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個人事業主の予定納税はいくらから? — 7月・11月に納める額の決まり方と、11月16日までの減額申請の出し方

「6月に税務署から予定納税の通知書が届いた。今年は売上が落ちているのに、去年の税額をもとに前払いしろと言われても…」— 個人事業主の方からよく聞く声です。この記事では、15万円という線の意味、7月・11月に納める額の決まり方、11月の減額申請の出し方、確定申告での精算までを順に見ていきます。

この記事の要点

  • 対象は予定納税基準額(前年分の申告納税額が目安)が15万円以上の人。その3分の1ずつを7月(第1期)と11月(第2期)に納め、残りは確定申告で精算する(所得税法104条)
  • 今年の税額が前年より減る見込みなら減額申請ができる。6月30日の現況なら7月15日まで、10月31日の現況なら11月15日までで、令和8年分の第2期は11月16日(月)が期限(所得税法111条・国税通則法10条)
  • 見積額が基準額(7月に承認を受けた人は、その承認された見積額)の7割以下なら承認される(所得税法113条)。申請せず納めないと延滞税がかかり、納めすぎた分は確定申告で還付される(国税通則法60条・所得税法139条)

まず結論 — 予定納税は「前年の税額をもとにした前払い」で、15万円が線

予定納税は、前年分の所得税をもとに計算した「予定納税基準額」が15万円以上の人が、その年の所得税の一部を前もって納める仕組みです(所得税法104条1項)。納める額は基準額の3分の1ずつで、第1期は7月1日から7月31日まで、第2期は11月1日から11月30日までが納期です(所得税法104条1項)。3分の1にした額に100円未満の端数があれば切り捨てます(所得税法104条3項)。

農業所得が総所得金額の7割を超えるなどの条件を満たす「特別農業所得者」に当たる人は、第1期分がなく、第2期に基準額の2分の1を1回で納めます(所得税法2条1項35号・107条1項)。

対象になる人には、税務署が5月15日の現況で基準額を計算し、6月15日までに基準額と各期の予定納税額を書面で通知します(所得税法106条1項)。確定申告で通知書の電子交付を選んだ人には、e-Taxで届きます。

対象になるかどうかは、通知書の有無ではなく基準額が15万円以上かどうかで決まります(所得税法104条1項)。引っ越し後に住所変更の届出をしていない場合などは通知書が手元に届かないこともあるので、前年分の申告納税額が15万円以上なのに6月中に届かないときは、所轄の税務署に確認してください。通知書が6月15日までに発せられなかったときは、減額申請の期限が、発送日から1か月を経過した日まで延びます(所得税法111条3項)。

令和8年分の予定納税の暦(令和7年分の確定申告の税額をもとに決まる)
時期何が起きるか
2026年3月16日令和7年分の確定申告の期限だった日。この申告の税額が基準額のもとになった
2026年6月15日まで税務署から予定納税額の通知書が届く(所得税法106条)
2026年7月31日(金)第1期分の納期限。振替納税の振替日も同じ日
2026年11月16日(月)第2期分の減額申請の期限(15日が日曜日のため、その翌日)
2026年11月30日(月)第2期分の納期限。振替納税の振替日も同じ日
2027年3月15日(月)令和8年分の確定申告の期限。納めた予定納税額を差し引いて精算する

たとえば前年分の申告納税額が45万円なら、7月と11月に15万円ずつ納め、2027年3月の確定申告でその年の税額から30万円を差し引いて残りを納めます。手元の通知書の金額は、去年の申告書の「申告納税額」の3分の1になっているでしょうか。

基準額の決まり方 — 「申告納税額」がそのまま基準になる人と、ならない人

事業所得だけの方は、前年分の確定申告書の「申告納税額」(所得税と復興特別所得税の合計)がほぼそのまま基準額になります。基準額の計算には、次の決まりがあります。

原則

予定納税基準額は、前年分の課税総所得金額に対する所得税の額から、源泉徴収された所得税の額を差し引いた金額です。

所得税法104条1項

ただし

前年分の所得に譲渡所得・一時所得・雑所得・平均課税を受けた臨時所得があるときは、それらの所得がなかったものとして計算します。

所得税法104条1項1号・所得税法施行令259条1項

基準額は5月15日に確定している税額で計算しますが、5月16日から7月31日までの間に税額が減額されたときは、その低くなった税額によります。

所得税法105条

基準額と各期の予定納税額の例(基準額は前年分の年額・各期はその3分の1)
前年分の申告納税額(基準額)第1期分(7月)第2期分(11月)
14万円なしなし
30万円10万円10万円
45万円15万円15万円
90万円30万円30万円

減額申請 — 今年の税額が下がる見込みなら、7月と11月の2回に出す機会がある

今年の所得が減っても、予定納税額は自動では下がりません。減らすには、減額申請をして税務署長の承認を受けます。

6月30日の現況で見積もった今年の申告納税見積額が基準額を下回る見込みなら、7月15日までに第1期分と第2期分の減額を申請できます(所得税法111条1項)。10月31日の現況で下回る見込みなら、11月15日までに第2期分の減額を申請できます(所得税法111条2項)。災害で被害を受けた場合は別の期限もあり、7月1日以後の災害で災害減免法による所得税の軽減・免除を受けられる見込みの人は、災害を受けた日から2か月以内に減額申請ができます(災害減免法3条1項)。

令和8年は11月15日が日曜日なので、期限はその翌日の11月16日(月)です(国税通則法10条2項)。7月に申請していなくても、11月の申請はできます。7月に承認を受けた人も11月に改めて申請できますが、その場合の比較の相手は通知書の基準額ではなく、7月に承認された見積額になります(所得税法111条2項1号)。

