合同会社の設立費用はいくらか — 自分で作れば実費6万円、内訳と節約できる部分・できない部分
「合同会社なら安く作れると聞いたが、結局いくら要るのか」— 合同会社を自分で設立しようと考えている方に向けて、国に納める実費の内訳と、電子定款で省ける部分、どうしても省けない部分を整理します。専門家に頼む費用は含めず、自分で手続きする場合の実費だけを並べます。
この記事の要点
- 自分で手続きする場合の実費は、設立登記の登録免許税6万円が中心。資本金×0.7%が6万円に満たないときは6万円で、資本金が約857万円を超えると0.7%の額になる(登録免許税法別表第一)
- 公証人の認証が要るのは株式会社の定款で、合同会社の定款は社員になる人が作って署名すれば足りるため、認証手数料はかからない(会社法30条1項・575条1項)。紙の定款には印紙税4万円がかかり、電子定款にすれば不要になる(印紙税法別表第一)
- 一度きりの実費とは別に、法人住民税の均等割7万円が赤字でも毎年かかる(地方税法52条・312条)。資本金を1,000万円以上にすると設立1期目から消費税の納税義務があり、1,000万円を超えると均等割も18万円に上がる
まず結論 — 自分で手続きすれば、国に納める実費は6万円から
合同会社は、社員になる人が定款を作って署名し(会社法575条1項)、出資を払い込んで(会社法578条)、本店の所在地で設立の登記をすると成立します(会社法579条)。この流れの中で決まっている法定費用は次の3つで、合同会社では3つ目がもともとかかりません。
| 項目 | 金額 | 省けるか |
|---|---|---|
| 設立登記の登録免許税 | 資本金×0.7%。6万円に満たないときは6万円(登録免許税法別表第一) | 省けない(特定創業支援の軽減を除く) |
| 定款の印紙税 | 紙の定款なら1通4万円(印紙税法別表第一)。電子定款なら不要 | 電子定款で省ける |
| 定款の認証手数料 | 認証が要るのは株式会社の定款で、合同会社は不要なので0円(会社法30条1項・575条1項) | もともとかからない |
このほかに、設立後に登記事項証明書(書面請求で1通600円)や印鑑証明書(同500円)を取る手数料がかかります。
電子定款で設立すれば、国に納める実費は登録免許税の6万円だけです。紙の定款で設立すれば10万円になります。
節約できる部分 — 定款を電子にすれば印紙税4万円が消える
印紙税がかかるのは課税物件表に掲げられた「文書」で(印紙税法2条)、電子データ(電磁的記録)はこの文書に当たらないと国税庁も示しています。会社の設立のときに作る定款の原本は1通4万円の課税文書ですが(印紙税法別表第一)、合同会社の定款は電磁的記録で作ることができ(会社法575条2項)、電子データで作った定款には印紙税がかかりません。株式会社と違って公証役場に持ち込む必要もないので、自分で電子署名を付けたPDFがそのまま定款になります。
電子定款で合同会社を設立する流れ
定款をPDFで作る
目的・商号・本店の所在地・社員の氏名と住所・全員が有限責任社員である旨・出資の目的と価額を書く(会社法576条)
電子署名を付ける
署名に代わる措置として電子署名が要る(会社法施行規則225条)。マイナンバーカードの署名用電子証明書(公的個人認証サービス)が使え、法務省の申請用総合ソフトでPDFに付けられる
出資を払い込む
定款を作ったあと、登記の申請までに出資の全額を払い込む(会社法578条)
登記を申請する
オンラインで送るか、書面の申請書に電子定款の記録を添えて法務局へ出す(商業登記法19条の2)。登録免許税6万円を納める
電子署名に使えるのはマイナンバーカードの署名用電子証明書(公的個人認証サービス)などで、カードを読み取るICカードリーダーも先に用意しておきましょう。署名そのものは法務省が提供する申請用総合ソフトで付けられるので、有料の専用ソフトを買わなくても進められます。ただし申請用総合ソフトはWindowsのパソコンで動くものなので、Macしか無い方は動作環境を法務省のページで先に確かめてください。
