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個人事業主に税務調査は来るか — 令和6事務年度の件数、何年分さかのぼるか、調査の流れと加算税

「個人事業主には税務調査は来ない」と聞いたことがあるかもしれません。実際には、自宅や事務所に来る実地調査のほかに、文書や電話で申告の内容を確かめる簡易な接触が年に70万件近くあります。令和6事務年度の国税庁の公表値、何年分さかのぼるか、事前通知から終了までの流れ、指摘を受けたときの加算税を整理します。

この記事の要点

  • 令和6事務年度(令和6年7月〜令和7年6月)の所得税の実地調査は46,896件、簡易な接触は689,440件で、合わせた調査等は736,336件(国税庁の公表値)
  • 実務では、調査はまず直近3年分を見ることが多い。法律上さかのぼれるのは原則5年で、偽りその他不正の行為があると7年(国税通則法70条1項・5項)
  • 調査で指摘されて修正申告すると、増えた税額の10%の過少申告加算税(当初の申告税額か50万円の多い方を超える部分は15%)。期限内に申告した年分は、事前通知の前に自分で直せば加算税はかからない(国税通則法65条)

件数 — 実地調査4.7万件、簡易な接触68.9万件

国税庁が令和7年12月に公表した令和6事務年度の所得税の調査の状況は、次のとおりです。実地調査は、多額の申告漏れが見込まれる人に日数をかけて行う特別調査・一般調査と、短期間で行う着眼調査に分かれます。簡易な接触は、原則として自宅や事務所に来ずに、文書・電話・来署の依頼で申告の内容を正す形です。

所得税の調査等の件数(国税庁の公表値・令和6事務年度と前事務年度)
区分令和6事務年度前事務年度
実地調査(特別調査・一般調査)36,404件37,092件
実地調査(着眼調査)10,492件10,436件
簡易な接触(文書・電話・来署依頼)689,440件557,549件
調査等の合計736,336件605,077件

調査等の合計のうち申告漏れなどがあったのは368,727件で、追徴税額の合計は1,431億円と過去最高でした。実地調査1件あたりの追徴税額は241万円、申告漏れ所得金額は1,240万円です。

簡易な接触が前年から13万件以上増えたのが、この年の特徴です。国税庁は選定にAIを活用していると公表していて、「実地調査は来ていない」人にも、文書や電話で申告の内容を問われる場面は増えています。ご自身の申告は、実地調査と簡易な接触のどちらの入口から見られるでしょうか。

何年分さかのぼるか — 実務ではまず直近3年分、法律上は原則5年・不正は7年

実務では、実地調査はまず直近3年分の申告を見ることが多く、事前通知でも「令和5年分から令和7年分」のように3年分が示されるのがよくある形です。3年分で問題が見つからなければ、そのまま終わるのが一般的です。ただし、3年分は法律で決まった期間ではありません。

原則

法律上、税務署が申告を更正・決定できるのは、法定申告期限から5年です。

国税通則法70条1項

ただし

偽りその他不正の行為で税を免れていた場合は、法定申告期限から7年までさかのぼれます。

国税通則法70条5項1号

3年分と5年分の差は、調査の途中で広がる部分です。調査で見つかった誤りと同じ誤りが、通知された期間より前の年分にもありそうだと疑われると、その年分も調査の対象に加わります(国税通則法74条の9第4項)。対象を広げるときは、加える税目と年分の説明があります。7年分まで広がるのは、売上を意図的に除外していたなど、偽りその他不正の行為が疑われるときです。

令和8年の秋に所得税の調査の事前通知が来たときの対象の年分
区分対象の年分
実務でまず見られることが多い範囲令和5年分〜令和7年分(3年分)
法律上の原則(国税通則法70条1項)令和3年分〜令和7年分(5年分)
偽りその他不正の行為があるとき(国税通則法70条5項1号)令和元年分〜令和7年分(7年分)