原則

減額の承認は、税務署長が申請の見積額を調べて、認めるか、別の見積額を定めて承認するか、却下するかを決めます。

所得税法113条1項

ただし

基準日(6月30日か10月31日)までに生じた事業の廃止・休止・転換、失業、災害・盗難・横領による損害、医療費の支払で見積額が基準額を下回ると認められるときは、必ず承認されます。

所得税法113条2項1号

そのほかの理由でも、見積額が基準額の10分の7以下になると認められるときは、必ず承認されます。

所得税法113条2項2号

見積額が基準額の70%を超えるときは承認されないこともありますが、婚姻・出生・生命保険への加入・特定寄附金の支出などの簡明な原因で所得控除が増えて基準額を下回るときは、承認されます。

所得税基本通達113-1

7月に承認を受けた人の11月の申請では、上の「基準額」はいずれも7月に承認された見積額に置き換えて判定します。

所得税法113条2項・所得税基本通達113-1

承認されると、第1期・第2期の予定納税額は見積額の3分の1ずつになります(所得税法114条1項)。11月の申請では、第2期分が「見積額から第1期分を引いた額の2分の1」になり、7月に納めた第1期分は減りません(所得税法114条2項・所得税基本通達114-1)。見積額が15万円未満なら、予定納税額はゼロになります(所得税法114条4項)。減額申請を出しても、第2期の納期は11月1日から30日までのままです(所得税法104条1項)。

申請書の出し方 — 見積額の根拠を付けて、e-Taxか書面で

申請書には申告納税見積額と申請の理由などを書き、取引の記録などにもとづいて見積額の計算の基礎となる事実を記載した書類を添えて、納税地の所轄税務署長に出します(所得税法112条)。様式は国税庁の「令和8年分所得税及び復興特別所得税の予定納税額の7月(11月)減額申請書」で、e-Taxソフトで作って送信するか、紙で持参か郵送します。

11月の減額申請(令和8年分)

  1. 10月末までの数字を固める

    1月から10月までの売上・経費を帳簿から集計し、試算表を作る

  2. 年間の所得を見積もる

    11月・12月の見込みを足し、青色申告特別控除後の所得に、社会保険料控除などの所得控除を当てはめる

  3. 見積額を計算する

    税率を当てはめた所得税額から住宅ローン控除などの税額控除を引き、復興特別所得税(所得税額の2.1%)を加えて、源泉徴収される見込みの税額を引く。基礎控除の見直しは織り込まない

  4. 11月16日(月)までに提出

    11月1日以後、申請書と試算表などの根拠書類を、e-Taxか書面で所轄税務署へ出す

  5. 通知を受けて納める

    承認・一部承認・却下の結果が書面かe-Taxで届く。通知された第2期分を11月30日(月)までに納める

見積額は、6月30日や10月31日の現況で計算した年間の税額です。その日までの実績だけでなく、年末までの売上と経費の見込みを含めて計算し、根拠になる試算表や契約の終了が分かる書類を添えます。

納めないとどうなるか — 延滞税がかかり、納めすぎは確定申告で戻る

予定納税は、法定納期限までに納めないと延滞税の対象になります(国税通則法60条1項4号)。割合は法律の上では年14.6%(納期限の翌日から2か月を経過する日までは年7.3%)で、各年の延滞税特例基準割合が年7.3%に満たない年はそれより低い割合に置き換わります(国税通則法60条2項・租税特別措置法94条)。令和8年中の割合は、納期限の翌日から2か月を経過する日までが年2.8%、その後が年9.1%です。振替納税の人は、残高不足で引き落とせなかった場合も、法定納期限の翌日から延滞税がかかります。

納付には振替納税のほか、ダイレクト納付、インターネットバンキングによる電子納税、クレジットカード納付(決済手数料あり)、スマホアプリ納付(納付税額30万円以下)が使えます。通知書の電子交付を選んだ人には紙の納付書が送られないので、e-Taxに届く受信通知(納付区分番号通知)からダイレクト納付などのキャッシュレス納付で納めます。振替納税をこれから使う方は、初回に振替依頼書を所轄税務署か金融機関に出します(e-Taxでも出せます)。処理に時間がかかるので、納付の方法は納期限より前に決めておきましょう。

確定申告では、その年の所得税額から予定納税額を差し引いた残りを納めます(所得税法120条1項5号)。予定納税額の方が多ければ、差額は還付されます(所得税法139条1項)。還付される予定納税額には、その納期限(納期限より後に納めたときは納めた日)の翌日から計算した還付加算金が付くことがあります(所得税法139条3項)。

まとめ — 令和9年分の見通しと、よくある誤解

令和9年分の予定納税は、令和8年分の確定申告(2027年2月16日から3月15日まで)の税額をもとに決まります(所得税法120条1項・104条1項)。令和8年分の申告には基礎控除の見直しが反映されるので、その申告納税額が15万円以上なら、2027年6月に通知が届き、7月と11月に3分の1ずつ納めることになります。

今年の数字が読めず、減額申請を出すべきか迷っている方は、まず10月末までの試算表を作ってみてください。見積額の計算から確定申告での精算まで、弊所でも一緒に整理しています。

※本記事の日付は令和8年分の予定納税のもので、延滞税の割合は令和8年1月1日から12月31日までの期間に適用されるものです。令和9年以後の期間の割合は、記事を書いている時点では公表されていません。

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