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不動産を売った年の確定申告 — 税額の計算、所有5年の分かれ目、自宅の3,000万円控除、取得費が分からないときの5%

「土地を売ったけれど、税金がいくらで、確定申告に何を書けばいいのか分からない」— 不動産を売った年の確定申告に向けた記事です。税額の計算のしくみ、所有期間5年の分かれ目、自宅を売ったときの3,000万円の控除、買ったときの金額が分からないときの5%の扱いを順に整理します。

この記事の要点

  • 税金は、売った金額から取得費と譲渡費用を引いた「譲渡所得」に、ほかの所得とは分けてかかる。税率は売った年の1月1日で所有期間が5年を超えるかで決まり、長期なら所得税15%・住民税5%、短期なら30%・9%
  • 自分が住んでいた家とその敷地を売ったときは、所有期間にかかわらず譲渡所得から最高3,000万円を控除できる。控除で税額が0になる年も、申告書に記載して明細書を添えて初めて適用される
  • 取得費は買ったときの実額が原則。分からないときは売った金額の5%を取得費にできるが、税額は大きくなりやすいので、契約書や通帳で実額を探してから使う

まず結論 — 税金は譲渡所得に税率を掛けた額で、ほかの所得とは別に計算する

譲渡所得の金額は、その年の譲渡による収入金額から、その資産の取得費と譲渡に要した費用を引いて計算します(所得税法33条3項)。税金がかかるのは、売った金額の全部ではなくこの残りです。

土地や建物の譲渡所得は、給与所得や事業所得などほかの所得と区分して税額を計算します(租税特別措置法31条1項・32条1項)。これが分離課税で、給与の多い少ないで譲渡所得の税率は変わりません。損失が出たときは、その損失はなかったものとみなされ、給与などほかの所得から引くことはできません(租税特別措置法31条1項・32条1項)。ただし、同じ年にほかの土地や建物を売って譲渡益が出ているときは、短期と長期の間でも、その譲渡益を限度に損失を差し引けます(租税特別措置法31条1項・32条1項)。

譲渡費用は、売るために直接かかった費用です。仲介手数料、借家人への立退料、土地を売るための建物の取壊し費用などが当たります(所得税基本通達33-7)。売買契約書の印紙代も譲渡費用です。修繕費や固定資産税など、持っている間の維持や管理の費用は含まれません(所得税基本通達33-7)。

所有5年の線 — 「売った年の1月1日」で数える

長期か短期かは、売った年の1月1日において所有期間が5年を超えているかで分かれます(租税特別措置法31条1項・32条1項)。所有期間は、取得した日の翌日から引き続き所有していた期間です(租税特別措置法31条2項・租税特別措置法施行令20条2項)。

所有期間による税率と、課税される譲渡所得が1,000万円のときの税額(復興特別所得税を除く)
区分売った年の1月1日の所有期間所得税住民税譲渡所得1,000万円の税額
短期譲渡所得5年以下30%9%所得税300万円+住民税90万円
長期譲渡所得5年超15%5%所得税150万円+住民税50万円
自宅で軽減税率の対象(6,000万円以下の部分)10年超10%4%所得税100万円+住民税40万円

2021年3月に買った土地を2026年中に売ると、2026年1月1日の時点では所有期間が5年に満たないので短期です。2027年に売れば、1月1日の時点で5年を超えて長期になります。同じ譲渡所得1,000万円でも、表のとおり1年の違いで190万円の差になります。

相続(限定承認によるものを除く)や贈与で取得した不動産は、亡くなった方や贈与した方が取得した日から所有期間を数えます(所得税法60条1項)。親が30年前に買った家を相続してすぐ売っても、長期譲渡所得です。