節約できない部分 — 登録免許税6万円と、資本金で増える分
登録免許税は、登記を受ける人が納める国税で(登録免許税法3条)、合同会社の設立の登記の額は次のとおり決まっています。自分で手続きしても、電子定款にしても、この額は下がりません。
原則
合同会社の設立登記の登録免許税は資本金の額の1,000分の7で、6万円に満たないときは6万円です。
登録免許税法別表第一
ただし
個人が、認定を受けた市区町村の特定創業支援等事業の支援を受けて、その市区町村の区域内で株式会社か合同会社を設立する場合は、1,000分の3.5(合同会社は3万円、株式会社は7万5,000円に満たないときはその額)に軽減されます。令和9年3月31日までに登記を受けるものに限られます。
租税特別措置法80条3項
軽減を使うには、設立の前に市区町村の講座などの支援を受けて証明書をもらい、登記の申請に添えます(租税特別措置法施行規則30条の2第6項)。支援は1か月以上かけて受ける形が多く、証明書の発行まで含めると時間がかかるので、使うなら日程に組み込んでおきましょう。江東区の例は下の関連記事にまとめています。
軽減の対象は、個人が支援を受けて会社を設立する場合です(租税特別措置法80条3項)。特定創業支援等事業そのものにも、これから創業する人や創業から5年未満の人といった要件があるので、すでに事業を営んでいる方や2社目を作る方は、使えるかどうかを設立の前に市区町村に確かめてください。
株式会社と比べると — 認証手数料と登録免許税の最低額の2つで安い
株式会社の定款は公証人の認証を受けなければ効力が生じません(会社法30条1項)。合同会社など持分会社の定款にはこの定めがなく、社員が作って署名すれば足ります(会社法575条1項)。この違いが、一度きりの実費の差になります。
| 項目 | 合同会社 | 株式会社 |
|---|---|---|
| 定款の認証手数料(公証人手数料令35条) | 不要 | 資本金100万円未満は3万円(発起人が3人以下の個人で取締役会を置かないなど一定の場合は1万5,000円)、100万円以上300万円未満は4万円、それ以外は5万円 |
| 定款の印紙税(印紙税法別表第一) | 電子定款なら不要(紙なら4万円) | 電子定款なら不要(紙なら4万円) |
| 設立登記の登録免許税(登録免許税法別表第一・特定創業支援の軽減は租税特別措置法80条3項) | 資本金×0.7%、最低6万円(特定創業支援の軽減を受けると0.35%、最低3万円) | 資本金×0.7%、最低15万円(同じ軽減を受けると0.35%、最低7万5,000円) |
| 合計の目安 | 最低6万円(軽減を受けると最低3万円) | 最低16万5,000円から20万円(軽減を受けると最低9万円から12万5,000円) |
株式会社では、電子定款でも公証人の認証そのものは要るので、認証手数料は残ります。合同会社の設立が「安い」と言われるのは、この認証手数料と、登録免許税の最低額の差(15万円と6万円)の2つが理由です。どちらの形が合うかは、費用だけでなく信用や運営の違いも含めて、下の関連記事で比べてみてください。
設立のあとに続く費用 — 均等割7万円は赤字でも毎年
一度きりの設立費用と混ぜてはいけないのが、毎年の固定費です。法人住民税の均等割は、道府県分と市町村分を合わせて年7万円が標準税率で(資本金等の額1,000万円以下・従業者50人以下の会社)、利益が出ていない年もかかります(地方税法52条1項・312条1項)。
原則
資本金等の額が1,000万円以下で従業者50人以下の会社の均等割は、道府県分2万円と市町村分5万円の合計です。
地方税法52条1項・312条1項
ただし
資本金等の額が1,000万円を超えると(1億円以下・従業者50人以下の場合)、均等割は年18万円に上がります。
地方税法52条1項・312条1項
