法人化を決めた人が次にぶつかるのが「会社の形」の選択です。この記事では、株式会社と合同会社の違いを設立費用・維持の手間・信用力の3つの面で整理し、どんな人がどちらに向くかを示します。
法人化を決めた人が次にぶつかるのが「会社の形」の選択です。この記事では、株式会社と合同会社の違いを設立費用・維持の手間・信用力の3つの面で整理し、どんな人がどちらに向くかを示します。
この記事の要点
会社を作るときの法定費用は、主に3つあります。設立登記の登録免許税、定款の認証手数料、定款の印紙税です。
| 費目 | 株式会社 | 合同会社 |
|---|---|---|
| 登録免許税 | 資本金の1,000分の7(15万円に満たないときは15万円) | 資本金の1,000分の7(6万円に満たないときは6万円) |
| 定款認証の手数料 | 3万〜5万円(資本金の額による) | 不要 |
| 定款の印紙税 | 紙の定款は4万円(電子定款は不要) | 紙の定款は4万円(電子定款は不要) |
小さな法人の資本金では、登録免許税はどちらも下限の額になります。この時点で9万円の差です。
そのうえで株式会社だけに、定款を公証人に認証してもらう手続きが義務づけられています(会社法30条)。手数料は資本金100万円未満で3万円、100万円以上300万円未満で4万円、300万円以上で5万円。令和6年12月からは、発起人が個人3人以下であることなど一定の要件を満たす小規模な設立に限り、1万5,000円に引き下げられました。合同会社の定款は社員(出資者)が作って署名するだけでよく(会社法575条)、認証の手続き自体がないため、この費用はかかりません。
印紙税は「紙で作った定款」に課される4万円で、これはどちらの形でも同じです。電子定款にすれば課されないため、実務ではどちらの形でも電子定款で作るのが一般的です。
登録免許税と定款認証を合わせると、法定費用の差はおよそ10万5,000円〜14万円に広がります。マイクロ法人の典型的な設立(資本金100万円未満・電子定款)なら、株式会社は16万5,000円〜18万円、合同会社は6万円です。
株式会社の取締役には任期があります。原則2年で、株式の譲渡制限がある会社(ひとり法人はほぼこの形です)でも定款で最長10年までしか延ばせません(会社法332条)。任期が満了するたびに、同じ人がそのまま続ける場合でも役員変更(重任)の登記が必要で(会社法915条)、登記のたびに登録免許税(資本金1億円以下の会社で1件1万円)がかかります。
合同会社の社員(出資者兼経営者)には、会社法上の任期の定めがそもそもありません。任期が満了するという出来事自体が起きないため、この定期的な登記も発生しません。
決算公告も同じ構図です。株式会社には毎年の決算公告が義務づけられていますが(会社法440条)、これは株式会社を対象にした規定で、合同会社に決算公告の義務はありません。ひとりで運営する前提では、続けるほど合同会社の手間の少なさが効いてきます。
法人税・法人住民税・消費税の扱いは、株式会社と合同会社で基本的に変わりません。
社会保険も同じです。どちらの形でも、役員報酬を払えば健康保険・厚生年金に加入します。
つまり「節税のためにどちらを選ぶか」という問いには、ほとんど意味がありません。選択の軸は費用・手間・見え方の3つです。
合同会社が費用と手間で有利でも、株式会社にしかない強みがあります。
逆に言えば、売上先が固定していて、外部からの出資も予定しないひとり法人なら、これらの強みが効く場面はほぼありません。
| あなたの状況 | 向く形 |
|---|---|
| ひとりで完結する事業(マイクロ法人を含む) | 合同会社 |
| 社名の信用力が受注に直結する業種 | 株式会社 |
| 将来、外部からの出資や上場を考えている | 株式会社 |
| 設立費用と毎年の手間を最小にしたい | 合同会社 |
迷ったら、後から合同会社を株式会社に変える(組織変更)こともできます。ただし変更にも登記費用がかかるため、最初の選択で決め切るのが理想です。
会社の形は費用と見え方の問題で、税金の損得はほぼ動きません。先に確かめるべきは、そもそも法人化で年間負担がいくら変わるかです。
弊所では、法人化の試算から会社の形の選択、設立後の届出までをまとめてサポートしています。
※登録免許税・印紙税の額は令和8年4月1日現在の法令、定款認証の手数料は令和6年12月改定後の額によります。定款の謄本代など少額の実費は別途かかります。
※法人化の前に: 法人化すると、赤字の年でも法人住民税の均等割(年7万円ほど)が毎年かかります。増える事務も決算・申告や設立時の届出だけではありません。毎月の給与計算と源泉所得税の納付、年末調整、社会保険の算定基礎届など、個人事業には無かった手続きが毎年続きます。保険料や税金の差だけでなく、この固定費と手間まで含めてご判断ください。
※有利・不利を比べるときは: 法人化の有利・不利は、保険料の削減額と法人の維持費の引き算だけでは決まりません。健康保険の傷病手当金・出産手当金や厚生年金の上乗せが付く一方、国民年金基金・付加年金は使えなくなります。国民健康保険は家族の人数分かかりますが、社会保険の被扶養者には保険料がかかりません。法人へ移す事業には、契約・請求・業務内容の区分という実体が必要です。これらも同じ土俵に載せてご判断ください。
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