会社を休眠させる手続きと税金 — 解散との違い、税務署・都税事務所・年金事務所への届出、休眠中の均等割と続く申告の義務、12年で解散とみなされる登記の決まり
事業は止めるが会社は残しておきたいとき、どこに何を届け出て、休眠中の税金と申告はどうなるのか。解散・清算との違い、税務署・都税事務所・年金事務所への届出、均等割と申告の義務、登記を放置すると解散とみなされる決まりを整理しました。
この記事の要点
- 休眠は解散せずに事業を止めておく形で、始めるときは税務署・都税事務所・年金事務所への届出が中心になると考えています
- 休眠中も法人は残るので、所得がなくても毎期の確定申告は要ります(法人税法74条1項)。法人住民税の均等割は、事務所や事業所などを有していた月数に応じてかかります(地方税法52条3項・312条4項)
- 登記を12年しないままにすると、法務大臣の公告から2か月以内に届出をしない限り解散したものとみなされます(会社法472条1項)
休眠とは何か — まず解散との違いを押さえる
会社法が「休眠会社」と呼ぶのは、登記が最後にあった日から12年を経過した株式会社のことです(会社法472条1項)。弊所では、これとは別に、解散の登記をせずに事業活動を止め、税務署などに休業を届け出た状態を「休眠」と呼んでいます。
解散して会社を終わらせるときの登記・官報公告・清算の流れと費用は、このサイトの会社をたたむ費用にまとめています。休眠はその手前で止める形で、いつでも事業を再開できる代わりに、会社を残す費用と手間が毎年かかると考えています。
届出 — 税務署・都税事務所・年金事務所
休眠に入るときの届出
税務署
異動届出書に休業の旨を書き、異動の後速やかに納税地の所轄税務署へ出す。e-Taxか、書面を1部持参または送付
税務署
給与の支払いをやめるなら、給与支払事務所等の廃止届出書を廃止の事実があった日から1か月以内に出す(所得税法230条)
都税事務所
東京都なら、事務所の廃止や届出事項の変更の日から10日以内に異動届出書を所管の都税事務所へ出す
年金事務所
役員報酬をなくして被保険者でなくなる役員がいれば、資格喪失の届出を出す(厚生年金保険法27条・健康保険法48条)
税務署への異動届出書は、事業年度や納税地の変更、代表者の変更、解散などの異動があったときに出す届出書で、国税庁の案内では提出時期は「異動等後速やかに」、添付書類はありません。休業も、この届出書で知らせておくことをお勧めします。
給与の支払いをやめるなら、給与支払事務所等の廃止届出書を、廃止の事実があった日から1か月以内に出します(所得税法230条)。東京都では、事務所・事業所を廃止した場合や届出事項を変更した場合、廃止または変更の日から10日以内に異動届出書を所管の都税事務所へ出すよう東京都主税局が案内しています。ほかの道府県・市区町村も同じ趣旨の届出があるので、所在地の自治体の案内で期限を確かめてみてください。
役員報酬をなくして社会保険の被保険者でなくなる役員がいるときは、事業主が資格の喪失を届け出ます(厚生年金保険法27条・健康保険法48条)。被保険者が1人もいなくなるなら、年金事務所に「健康保険・厚生年金保険適用事業所全喪届」も出しておきましょう。社長1人の会社で報酬をゼロにするときの扱いは、このサイトの役員報酬をゼロにできるかにまとめています。
休眠中の税金と申告 — 申告は続き、均等割は事務所の有無で決まる
休眠中で所得がなくても、法人は各事業年度の終了の日の翌日から2か月以内に確定申告書を出す義務があります(法人税法74条1項)。申告書を期限までに出さないと、青色申告の承認が取り消されることがあります(法人税法127条1項4号)。再開に備えて青色申告を保つためにも、休眠中も申告は続けることをお勧めします。
法人住民税の均等割の税率は、資本金等の額の区分(市町村分は従業者数も)で決まります(地方税法52条1項・312条1項)。東京都主税局は、都内に事務所又は事業所を有する法人は赤字決算でも法人都民税の申告と納付が必要で、均等割は決算の状況にかかわらず課税されると案内しています。