取得費 — 実額が原則、分からないときは売った金額の5%

取得費は、購入代金や建築代金、購入時の仲介手数料に、その後の設備費や改良費を加えた額です(所得税法38条1項)。建物は、買ってから売るまでの減価償却費に相当する額を差し引き、自宅のように事業に使っていなかった建物は、耐用年数を1.5倍した年数で旧定額法に準じて計算した額を引きます(所得税法38条2項・所得税法施行令85条1項)。相続した不動産は、亡くなった方が買ったときの額が取得費になります(所得税法60条1項)。

原則

取得費は、その資産の取得に実際に要した金額と、設備費・改良費の額の合計額です。

所得税法38条1項

ただし

取得費が分からないときなどは、売った金額の5%を取得費にできます。条文は昭和27年12月31日以前から持っていた不動産を対象にしています。

租税特別措置法31条の4第1項

相続した不動産を、相続の開始の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに売ったときは、納めた相続税のうちその不動産に対応する部分を取得費に加算できます。

租税特別措置法39条1項

昭和28年1月1日以後に取得した不動産についても、同じ5%の計算が認められています(措置法通達(山林所得・譲渡所得関係)31の4-1)。実際の取得費が売った金額の5%に満たないときも、5%を取得費にできます。

買ったときの売買契約書が見つからなくても、購入代金の領収書、住宅ローンの契約書や返済予定表、購入代金を払ったときの通帳の出金の記録、分譲時のパンフレットや価格表に取得の額が残っていないか探してみましょう。相続した家なら、親が買ったときの資料が実家に残っていないかも確かめてください。

5%を使うのは、こうした資料を探したあとにしましょう。

自宅を売ったとき — 3,000万円の控除、10年超の軽減税率、損が出たとき

自分が住んでいる家屋とその敷地を売ったときは、所有期間の長短にかかわらず、譲渡所得から最高3,000万円を控除できます(租税特別措置法35条1項・2項)。住まなくなった家は、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ることが条件です(租税特別措置法35条2項2号)。配偶者など特別の関係がある人への売却や、前年・前々年にこの控除や自宅の損失の特例を受けている場合は使えません(租税特別措置法35条2項)。

相続した親の家(昭和56年5月31日以前の建築など条件あり)を売る場合には、自分が住んでいなかった家でも使える別の3,000万円の控除があります(租税特別措置法35条3項・5項)。令和9年12月31日までの売却のうち、相続開始の日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ったもので、売った金額が1億円以下のものが対象です(租税特別措置法35条3項)。

ただし、その家と敷地を相続や遺贈で取得した相続人が3人以上のときは、控除額は2,000万円になります(租税特別措置法35条4項)。同じ年に、自分が住んでいた家の売却でも3,000万円の控除を受けるときは、その範囲内で政令の定めにより計算した金額が控除額になります(租税特別措置法35条4項)。

売った年の1月1日で所有期間が10年を超える自宅なら、3,000万円を引いたあとの課税長期譲渡所得のうち6,000万円以下の部分の所得税が10%になります(租税特別措置法31条の3第1項)。住民税も、同じ部分が4%になります。この軽減税率は、3,000万円の控除と重ねて使えます。

自宅を売って損失が出たときは、原則どおりほかの所得と損益通算できませんが、2つの特例があります。どちらも、売った年の1月1日で所有期間が5年を超える自宅を令和9年12月31日までに売った場合が対象です(租税特別措置法41条の5第7項・41条の5の2第7項)。

1つ目は買い換えの特例です。住宅ローンで新しい家を買い換えるなどの要件を満たすときは、その年にほかの所得と損益通算し、引ききれない分を翌年以後3年間繰り越せます(租税特別措置法41条の5)。2つ目は買い換えない場合の特例です。償還期間10年以上の住宅ローンの残高が売った金額を上回る自宅を売ったときは、残高と売った金額の差額を限度に、同じ損益通算と繰越しができます(租税特別措置法41条の5の2)。

