家賃収入の法人化シミュレーション(無料)の使い方 — 家賃収入・経費・立場を入れると、個人のままとの年間の差が分かる入力と結果の読み方
家賃収入を法人に移すと、税金と社会保険料は1年でいくら変わるのでしょうか。弊所のサイトには、この差をその場で試算できる無料の家賃収入の法人化シミュレーション(登録不要)を置いています。この記事では、入れる数字・出てくる結果・読むときの注意を、見本の数字に沿って順に説明します。
この記事の要点
- 弊所のシミュレーションの入力の基本は「家賃収入」「経費」「立場」「役員報酬」の4つで、会社員の方は「勤め先の給与収入」も入れる。年齢・貸している規模・地代・建物を移す一度きりの費用は「前提を変える」で変えられる
- 弊所試算では、給与600万円の会社員が家賃収入1,500万円・経費600万円の物件を法人に移し、役員報酬を0円にすると、年約86.5万円軽い
- 弊所試算では、会社員は役員報酬を出すほど差が縮み、個人事業主は0円より月10万円のほうが差が広がった。何通りか入れ替えて比べるのが使いどころ
このシミュレーションで分かること — 個人のままと法人化の、1年間の税・社会保険料の差
弊所のシミュレーションは、同じ家賃収入・同じ経費のまま、個人で受け取り続けた場合と法人に移した場合について、1年間に出ていく税金と社会保険料の合計を比べます。答えは弊所のページの第一画面に、年間の差の数字と2本の帯で出ます。
弊所の試算は、個人のままの側では、家賃収入から経費を引いた不動産所得(所得税法26条2項)に、所得税・住民税と、個人事業主なら国民健康保険・国民年金を数えます。弊所の試算は、法人化の側では、法人に残る利益にかかる法人税等と、役員報酬にかかる税・社会保険料を数えます。
| 入れるもの | 弊所の道具での使われ方 |
|---|---|
| 家賃収入と経費(年・万円) | 弊所の試算では、差し引いた額が不動産所得になり、個人のままの税と、法人に残る利益の出発点になる |
| 立場(会社員 / 個人事業主) | 弊所の試算では、会社員は勤め先の社会保険のままで、勤め先の給与収入と合わせた所得で税を計算する。個人事業主は国民健康保険・国民年金も数える |
| 法人化後の役員報酬(月額・万円) | 弊所の試算では、0円なら法人の健康保険・厚生年金に入らない前提で計算する。金額を入れると、法人の保険料とご本人の税・保険料が加わる |
| 年齢・貸している規模(前提を変える) | 弊所の試算では、介護保険料の有無と、青色申告特別控除(65万円か10万円)・個人事業税の有無を切り替える |
| 地代・一度きりの費用(前提を変える・任意) | 弊所の試算では、建物だけを移す形の地代を法人の経費に入れ、個人の不動産所得として数える。建物を移す費用は、年間の差で何年で取り戻せるかを結論に添える |
原則
建物の貸付けが事業として行われているかは、社会通念上事業と称するに至る程度の規模かどうかで判定します。
所得税基本通達26-9
ただし
貸間・アパートなどで独立した室数がおおむね10以上か、独立家屋がおおむね5棟以上なら、特に反証がない限り事業として行われているものとされます。
所得税基本通達26-9
個人事業税がかかるかどうかも貸付けの規模で決まりますが、所得税の目安とは別に、都道府県が不動産貸付業に当たるかを認定します。例えば東京都の認定基準は、住宅の一戸建てなら10棟以上、住宅以外の独立家屋なら5棟以上、それ以外の建物なら10室以上です。種類の違う物件を組み合わせて持つときは数の合計が10以上でも認定され、基準未満でも、貸付用建物の総床面積が600㎡以上で賃貸料収入が年1,000万円以上なら認定されます(東京都主税局「個人事業税」)。
弊所のシミュレーションの「貸している規模」は所得税の目安で選び、弊所の試算は、この選択で青色申告特別控除と個人事業税の有無を一緒に切り替える概算です。所得税の目安と個人事業税の認定基準の判定が分かれる方は、弊所の試算の個人事業税をそのまま使わず、個別に確かめることをお勧めします。
使い方 — 基本の数字を入れて、3つの手順で読む
弊所のシミュレーションの3ステップ
基本の数字を入れる
弊所のシミュレーションには、家賃収入と経費を年額で入れ、立場を選びます。会社員の方は、源泉徴収票の支払金額(額面の年収)を、弊所の道具の勤め先の給与収入の欄に入れます
前提を変える
弊所の道具の年齢・貸している規模・地代・建物を移す一度きりの費用は、「前提を変える」を開いて変えます。弊所の道具では、地代と一度きりの費用は空欄なら0円です
結果を読む
弊所のページの第一画面の年間の差と2本の帯を見てから、01の表で個人のままと法人化の内訳を1行ずつ確かめます
弊所のシミュレーションの家賃収入の欄には、家賃のほか共益費や駐車場代などの収入を合わせて入れます(税込の金額で構いません)。弊所の道具の経費の欄には、減価償却費・固定資産税・管理費・修繕費・借入金の利息・火災保険料など物件にかかるものを入れ、ご自身の国民健康保険・国民年金・所得税は入れません。
