12月の売上は入金が1月でも今年の収入 — 個人事業主の売上・経費の計上時期と、現金主義の特例を使える人
12月に納めた仕事の代金が1月に振り込まれたとき、それは今年の売上か来年の売上か。個人事業主の確定申告では、入金の日ではなく「収入すべき日」で年を決めます。売上と経費それぞれの計上日の決め方、年末に迷いやすい例、入金の日で計算できる現金主義の特例を使える人の条件を整理します。
この記事の要点
- 売上は入金日ではなく、商品を引き渡した日・役務の提供を完了した日の年の収入になる(所得税法36条・所得税基本通達36-8)。12月納品・1月入金は今年の売上
- 経費は12月31日までに債務が確定したものを計上する。年内に届いた請求書は支払が1月でも今年の経費、来年分の前払いは原則として来年の経費(所得税法37条・所得税基本通達37-2)
- 前々年の事業所得と不動産所得の合計(青色事業専従者給与などを必要経費に入れずに計算した額)が300万円以下の青色申告者は、届出をすれば入金・支払の日で計算する現金主義を選べる(減価償却費などは除く。事業・不動産の業務の全部を譲渡・廃止した年と死亡した年は使えない。以前に受けてやめた人は1月31日までの承認申請)。ただし青色申告特別控除は最高10万円になる(所得税法67条・所得税法施行令195条・196条・所得税法施行規則39条の2・租税特別措置法25条の2)
売上の計上日 — 入金日ではなく「収入すべき日」
事業所得の収入金額は、その年に「収入すべき金額」で計算します(所得税法36条1項)。収入すべき日は取引の種類で決まっていて、物の販売はその引渡しの日、請負は目的物を引き渡した日か役務の提供を完了した日、人的役務の提供は完了した日です(所得税基本通達36-8)。入金の日は関係ありません。
| 取引 | 今年の売上になるもの | 来年の売上になるもの |
|---|---|---|
| 商品の販売(委託販売・試用販売を除く) | 12月に引き渡した分(引渡しの日は出荷・検収などのうち継続して使う日) | 12月に注文を受けて1月に引き渡す分 |
| 委託販売(委託先の店で売ってもらう) | 12月に受託者が販売した分 | 12月に委託先へ納め、1月に売れた分 |
| 試用販売(試してから買うか決めてもらう) | 12月に相手が購入の意思を表示した分 | 12月に届け、1月に買うと返事が来た分 |
| 請負(制作・工事) | 12月に完成して引き渡した分 | 12月に着手して1月に引き渡す分 |
| 役務の提供(コンサル・講師・施術) | 12月に提供を完了した分 | 1月に提供する予約の前受金 |
| 月額の顧問料・保守料 | 契約で12月分として定まった報酬 | 1月分を12月に前受けした分 |
※商品の引渡しの日は、出荷した日・相手に着いた日・相手が検収した日など、商品の性質や契約の内容に応じて合理的な日のうち、続けて売上に計上している日です。検収した日で計上しているなら、12月に出荷した商品でも、相手の検収が1月なら来年の売上です(所得税基本通達36-8の2)。
※委託販売で、売上計算書が毎日か1か月を超えない一定期間ごとに届き、継続してその到達の日で計上しているときは、到達の日が収入すべき日です(所得税基本通達36-8)。試用販売で、一定期間内に返送や断りがなければ売れたことになる約束のときは、その期間が終わった日の年の売上です(所得税基本通達36-8)。
12月に納品して1月に入金される売上は、12月の売掛金として今年の収入に入れ、入金のときは売掛金の回収として処理します。逆に、1月に納品する仕事の代金を12月に前受けした分は、今年の売上ではなく前受金です。ご自身の年末の案件は、表のどちらの列に入るでしょうか。
報酬から差し引かれる源泉徴収税額は、その収入を計上した年の確定申告で税額から差し引いて精算します(所得税法120条1項)。
経費の計上日 — 12月31日までに「債務が確定」したもの
必要経費は、その年の売上に対応する売上原価と、その年に生じた販売費・一般管理費などの費用です(所得税法37条1項)。償却費以外の費用は、12月31日までに債務が成立し、給付の原因になる事実が発生し、金額を合理的に算定できるという3つの要件がそろったものを計上します(所得税基本通達37-2)。