消費税にも同じ線があります。事業年度開始の日の資本金の額が1,000万円以上の新設法人は、基準期間のない設立1期目・2期目も消費税の納税義務が免除されません(消費税法12条の2第1項)。均等割は「超」、消費税は「以上」で線が引かれているので、資本金がちょうど1,000万円なら消費税の方だけに引っかかります。
資本金を大きく見せたい気持ちは分かりますが、1,000万円の線を越えると、設立費用より設立後の税金の方が大きく動きます。このほか、役員報酬を払うなら毎月の給与計算と源泉所得税の納付、年末調整、社会保険の手続きが毎年続くので、設立費用と一緒に設立後の事務も見ておきましょう。合同会社の維持費の全体は下の関連記事にまとめています。
まとめ — 実費は6万円が基本、節約できるのは電子定款の印紙税4万円と特定創業支援の軽減
合同会社を自分で設立する場合、国に納める実費は登録免許税の6万円が中心で、電子定款にすれば紙の定款の印紙税4万円が不要になります。公証人の認証はもともと要りません。専門家に頼むかどうかは、この6万円に報酬を足してでも時間と確実さを買うか、という判断です。
個人が市区町村の特定創業支援等事業の支援を受けて設立すれば、登録免許税も1,000分の3.5(3万円に満たないときは3万円)に軽減されます(租税特別措置法80条3項)。使えるかどうかは、設立の前に市区町村に確かめてください。
ご自身の設立では、どこまで自分で進められそうでしょうか。設立のあとの届出や、役員報酬・社会保険の決め方で迷う方は、弊所のマイクロ法人サポートの案内もご覧ください。設立費用そのものより、設立後の数字の組み立てで差がつきます。
出典
- 法務省 合同会社の設立手続について(定款は公証人の認証を要しない・登録免許税は資本金の額の1000分の7で6万円に満たないときは6万円)
- 法務省 商業・法人登記のオンライン申請について(添付書面情報への電子署名・使える電子証明書・申請用総合ソフト)
- 法務省 登記手数料について(登記事項証明書・印鑑証明書の手数料)
- 国税庁 タックスアンサー No.7191 登録免許税の税額表
- 国税庁 タックスアンサー No.7141 印紙税額の一覧表(その2)第5号文書から第20号文書まで
- 国税庁 質疑応答事例 課税される定款の範囲
- 国税庁 質疑応答事例 取引先にメール送信した電磁的記録に関する印紙税の取扱い(電磁的記録は文書に含まれない)
- e-Gov法令検索 登録免許税法3条(納税義務者)・9条(課税標準及び税率)・別表第一 二十四(一)イ・ハ(株式会社・合同会社の設立の登記)
- e-Gov法令検索 印紙税法2条(課税物件)・別表第一 第6号(定款)
- e-Gov法令検索 会社法30条(定款の認証)・575条(持分会社の定款の作成)・576条(定款の記載又は記録事項)・578条(合同会社の設立時の出資の履行)・579条(持分会社の成立)
- e-Gov法令検索 会社法施行規則225条(電子署名)
- e-Gov法令検索 商業登記法19条の2(申請書に添付すべき電磁的記録)
- e-Gov法令検索 公証人手数料令35条(定款の認証)
- e-Gov法令検索 租税特別措置法80条3項(特定創業支援等事業による支援を受けた会社の設立の登記の登録免許税の軽減)
- e-Gov法令検索 租税特別措置法施行規則30条の2第6項(特定創業支援等事業による支援を受けた会社の設立の登記の軽減を受けるための証明書の添付)
- e-Gov法令検索 地方税法52条・312条(法人の均等割の税率)
- e-Gov法令検索 消費税法12条の2(新設法人の納税義務の免除の特例)
※本記事の金額は、令和8年4月1日現在の法令等と、法務省が公表する令和7年4月1日からの登記手数料によるものです。登録免許税・印紙税の額は法令の改正で変わることがあります。
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