弊所のシミュレーションは数字を入れたそばから答えを出し直すので、計算のボタンはありません。
結果の読み方 — 見本の会社員の大家で、役員報酬を入れ替えると
弊所のシミュレーションを開いたときに入っている見本は、45歳の会社員(給与収入600万円)が、事業的規模の物件の家賃収入1,500万円・経費600万円を法人に移し、役員報酬を出さないケースです。会社員の方は勤め先の給与にかかる税と社会保険料が法人化の前後で同じなので、弊所の帯と表は家賃収入にかかる分だけで出ます。
見本のままなら、個人のままの約305.3万円に対して法人化は約218.7万円で、差は年約86.5万円です。役員報酬の月額を入れ替えると、弊所試算の答えは次のように変わりました。
※この表の試算年度: 所得税は令和8年分、保険料は令和8年度の計算前提(個人の住民税のうち給与・事業所得分は翌年度の見込み額)。
| 役員報酬(月額) | 個人のまま(年額) | 法人化した場合(年額) | 法人化との差(年額) |
|---|---|---|---|
| 月0万円 | 約305.3万円 | 約218.7万円 | 約86.5万円軽い |
| 月10万円 | 約305.3万円 | 約236.8万円 | 約68.5万円軽い |
| 月20万円 | 約305.3万円 | 約263.4万円 | 約41.9万円軽い |
| 月30万円 | 約305.3万円 | 約288.2万円 | 約17.1万円軽い |
役員報酬(月額)月0万円
約86.5万円軽い
役員報酬(月額)月10万円
約68.5万円軽い
役員報酬(月額)月20万円
約41.9万円軽い
役員報酬(月額)月30万円
約17.1万円軽い
※この比較に含めた負担: 弊所の試算の個人のままは、家賃収入の分にかかる所得税・住民税と個人事業税です。弊所の試算の法人化は、法人税等(赤字でもかかる均等割を含む)と、役員報酬を出す行では健康保険・厚生年金の保険料(法人の負担とご本人の負担の増加分)と、ご本人の税の増加分です。
弊所の試算では、役員報酬を出すと法人の保険料とご本人の保険料・税が加わるため、会社員の大家は役員報酬を増やすほど差が縮みました。
この試算に入っていないもの — 赤字の年と、結果を読むときの前提
原則
個人のままなら、不動産所得の赤字は、給与所得など他の所得から差し引けます。
所得税法69条1項
ただし
赤字のうち、土地を取得するために借りたお金の利子に相当する部分は、差し引けません。
租税特別措置法41条の4第1項
別荘など、主に趣味・娯楽・保養の目的で持つ不動産の貸付けの赤字も、他の所得から差し引けません。
弊所のシミュレーションは毎年同じ家賃収入と経費が続く前提で、赤字の年は数えていません。大規模修繕などで赤字が見込まれる年がある方は、その年も含めて比べることをお勧めします。
まとめ — 年間の差と一度きりの費用の両方で決める
家賃収入の法人化は、毎年の負担の差と、建物を移す一度きりの費用の両方を見て決めることをお勧めします。弊所試算の見本では年約86.5万円軽く、一度きりの費用に300万円を入れると、約3.5年で取り戻せると結論に添えられます。まずはご自身の家賃収入・経費・立場を入れ、役員報酬を何通りか入れ替えてみましょう。物件の移し方や時期まで含めて迷う点があれば、お気軽にご相談ください。
※本記事の金額は、45歳・扶養なし・令和8年度の協会けんぽ東京支部の料率・令和8年分の所得税・令和8年度の江東区の国民健康保険料で計算した弊所の概算です。物件をご家族と共有している方や、ほかの控除がある方は結果が変わります。
出典
- 国税庁タックスアンサー No.1373 事業としての不動産貸付けとそれ以外の不動産貸付けとの区分
- 国税庁タックスアンサー No.1370 不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)
- 国税庁タックスアンサー No.1391 不動産所得が赤字のときの他の所得との通算
- 国税庁 所得税基本通達26-9(建物の貸付けが事業として行われているかどうかの判定)
- 東京都主税局 個人事業税(不動産貸付業と駐車場業の認定基準)
- e-Gov法令検索 所得税法26条(不動産所得)・69条(損益通算)出典: https://laws.e-gov.go.jp/law/332AC0000000026 | e-Gov法令検索 租税特別措置法41条の4(不動産所得に係る損益通算の特例)
- e-Gov法令検索 法人税法34条(役員給与の損金不算入)
- e-Gov法令検索 法人税法施行令69条(定期同額給与の範囲等)
※法人化の前に: 法人化すると、赤字の年でも法人住民税の均等割(年7万円ほど)が毎年かかります。増える事務も決算・申告や設立時の届出だけではありません。毎月の給与計算と源泉所得税の納付、年末調整、社会保険の算定基礎届など、個人事業には無かった手続きが毎年続きます。保険料や税金の差だけでなく、この固定費と手間まで含めてご判断ください。
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