消費税の課税事業者は、消費税でも資産の譲渡等の時期を引渡しの日・役務の完了の日で判定します(消費税法基本通達9-1-5)。
現金主義の特例 — 前々年の所得が300万円以下(専従者給与を引く前)の青色申告者が選べる
青色申告者で、前々年分の不動産所得と事業所得の合計が300万円以下の小規模事業者は、届出をすると、その年に入金した額を収入、支出した額を費用として計算できます(所得税法67条1項・所得税法施行令195条・196条)。300万円は、青色事業専従者給与などを必要経費に入れずに計算した額で判定します(所得税法施行令195条)。
入金ベースで帳簿をつけられるので、年末の売掛金・未払金の整理が要りません。ただし、減価償却費と資産損失は、支出した額で計算する扱いから除かれています(所得税法施行令196条)。
原則
売上は取引ごとに決まる収入すべき日(引渡しや役務の完了の日など)、経費は債務の確定した日の年に計上します。
所得税法36条1項・37条1項・所得税基本通達36-8・37-2
ただし
現金主義の届出をした小規模事業者は、減価償却費と資産損失を除き、入金した日・支払った日の年に計上できます。
所得税法67条1項・所得税法施行令196条
不動産所得と事業所得の業務の全部を譲渡・廃止した年と、死亡した年は、現金主義を使えません。
所得税法施行令196条
所得税法の「収入金額の計算」の規定(農産物の収穫の場合を除く)が適用される収入は、現金主義の入金の扱いから除かれます。
所得税法施行令196条
手続は「現金主義による所得計算の特例を受けることの届出書」を、適用を受けようとする年の3月15日まで(その年の1月16日以後に開業した人は開業の日から2か月以内)に税務署へ出します。e-Taxでも書面でも出せます。
ただし、以前にこの特例を受けていてやめた人が再び選ぶときは、届出書ではなく承認申請書を出して税務署長の承認を受けます(所得税法施行令195条)。申請書の期限は3月15日ではなく、適用を受けたい年の1月31日です(所得税法施行規則39条の2)。
年をまたぐ案件の整理の手順 — 12月31日の状態で4つを確かめる
1. 12月31日までに納品・完了していて未入金の案件を一覧にし、売掛金として今年の売上に入れる(委託販売は受託者が12月31日までに販売した分)
2. 12月に前受けした来年の仕事の代金を、売上から前受金に振り替える
3. 12月に届いた請求書と12月利用のカード明細を未払金で今年の経費に入れ、来年分の前払いを前払費用に移す
4. 12月31日の在庫を数えて棚卸資産にする(現金主義の特例を受けている青色申告者は不要。所得税法施行規則56条2項)
4つのうち、昨年の申告で抜けていたものがないか、帳簿を見返してみましょう。抜けていたときの直し方は、このサイトの確定申告を間違えたらで整理しています。
まとめ — 年を決めるのは入金日ではなく、引渡しと債務の確定
売上は原則として引き渡した日・完了した日(委託販売は受託者が販売した日、試用販売は相手が購入の意思を表示した日など)、経費は債務が確定した日で年を決めます。入金や支払の日で計算できるのは、要件を満たして現金主義の届出をした青色申告者だけです。年末の案件を上の手順で整理し、迷う取引は納品日の分かる記録を残しておくことをお勧めします。
出典
- 国税庁 収入金額とその計算
- 国税庁 現金主義による所得計算の特例を受けるための手続
- 国税庁 所得税基本通達36-8(事業所得の総収入金額の収入すべき時期)
- 国税庁 所得税基本通達37-2(必要経費に算入すべき費用の債務確定の判定)
- 国税庁 消費税法基本通達9-1-5(請負による資産の譲渡等の時期)
- e-Gov法令検索 所得税法36条(収入金額)・37条(必要経費)・67条(小規模事業者等の収入及び費用の帰属時期)
- e-Gov法令検索 所得税法施行令195条(小規模事業者の要件)・196条(小規模事業者の収入及び費用の帰属時期)
- e-Gov法令検索 租税特別措置法25条の2(青色申告特別控除・現金主義の特例を受ける人は最高10万円)
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