資本金等の額が1,000万円以下で従業者50人以下の会社なら、均等割の標準税率は道府県分が年2万円、市町村分が年5万円です(地方税法52条1項・312条1項)。ただし、資本金等の額が資本金と資本準備金の合算額(または出資金の額)に満たない会社は、その合算額で区分を判定します(地方税法52条4項・312条6項)。
東京23区の法人は、都の特例として市町村民税相当分もあわせて都民税として都税事務所に申告して納めると、東京都主税局は案内しています。上の区分の会社なら、道府県分と市町村分を合わせて年7万円を都に納める計算です。
みなし解散 — 登記を12年しないと解散したものとみなされる
休眠中も役員の任期は進みます。法務省は、株式会社の取締役の任期は原則2年(最長10年)で、交替や重任(同じ人が続けて就く場合)のときはその旨の登記が要ると案内しています。登記した事項に変更が生じたときは2週間以内に変更の登記をしなければならず(会社法915条1項)、登記を怠ると100万円以下の過料に処せられます(会社法976条1号)。
休眠中は役員の変更などの登記を忘れがちです。最後の登記から12年を経過した株式会社は会社法の「休眠会社」に当たり、法務大臣が官報で公告した日から2か月以内に事業を廃止していない旨の届出をしないと、その期間の満了の時に解散したものとみなされます。期間内に登記をしたときは解散とみなされません(会社法472条1項)。登記所は、公告があったことを休眠会社に通知します(会社法472条2項)。
法務省の案内では、令和8年度は10月15日に公告があり、12月15日までに届出か登記の申請をしない会社は12月16日付けで解散したものとみなされ、登記官が職権で解散の登記をします。届出をしても、本来の時期に登記を怠っていた事実は消えないため、裁判所から100万円以下の過料に処せられるとしています。みなし解散の登記の後でも3年以内なら会社を継続できますが、継続の決議から2週間以内に登記の申請が要ります。
再開か廃止か — 休眠を続ける費用で決める
再開するときは、異動届出書で事業の再開を知らせ、給与を払うなら給与支払事務所等の開設届出書を1か月以内に出し(所得税法230条)、社会保険の資格取得も届け出ます(厚生年金保険法27条・健康保険法48条)。休眠中も決算と申告を続けておけば、再開の手続きは届出が中心で済むと見ています。
廃止すると決めたときの解散・清算の登記と公告の費用、清算結了までの均等割、最後の申告の流れは、このサイトの会社をたたむ費用にまとめています。決算申告だけを税理士に頼む形の料金と範囲は決算申告だけのご依頼にまとめています。
まとめ — 休眠は「届出で始まり、申告と登記の手間が続く」
会社を休眠させる手続きは、税務署・都税事務所・年金事務所への届出で始まります。休眠中も毎期の申告は続き、事務所などを残す月は均等割もかかります。登記を12年放置すると解散したものとみなされます(会社法472条1項)。再開の予定が具体的でないなら、休眠を続ける費用と解散の費用を並べて決めてみてください。
出典
- 法務省 令和8年度の休眠会社等の整理作業(みなし解散)について
- 国税庁 C1-8 異動事項に関する届出
- 国税庁 A2-7 給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出
- 東京都主税局 法人事業税・法人都民税(よくある質問)
- 東京都主税局 事業を始めたとき・廃止したとき
- e-Gov法令検索 会社法472条(休眠会社のみなし解散)・915条(変更の登記)・976条(過料に処すべき行為)
- e-Gov法令検索 法人税法74条(確定申告)・127条(青色申告の承認の取消し)
- e-Gov法令検索 地方税法52条(法人の均等割の税率)・312条(法人の均等割の税率)・734条(都における普通税の特例)
- e-Gov法令検索 所得税法230条(給与等の支払をする事務所の開設等の届出)
- e-Gov法令検索 厚生年金保険法27条(届出)
- e-Gov法令検索 健康保険法48条(届出)
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