同会社は総社員の同意)で定款を変え、税務署へ遅滞なく異動届出書を出せば足り、変更の登記は要りません。
会社法466条・309条2項・637条・911条3項・法人税法15条
ただし
変更後の最初の事業年度は、会社法の計算書類では1年6か月まで作れますが、法人税では1年を超える期間を1年ごとに区切って申告します。
会社計算規則59条2項・法人税法13条1項
本店の移転や商号の変更を同時に行うときは、その部分は2週間以内に変更の登記が要ります。
会社法915条1項
まとめ — 決議の日を決めてから、届出と2つの窓を手帳に
決算期の変更(3月決算を12月決算にする例)
新しい決算日より前に臨時株主総会を開く
特別決議で定款の事業年度を変え、議事録を残す(会社法466条・309条2項)
税務署へ異動届出書を出す
定款の会計期間を変えたら遅滞なく届け出る(法人税法15条)。国税庁の案内に沿って消費税の欄にレ印を付け、異動前の納税地の所轄税務署長へ出す
都税事務所(23区以外は市区町村にも)へ異動届出書を出す
東京都は変更の日から10日以内。議事録か変更後の定款を添える
短い期の決算と申告をする
期末の翌日から2か月以内(法人税法74条1項)。均等割は月数で按分(地方税法52条3項・312条4項)
新しい期の初めから3か月以内に役員報酬を見直す
定期同額給与の改定の窓(法人税法施行令69条1項1号イ)。簡易課税を使うなら前の期の末日までに届出(消費税法37条1項)
3月決算を12月決算に変える例(2027年に変更)
- 2027年9月28日臨時株主総会で定款を変更(会社法466条・309条2項)。新しい決算日より前に
- 2027年10月8日都税事務所への異動届出書の期限(東京都・変更の日から10日以内)。税務署へも同じ時期に(法人税法15条)
- 2027年12月31日変更後の最初の期の末日。2028年の期から簡易課税を使うなら、この日までに届出(消費税法37条1項)
- 2028年2月29日短い期の法人税の申告期限(法人税法74条1項)
- 2028年3月31日新しい期の役員報酬の改定の窓の終わり(法人税法施行令69条1項1号イ)
届出は2か所、窓は2つ。総会の日を決めた日に、この5つの日付を手帳へ書いておくと迷いません。
決算月を変える日を決めたら、その日より前の総会と、変更後の最初の期の申告・簡易課税の届出・役員報酬の窓の日付を、先に手帳へ書いてみてください。
出典
- 国税庁 C1-8 異動事項に関する届出
- 国税庁 D1-17 消費税異動届出手続
- 東京都主税局 法人設立・設置届出書・異動届出書 届出方法・添付書類について
- 東京都主税局 法人事業税・法人都民税(よくある質問)
- 国税庁 役員に対する給与(平成29年4月1日以後支給決議分)
- 国税庁 納税義務の免除
- 国税庁 簡易課税制度
- 国税庁 消費税法基本通達 1-4-1(納税義務が免除される課税期間)
- 国税庁 消費税法基本通達 1-5-23(特定期間における課税売上高とすることができる給与等の金額)
- e-Gov 法令検索 会社法
- e-Gov 法令検索 会社計算規則
- e-Gov 法令検索 法人税法
- e-Gov 法令検索 法人税法施行令
- e-Gov 法令検索 消費税法
- e-Gov 法令検索 消費税法施行令
- e-Gov 法令検索 地方税法
※本記事の例は架空の会社で、東京都に本店がある3月決算の株式会社が2027年に12月決算へ変える場合です。地方の届出の期限は東京都の案内によるもので、ほかの道府県・市区町村の期限は各自治体で確かめてください。
※消費税の高額特定資産を取得した場合の縛り、法人税の申告期限の延長の特例、令和9年4月からの飲食料品の税率引下げに伴う届出の特例は扱いません。
この記事のテーマで使える道具・専門ページ
試算役員報酬の変更シミュレーション→ 議事録・届出書役員報酬の決定・変更の議事録を作る (無料)→ 専門ページ役員報酬の決め方→ 試算消費税の申告方式シミュレーション→この記事の内容、私の場合は? — 普段お使いの AI に相談
押すと、この記事の要点が質問文になって、選んだ AI に渡ります。
Gemini など、ほかの AI に貼り付けて使えます
AI によってはそのまま回答が始まります。回答は各 AI サービスによるもので、当事務所の見解ではありません。
※免責事項: 本コラムは一般的な情報のご提供を目的とするもので、個別の事案に対する税務上の助言ではありません。内容は執筆時点の法令等にもとづいており、その後の改正などにより現在の取り扱いと異なることがあります。正確な記載に努めていますが内容を保証するものではなく、本コラムの情報にもとづいて行われたご判断について、当事務所は責任を負いかねます。実際の手続きやご判断にあたっては、税理士等の専門家にご相談ください。