繰越控除には申告の要件があります。損失が出た年の確定申告書を期限内に出し、その後も連続して確定申告書を出している場合に限って受けられます(租税特別措置法41条の5・41条の5の2)。繰り越す年は合計所得金額が3,000万円以下の年に限られ、買い換えの特例では、繰り越す年の12月31日に新しい家の住宅ローンの残高があることも要件です(租税特別措置法41条の5第4項・41条の5の2第4項)。ローンを完済した年からは、買い換えの特例の繰越控除は受けられません。

申告の手順と書類 — 売った年の翌年2月16日から3月15日まで

所得税の確定申告書を出す期間は、売った年の翌年2月16日から3月15日までで、申告した所得税もこの期間に納めます(所得税法120条1項・128条)。令和8年(2026年)中に売った不動産なら、次の帯の日程です。

令和8年中に不動産を売った方の確定申告

  1. 売った日(引渡しの日)起点。年内に、買ったときの契約書など取得費の資料を探し始める
  2. 2027年2月16日申告の受付が始まる
  3. 2027年3月15日申告と所得税の納付

期限を過ぎると無申告加算税や延滞税がかかるので、資料がそろわなくても分かる範囲で先に出します。

不動産を売った年の確定申告

  1. 資料をそろえる

    下の表の書類を集める。買ったときの契約書は、見つかるまで探す

  2. 内訳書で計算する

    「譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)[土地・建物用]」に収入金額・取得費・譲渡費用を書く

  3. 申告書を作る

    第一表・第二表に加えて、分離課税用の第三表に譲渡所得を書く。確定申告書等作成コーナーなら内訳書も一緒に作れる

  4. 期限内に出して納める

    e-Taxか税務署へ出して所得税を納める。特例を受けるときは、添付書類も一緒に出す

不動産を売った年の申告でそろえる書類
書類何のために使うか
売ったときの売買契約書・仲介手数料などの領収書収入金額と譲渡費用
買ったときの売買契約書・領収書取得費(見つからなければ5%)
登記事項証明書(不動産番号の明細書で添付を省略できる)10年超の軽減税率など、所有期間を示す特例を使うとき
戸籍の附票の写しなど住民票の住所と売った家の所在地が違うときに、住んでいたことを示す
相続税の申告書の控え相続税の取得費加算の計算明細書を作るとき

住民税の分(上の表の5%・9%)は、所得税の申告をもとに翌年度に課税されます。給与から天引きされない方は、市区町村から届く納税通知書で年4回に分けて納めるので、売却代金から取り分けておきましょう。

まとめ — 「1月1日」と「申告しないと控除は使えない」の2つを押さえる

不動産を売った年の確定申告は、取得費と譲渡費用の資料をそろえ、所有期間を売った年の1月1日で数え、使える特例を申告書で申し出る、という流れです。

やむを得ない事情があると税務署長が認めたときに限り、あとから書類を出して控除を受けられる定めはありますが(租税特別措置法35条13項)、最初から申告書に書いて期限内に出すのが確実です。

お手元の契約書は、売ったときと買ったときの両方がそろっているでしょうか。取得した日から売った年の1月1日までの年数も、登記事項証明書で確かめてみてください。不動産の売却がある年の確定申告のご依頼は、個人の確定申告のページで受付と進め方を案内しています。

出典

※本記事の税率・特例は令和8年4月1日現在の法令等によります。復興特別所得税は所得税額の2.1%で、表と例の税額は復興特別所得税を除いた額です。実際の税額は取得費・譲渡費用・特例の適用によって変わります。

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※免責事項: 本コラムは一般的な情報のご提供を目的とするもので、個別の事案に対する税務上の助言ではありません。内容は執筆時点の法令等にもとづいており、その後の改正などにより現在の取り扱いと異なることがあります。正確な記載に努めていますが内容を保証するものではなく、本コラムの情報にもとづいて行われたご判断について、当事務所は責任を負いかねます。実際の手続きやご判断にあたっては、税理士等の専門家にご相談ください。

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