還付申告はいつまでできるか — 5年の数え方と、医療費控除・ふるさと納税の申告し忘れを取り戻す手続き
「医療費控除を出していない年がある」「ワンストップ特例の申請を忘れていた」— 確定申告の義務がない会社員や年金の方に向けて、納めすぎた所得税をいつまで取り戻せるか、期限の数え方と手続きの選び方を整理します。
この記事の要点
- 確定申告の義務がない人の還付申告は、その年の翌年1月1日から5年間出せる。令和3年分(2021年分)なら2026年12月31日が最終日で、過ぎると時効で消える(国税通則法74条)
- すでにその年分の申告書を出している人は、還付申告ではなく更正の請求。期限は法定申告期限から5年で、還付申告だった年分は提出した日から5年
- ワンストップ特例を使った年分で医療費控除の還付申告をすると、特例は無効になる。その年のふるさと納税も申告書に書いて寄附金控除を受ける
まず結論 — 5年は「その年の翌年1月1日」から数える
年末調整で税金の計算が終わる会社員や、公的年金だけで申告が要らない方には、確定申告の期限そのものがありません。源泉徴収で納めすぎた所得税は、還付を受けるための申告書(還付申告書)を出して取り戻します(所得税法122条)。この還付申告は確定申告の期間とは関係なく、その年の翌年1月1日から出せます。
出せる期間は5年間です。還付金を請求する権利は、請求できる日から5年間使わないと時効で消えます(国税通則法74条)。還付申告書には提出期限が無いので数え始めは翌年1月1日になり、その5年後の12月31日が最後の日です。意外と間に合う年分があるのではないでしょうか。
| 年分 | 出せる最初の日 | 最終日 |
|---|---|---|
| 令和3年分(2021年分) | 2022年1月1日 | 2026年12月31日 |
| 令和4年分(2022年分) | 2023年1月1日 | 2027年12月31日 |
| 令和5年分(2023年分) | 2024年1月1日 | 2028年12月31日 |
| 令和6年分(2024年分) | 2025年1月1日 | 2029年12月31日 |
| 令和7年分(2025年分) | 2026年1月1日 | 2030年12月31日 |
還付申告書も、その年分の所得全体を申告する書類です。申告の義務があった年分なら期限後申告として、加算税や延滞税の対象にもなります。過去の年分は、その年の収入全体を見直してから出してください。なお、青色申告特別控除の55万円・65万円のように期限内の申告が条件の特例を使う年分は、還付申告でも法定申告期限(原則として翌年3月15日)までに出す必要があります。
令和3年分(2021年分)の医療費控除をこれから取り戻すなら
- 2022年1月1日還付申告を出せる最初の日
- 2026年12月31日還付を請求できる最後の日
- 2027年1月1日時効で消える
申告済みの年分は「更正の請求」— 期限の数え方が違う
控除を書き忘れたまま確定申告を済ませてしまった年分は、申告書を出し直すのではなく、「更正の請求」という手続きで税額を直してもらいます。還付申告とは期限の数え方が違うので、先に確かめておきましょう。
原則
更正の請求は、その年分の法定申告期限(原則として翌年3月15日)から5年以内にできます。
国税通則法23条1項
ただし
その年分の申告書が還付申告書だったときは、法定申告期限ではなく「申告書を提出した日」から5年と数えます。
所得税基本通達122-1
更正の請求ができるのは、納める税額が多すぎたとき、または還付される税額が少なすぎたときです(国税通則法23条1項)。控除を足しても税額が変わらないときは請求できません。
| 立場 | 手続き | 期限 |
|---|---|---|
| 申告の義務がなく、その年分の申告書を出していない | 還付申告 | 翌年1月1日から5年間 |
| その年分の申告書をすでに出した | 更正の請求 | 法定申告期限から5年(還付申告だった年分は提出日から5年) |
| 申告の義務があるのに出していない(事業の所得がある方など) | 期限後申告(国税通則法18条) | 税務署の決定の前なら出せるが、加算税と延滞税の対象 |
医療費控除を遡って受けるとき — 年分ごとに線を引く
医療費控除は年分ごとに計算します。その年に支払った医療費から保険金などで補てんされた額を引き、10万円(その年の総所得金額などが200万円未満なら、その5%)を超えた部分が控除の対象です(所得税法73条1項)。
