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「車を社用車にすれば全額経費」は本当か — 役員の私用分が給与になる仕組み、個人事業主の按分、中古車の耐用年数

「車は会社名義で買えば全部経費にできる」— 社長仲間からよく聞く話ですが、役員が私用で使う部分は、法人が役員に無償で用役を提供した経済的利益として役員給与になります。法人と個人事業主の違い、役員が週末に使う分の考え方、中古車の耐用年数の計算を、通達と省令に沿って整理します。

この記事の要点

  • 法人名義の車の減価償却費や維持費は、事業に使っている限り損金になる。役員が私用で使う部分は、法人が役員に無償で用役を提供した経済的利益として役員給与になる(法人税法34条4項・法人税基本通達9-2-9)
  • 経済的利益が毎月おおむね一定なら定期同額給与として損金になるが、役員の側では給与として所得税がかかる。一定でなければ損金にならず、役員の給与課税だけが残る(法人税法34条1項・法人税法施行令69条1項2号・所得税法36条1項)
  • 個人事業主の車は、業務の遂行上必要で明らかに区分できる部分だけが必要経費(所得税法45条1項1号・所得税法施行令96条)。耐用年数は普通車6年・軽自動車4年で、中古は経過年数に応じて短くなり最短2年(減価償却資産の耐用年数等に関する省令3条1項2号)

まず結論 — 「全額経費」は、全部を事業で使っているときだけ

法人が買った車は会社の資産で、減価償却費は償却限度額の範囲で損金になります(法人税法31条1項)。ガソリン代・保険料・車検代などの維持費も、事業のために使っている限り会社の費用です(法人税法22条3項2号)。ここまでは「全額経費」のとおりで、問題は、社長や家族が週末に使う分をどう扱うかです。

原則

法人が事業のために使う車の減価償却費と維持費は、会社の損金になります。

法人税法22条3項2号・31条1項

ただし

役員が私用で使う部分は、法人が役員に無償または低い対価で用役を提供したことになり、通常の対価との差額が役員給与(経済的利益)として扱われます。

法人税法34条4項・法人税基本通達9-2-9

旅費などの名義で支給したもののうち業務のために使ったことが明らかでないものや、役員の個人的な費用を会社が負担したものも、同じく役員給与です。

法人税基本通達9-2-9

役員給与になった部分は、毎月おおむね一定の額なら定期同額給与として損金になりますが、役員には給与として所得税がかかります(法人税法施行令69条1項2号・所得税法36条1項)。たまにしか使わないなど額が毎月変わるものは、損金にならないうえに役員の給与課税だけが残り、会社と社長の両方で負担が増えます(法人税法34条1項)。

名義ではなく、使い方と記録で決まる、というのがこの話の結論です。社用車が1台しかなく、通勤にも週末にも使っているなら、「全額経費」は成り立ちません。いま検討している車は、平日も休日も含めて、どのくらい事業で使うことになりそうでしょうか。

法人の場合 — 私用部分は役員給与、毎月一定なら損金にはなる

法人税では、役員への給与には金銭のほかに経済的利益が含まれます(法人税法34条4項)。会社の車を役員に無償で使わせることは用役の無償提供に当たり、通常その用役の対価として収入すべき金額との差額が給与とみなされます(法人税基本通達9-2-9)。役員から私用部分の使用料を受け取っていれば、差額はなく給与にはなりません。

法人名義の車の費用の扱い(使い方ごと)
使い方会社の損金役員の所得税
全部を事業で使い、記録がある減価償却費・維持費の全額が損金かからない
私用部分の使用料を役員から受け取っている全額が損金(使用料は会社の収益)かからない
私用部分があり、その利益が毎月おおむね一定定期同額給与として損金私用部分の利益に給与として課税
私用部分があり、額が毎月変わる私用部分は損金にならない私用部分の利益に給与として課税

役員の側では、用役の提供を無償や低い対価で受けた利益が給与所得の収入金額になり、会社は源泉徴収をします(所得税法36条1項・183条1項・所得税基本通達36-15)。給与課税の額は、私用部分について通常支払うべき対価の額、つまりレンタカーなどの使用料に相当する額が目安になります。

