ふるさと納税の確定申告は必要? — ワンストップ特例が無効になる場合の見分け方と、申告書第二表の書き方
「ワンストップの申請は出したけれど、今年は医療費控除で確定申告もする。ふるさと納税はどうなるのか」— そんな迷いをお持ちの方に向けて、確定申告をすることになる場合の見分け方と、申告書のどこに何を書くかを整理します。
この記事の要点
- 確定申告をする年は、出してあったワンストップ特例の申請がすべて無効になる。ふるさと納税の分も申告書に書かないと、所得税でも住民税でも控除されない
- ワンストップが使えるのは、もともと確定申告が要らない人で寄附先が5団体以内の場合だけ。医療費控除・住宅ローン控除の1年目・副業の申告・6団体以上への寄附は確定申告になる
- 申告書は第一表の「寄附金控除」に加えて、第二表の「寄附金控除に関する事項」と「住民税に関する事項」の2か所に書く。住民税の欄を忘れると住民税の控除が落ちることがある
まず結論 — 確定申告をする年は、ふるさと納税も申告書に書く
ふるさと納税は、寄附した額のうち2,000円を超える部分が、所得税の寄附金控除(所得税法78条1項)と住民税の寄附金税額控除(地方税法37条の2・314条の7)の対象になります。控除を受ける方法は原則として2つあり、確定申告をするか、寄附先の自治体にワンストップ特例の申請書を出すかのどちらかです。
分かれ目は1つだけです。その年分の確定申告をするなら、ワンストップは使えず、ふるさと納税の全部を申告書に書きます。 申請書を出していても、確定申告書を提出すると申請は無かったものとみなされます(地方税法附則7条6項)。申告書に書き忘れた分は、所得税からも住民税からも控除されません。
| ご自身の状況 | 使うのは | 控除される税 |
|---|---|---|
| 年末調整で終わる会社員で、寄附先が5団体以内。ほかに申告することがない | ワンストップ特例 | 翌年度の住民税だけ(所得税の分も住民税から引く) |
| 寄附先が6団体以上 | 確定申告 | その年の所得税と翌年度の住民税 |
| 医療費控除・雑損控除・住宅ローン控除の1年目などで確定申告をする | 確定申告(ワンストップの申請は無効) | その年の所得税と翌年度の住民税 |
| 個人事業主・副業の所得が20万円を超える会社員・給与が2,000万円を超える人 | 確定申告 | その年の所得税と翌年度の住民税 |
ワンストップ特例では所得税からの控除は行われず、その分も含めた全額が翌年度の住民税から控除されます(地方税法附則7条の2)。確定申告をした場合は、所得税は還付か納税額の減少として、住民税は翌年度の減額として戻ってきます。戻る経路は違いますが、自己負担が2,000円になる仕組みは同じです。
ワンストップ特例が使える人 — 3つの条件と、あとから外れる場合
ワンストップ特例の申請ができるのは、次の3つを満たす人です。1つ目は、その年分の所得税の確定申告をする義務がないか、年末調整で済む給与所得者であること。2つ目は、住民税の申告も要らないこと。3つ目は、その年のふるさと納税先の自治体が5団体以内であることです(地方税法附則7条1項・2項)。
原則
確定申告が要らない給与所得者などで、ふるさと納税先の自治体が5団体以内なら、寄附先の自治体に申請書を出すことで、確定申告をせずに住民税の控除を受けられます。
地方税法附則7条1項・2項
ただし
申請をしたあとで、その年分の確定申告書を出した・住民税の申告書を出した・寄附先が5団体を超えた、のどれかに当たると、その年の申請は全部無かったものとみなされます。
地方税法附則7条6項
年の途中で引っ越した方は、住所の変更を翌年1月10日までに寄附先へ届け出ないと、通知書が1月1日の住所地の市区町村に届かず、その寄附の申請は無かったものとみなされます。
地方税法附則7条4項・6項4号
5団体の数え方は、寄附の回数ではなく自治体の数です。申請書は、ふるさと納税をする際に寄附先の自治体へ出します。受付の締め切りは寄附先の自治体の案内で確かめておきましょう。申請書を出していない寄附は、確定申告をすれば控除を受けられます。
確定申告が必要になる典型 — 医療費控除・住宅ローン控除の1年目・副業・6団体以上
ワンストップの申請を出していた人が、あとから確定申告をすることになる場面は、次の4つが典型です。
- 医療費控除・雑損控除・セルフメディケーション税制を受ける年。これらは確定申告でしか受けられないので、同じ申告書にふるさと納税も書く
- 住宅ローン控除の1年目。年末調整で受けられるのは入居した年の翌年以後の年分なので(租税特別措置法41条の2の2第1項)、入居した年は確定申告が要る
- 給与以外の所得(副業・不動産など)が20万円を超える年、または給与の収入が2,000万円を超える年。もともと確定申告の義務がある(所得税法121条1項)
- 寄附先が6団体以上になった年。申請書を出していた分も含めて、全部を確定申告に切り替える
確定申告で受けたときの控除は、所得税と住民税の2段で戻ります。寄附5万円の人を例に、控除の対象になる48,000円がどこから引かれるかを並べると次のとおりです。
| 控除 | 計算 | 金額(年額) |
|---|---|---|
| 控除の対象 | 5万円−2,000円 | 48,000円 |
| 所得税(所得控除) | 48,000円×10.21%(復興特別所得税を含む率) | 約4,900円 |
| 住民税の基本分 | 48,000円×10% | 4,800円 |
| 住民税の特例分 | 残りの全部 | 約38,300円 |
| 合計 | — | 約48,000円 |