控除できる額の上限は年分ごとに200万円です(所得税法73条1項)。5年分の医療費を合計して線を超えても、年分ごとに超えていなければ控除はありません。
申告書には医療費控除の明細書を添えます(所得税法120条4項)。健康保険から届く「医療費のお知らせ」を添えれば、その分の明細の記載は省けます(所得税法120条4項)。
領収書は提出しませんが、税務署から求められたときは見せる必要があるので、原則として確定申告期限の翌日から5年間は手元に残します(所得税法120条5項)。ただし、還付申告書を出した年分は、申告期限ではなく申告書を提出した日の翌日から5年間です。この5年を経過する日の前6か月以内に更正の請求をしたときは、請求した日から6か月を経過する日まで保存の期間が延びます(所得税法120条5項)。
ふるさと納税 — 申告すると、ワンストップ特例は無効になる
ワンストップ特例は、確定申告が不要な給与所得者が寄附先5団体以内なら、申告なしで控除を受けられる仕組みです。ところが、同じ年分について医療費控除などで確定申告(還付申告を含みます)をすると、特例の申請は無効になります。申告書にふるさと納税の分を書かなければ、所得税の寄附金控除も住民税の控除も受けられません。
医療費控除の還付申告にふるさと納税を載せる
寄附の証明を集める
自治体の受領証明書か、ポータルサイトなどの特定事業者が出す「寄附金控除に関する証明書」を年分ごとにそろえる(所得税法施行規則47条の2)
寄附金控除を計算する
寄附額の合計から2,000円を引いた額が所得税の控除額(所得税法78条1項)。対象になる寄附額は、総所得金額などの40%が上限
第二表に2か所書く
「寄附金控除に関する事項」と、「住民税に関する事項」の都道府県・市区町村への寄附(特例控除対象)の欄。後者を書き忘れると住民税で控除されないことがある
住民税はどうなるか — 申告書をもとに市区町村が計算し直す
所得税の確定申告書を出すと、その日に住民税の申告書も出したものとみなされます(地方税法317条の3)。住民税の額を減らす決定は、その住民税の法定納期限の翌日から5年を経過する日までできます(地方税法17条の5第4項)。所得税の還付申告の期限内に出せば、住民税の側も通常は間に合うと考えています。
Q. 還付申告は3月15日を過ぎると加算税がかかりますか
還付申告書は、確定申告の期間とは関係なく、その年の翌年1月1日から5年間出せるものです。確定申告の期間を過ぎてから出しても、遅れにはなりません。申告の義務がある方(事業の所得がある方など)が出していない場合は期限後申告になり、無申告加算税や延滞税の話が別に出てきます。そちらは下の関連記事で整理しています。
Q. 医療費の領収書が見つからない年分はどうすればよいですか
健康保険の「医療費のお知らせ」に載っている医療費は、その書類を申告書に添えることで明細の記載に代えられます(所得税法120条4項)。載っていない医療費は、領収書を再発行してもらうか、お知らせに載る分だけで申告するかを年分ごとに決めます。
まず、出していない年分と出した年分に分けて、上の表で期限を確かめてみてください。古い年分の申告書の作り方や、何年分まとめて出すかの整理は、確定申告の専門ページからご相談いただけます。
出典
- 国税庁タックスアンサー No.2030「還付申告」(翌年1月1日から5年間・更正の請求は還付申告書を提出した日から5年以内)
- 国税庁 質疑応答事例「還付請求の消滅時効の起算日」(起算日は翌年1月1日)
- 国税庁タックスアンサー No.1155「ふるさと納税(寄附金控除)」(確定申告をするとワンストップ特例の申請は無効・書き忘れは更正の請求)
- 国税庁タックスアンサー No.2026「確定申告を間違えたとき」(更正の請求は法定申告期限から5年以内)
- e-Gov法令検索「国税通則法」18条(期限後申告)・23条(更正の請求)・74条(還付金等の消滅時効)
- e-Gov法令検索「所得税法」73条(医療費控除)・78条(寄附金控除)・120条(確定所得申告)・122条(還付等を受けるための申告)
- e-Gov法令検索「所得税法施行規則」47条の2(確定所得申告書に添付すべき書類等)
- e-Gov法令検索「地方税法」17条の5(更正、決定等の期間制限)・317条の3(確定申告書が提出された場合の住民税の申告)
- 国税庁 所得税基本通達122-1(還付等を受けるための申告書に係る更正の請求)
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