個人事業主の場合 — 業務に必要な部分だけを按分して必要経費に

個人事業主の車で見るのは、家事上の経費とそれに関連する経費は必要経費にならない、という決まりです(所得税法45条1項1号)。1台の車を仕事と私用の両方に使うなら、その費用は家事関連費で、必要経費にできるのは、主たる部分が業務の遂行上必要で、かつ必要な部分を明らかに区分できる場合のその部分だけです(所得税法施行令96条1号)。

青色申告者は、取引の記録などに基づいて業務の遂行上直接必要であったことが明らかにされる部分も必要経費にできます(所得税法施行令96条2号)。区分の基準は条文に決められていないので、走行距離や使用日数で分けておくことをお勧めします。年の途中で基準を変えると説明がつかなくなるので、1つの基準を続けましょう。まずは1か月だけでも、走行記録を付けてみましょう。

減価償却 — 新車は普通車6年・軽4年、中古は短くなる

車の法定耐用年数は、普通の乗用車が6年、総排気量0.66リットル以下の軽自動車が4年です(減価償却資産の耐用年数等に関する省令別表第一)。貨物自動車はダンプ式が4年でそのほかは5年、二輪・三輪は3年です。取得価額をこの年数にわたって費用にしていきます。

中古車は、法定耐用年数の全部を過ぎたものは法定耐用年数の20%、一部を過ぎたものは「法定耐用年数−経過年数+経過年数×20%」で計算した年数を使えます。1年未満の端数は切り捨て、2年に満たないときは2年です(減価償却資産の耐用年数等に関する省令3条1項2号・5項)。ただし、その中古車を事業に使うために支出した資本的支出(改造や大修理の費用)が取得価額の50%を超えるときは、この計算は使えません(同3条1項)。

車の耐用年数の例(減価償却資産の耐用年数等に関する省令別表第一・3条で計算)
区分耐用年数計算
普通車の新車6年別表第一の「その他のもの」
軽自動車の新車(総排気量0.66L以下)4年別表第一の「小型車」
普通車の2年落ち(24か月経過)4年(72か月−24か月)+24か月×20%=52.8か月 → 1年未満を切り捨て
普通車の4年落ち(48か月経過)2年(72か月−48か月)+48か月×20%=33.6か月 → 1年未満を切り捨て
普通車の6年落ち以上(全部経過)2年72か月×20%=14.4か月 → 2年未満は2年

よくある誤解とまとめ — 使い方を決めてから買う

社用車を買う前に決めておく4つのこと

  1. 誰がどう使うかを決める

    事業専用か、私用もあるか。私用があるなら使用料を取るか給与にするか

  2. 名義と支払いを会社にそろえる

    車検証・保険・ローンの名義を会社にし、費用は会社の口座から払う

  3. 記録の形を決める

    走行記録(日付・行き先・用件)を残す。私用の日も書く

  4. 償却の計画を立てる

    新車か中古か、耐用年数と償却方法で各期の費用を見積もる

「全額経費」は、全部を事業で使い、記録で説明できるときだけ成り立ちます。私用があるなら、使用料を受け取るか、毎月一定の経済的利益として給与に織り込むかを先に決めておくと、決算で慌てません。車種や中古かどうかは、その次の話です。実行の際は必ず事前にご相談ください。

出典

※本記事の取扱いは、令和8年4月1日現在の法令・通達によるものです。中古車の耐用年数の例は、省令の計算式に当てはめた結果で、実際には車ごとの経過期間で計算します。

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※免責事項: 本コラムは一般的な情報のご提供を目的とするもので、個別の事案に対する税務上の助言ではありません。内容は執筆時点の法令等にもとづいており、その後の改正などにより現在の取り扱いと異なることがあります。正確な記載に努めていますが内容を保証するものではなく、本コラムの情報にもとづいて行われたご判断について、当事務所は責任を負いかねます。実際の手続きやご判断にあたっては、税理士等の専門家にご相談ください。

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