住民税の特例分には上限があり、寄附が多い人は上限を超えた分が自己負担になります。いまの上限は所得割の20%です。2027年中の寄附、つまり令和10年度分の住民税からは、所得割の20%と定額のいずれか低い額が上限になります(地方税法37条の2第11項・314条の7第11項。令和9年1月1日施行の改正後)。
もう1つ、見落とされやすいのが返礼品です。返礼品として受け取った品物の経済的利益は一時所得に当たり(所得税法34条・所得税基本通達34-1(5))、ほかの一時所得と合わせて年50万円の特別控除を超えるときは、一時所得として所得の計算に入ります。返礼品だけで50万円を超えることはまれですが、保険の満期金や懸賞金など、ほかの一時所得がある年は合計で見てください。
申告書の書き方 — 第一表1か所と第二表2か所
所得税の確定申告書は、住民税の申告書を兼ねています。確定申告書を出した日に住民税の申告書も出したものとみなされ(地方税法317条の3第1項)、住民税の計算に必要な事項は確定申告書に付記することになっています(同条3項)。
ふるさと納税を申告書に書く3か所
第二表「寄附金控除に関する事項」
「寄附先の名称等」欄に自治体名、「寄附金」欄に寄附した額を書く。ワンストップの申請をした分も全部含める
第二表「住民税に関する事項」
「都道府県、市区町村への寄附(特例控除対象)」欄に、ふるさと納税の合計額を書く。住民税の特例分はこの欄から計算される
第一表「寄附金控除」
寄附した額の合計(総所得金額等の40%が上限)から2,000円を引いた額を書く。ほかの寄附金がある人は合わせて計算する
添付する書類は、寄附先の自治体が発行した受領証明書か、ふるさと納税サイトなどの特定事業者が発行する寄附金控除に関する証明書です(所得税法施行規則47条の2第3項)。寄附が10件あるなら受領証明書は10枚ですが、特定事業者の証明書なら1年分を1枚にまとめられます。
書き忘れたら — 更正の請求で直せる。所得税が動かないときは市区町村へ
ワンストップの申請をしていたのに、確定申告書に寄附金控除を書き忘れて出してしまった場合は、更正の請求で寄附金控除を受けられます。更正の請求は、法定申告期限から5年以内に税務署へ出します(国税通則法23条1項)。還付申告として出した申告書なら、5年の起算日はその申告書を提出した日です(所得税基本通達122-1)。
原則
確定申告書に寄附金控除を書き忘れたときは、法定申告期限から5年以内の更正の請求で控除を受けられます。
国税通則法23条1項
ただし
更正の請求ができるのは、申告した税額が多すぎたときや、還付される税額が少なすぎたときなどに限られます。
国税通則法23条1項
このため、寄附金控除を入れても最終的な所得税の額が変わらないときは、更正の請求ができません。この場合の住民税の控除は、お住まいの市区町村に相談します。
翌年度の住民税が思ったより減っていないときは、まず確定申告書の控えの第二表を見て、「住民税に関する事項」に金額が入っているかを確かめてください。
まとめ — 「申告するかどうか」を先に決め、するなら全部書く
ふるさと納税の申告で迷ったら、見る順番は「その年に確定申告をするか」→「するなら、ワンストップの申請は忘れて全部書く」→「第二表の2か所を埋める」の3段です。令和8年分(2026年中の寄附)の確定申告の期間は、2027年2月16日から3月15日までです(所得税法120条1項)。
医療費控除や副業の申告と一緒にふるさと納税を申告する方は、資料をそろえて出せば、申告書の中では寄附金控除の欄を埋めるだけの作業です。まとめて任せたい方は、個人の確定申告の専門ページで進め方をご確認ください。ご自身の今年の状況は、上の表のどの行に当てはまるでしょうか。
出典
- 国税庁 タックスアンサー No.1155 ふるさと納税(寄附金控除)
- 国税庁 ふるさと納税に係る寄附金控除に関する証明書等について
- 国税庁 東京国税局 ふるさと納税ワンストップ特例の申請をされた方が確定申告をする場合
- 国税庁 質疑応答事例 「ふるさと納税」を支出した者が地方公共団体から謝礼を受けた場合の課税関係
- 総務省 ふるさと納税ポータルサイト ふるさと納税の流れ
- 総務省 ふるさと納税ポータルサイト 制度改正について(2015年4月1日・ワンストップ特例制度の創設と住所変更の届出)
- e-Gov法令検索 所得税法34条(一時所得)・78条(寄附金控除)・120条(確定所得申告)・121条(確定所得申告を要しない場合)
- e-Gov法令検索 所得税法施行令262条(確定申告書に関する書類等の提出又は提示)
- e-Gov法令検索 所得税法施行規則47条の2(確定所得申告書に添付すべき書類等)
- e-Gov法令検索 地方税法37条の2・314条の7(寄附金税額控除)・317条の2(市町村民税の申告等)・317条の3(確定申告書の提出と市町村民税の申告)・附則7条(寄附金税額控除に係る申告の特例等)・附則7条の2(申告特例控除額)
- e-Gov法令検索 地方税法37条の2第11項・314条の7第11項(令和9年1月1日施行・令和8年法律第2号による改正後。特例控除額の定額の上限)・同改正法附則3条9項・11条8項(令和10年度分以後の個人住民税から適用)
- e-Gov法令検索 租税特別措置法41条の2の2(年末調整に係る住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除)
- e-Gov法令検索 国税通則法23条(更正の請求)
- 国税庁 所得税基本通達122-1(還付等を受けるための申告書に係る更正の請求)
※本記事は令和8年4月1日現在の法令等によります。控除の例は所得税率10%の人の概算で、実際の控除額は所得・ほかの控除・住民税の所得割の額によって変わります。
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