帳簿と領収書は、年分ごとにまとめて残しておきましょう。調査が5年分に広がって5年前の経費を問われたときも、領収書と帳簿が残っていれば説明できます。

流れ — 事前通知から終了まで

1. 事前通知 — 税務署から、調査の開始日時・場所・目的・税目・対象の期間・対象の帳簿書類などが知らされる(国税通則法74条の9)。税理士に依頼していれば税理士にも通知される。日程は都合が悪ければ変更を求められる。ただし、通知すると調査に支障を及ぼすおそれがあると認められる場合は、通知なしで始まることもある(国税通則法74条の10)
2. 当日 — 調査官が帳簿書類の提示・提出を求め、取引の内容を質問する(国税通則法74条の2)。通帳・請求書・領収書・帳簿は、年分ごとにそろえておくと安心です
3. 終了 — 問題がなければ「更正決定等をすべきと認められない」旨の通知が書面で届く。指摘があれば調査結果の内容と理由の説明があり、修正申告を勧められる(国税通則法74条の11)
4. 修正申告か更正 — 修正申告書を出すと不服申立てはできないが、更正の請求はできる。修正申告を勧めるときは、調査官がこの点を説明し、その旨を記載した書面を交付する(国税通則法74条の11第3項)

加算税 — 自分で直せばゼロ、指摘を受けると10%から

調査で申告漏れを指摘されて修正申告すると、増えた本税に過少申告加算税がかかります。税率は10%で、増えた税額が「当初の申告税額と50万円のいずれか多い額」を超える部分は15%です(国税通則法65条1項・2項)。ただし、当初の申告で税額の計算に入れなかったことに正当な理由があると認められる事実に基づく部分には、かかりません(国税通則法65条5項1号)。

事前通知の後で調査の指摘を受ける前に自分で修正申告した場合は5%で、「いずれか多い額」を超える部分は10%です(国税通則法65条1項・2項)。事前通知の前に自分で気づいて修正申告した場合は、過少申告加算税はかかりません(国税通則法65条6項)。

申告そのものをしていなかった年分には、無申告加算税がかかります。ただし、期限内に申告しなかったことに正当な理由があると認められる場合は、かかりません(国税通則法66条1項)。調査を受けて期限後申告をした場合は、納付すべき税額のうち50万円以下の部分が15%、そこから300万円までの部分が20%、それを超える部分が30%です(国税通則法66条1項・2項・3項)。事前通知の後で調査の指摘を受ける前に出した場合は、それぞれ10%・15%・25%です(国税通則法66条1項・2項・3項)。

ただし、前年分・前々年分の所得税に無申告加算税か、それに代わる重加算税を課されたことがあるか、課されるべきと認められるときは、どちらの割合にもさらに10%が加算されます(国税通則法66条6項2号)。ここでいう無申告加算税に、事前通知の前に自主的に期限後申告や修正申告をして5%の割合で課されたもの(国税通則法66条8項)は含みません(国税通則法66条6項2号)。調査を受けた後の期限後申告では、その申告の前日から5年前の日までの間に、所得税で調査を受けて無申告加算税か重加算税を課されたことがあるときも、10%が加算されます(国税通則法66条6項1号)。

ただし、事前通知の前に自主的に期限後申告をした場合は5%です(国税通則法66条8項)。その期限後申告が法定申告期限から1か月以内で、期限内に申告する意思があったと認められる一定の場合に当たるときは、無申告加算税はかかりません(国税通則法66条9項)。当初の申告が期限後申告だった年分は、事前通知の前に自分で修正申告しても、この5%の無申告加算税がかかります(国税通則法66条8項)。ただし、期限内に申告しなかったことに正当な理由があると認められる年分は、その修正申告にも無申告加算税はかかりません(国税通則法66条1項)。

売上を隠す・領収書を偽るなど、隠蔽や仮装があったときは重加算税が35%(無申告なら40%)になります(国税通則法68条1項・2項)。このほかに、納付が遅れた期間の延滞税がかかります。

日頃の備え — 売上・経費・年の区切りを整えておきましょう

売上の計上漏れ(通帳と請求書の突き合わせ・現金売上・年末の未入金分)、経費の中身(家事費との区別・家族への支払・高額な備品)、年の区切り(12月の売上を翌年に回していないか)の3つを押さえておくことをお勧めします。

  • 売上は請求書の控えと通帳を年分ごとにそろえ、現金売上は日ごとの記録を残しておきましょう
  • 家事按分は、割合の根拠(面積・日数・走行距離)をメモで残しておくと安心です
  • 帳簿と領収書は年分ごとにまとめ、電子取引のデータはデータのまま保存しておくことをお勧めします

調査でまず見られることが多い直近3年分について、この3つがすぐ出せる状態か確かめてみましょう。出せないものがあれば、調査の連絡より先に整えておくことをお勧めします。

まとめ — 調査は「来るか」ではなく「来ても説明できるか」

実地調査は年4.7万件ですが、文書や電話の簡易な接触を含めると73.6万件で、売上の規模で除外されることはありません。調査でまず見られることが多いのは直近3年分ですが、法律上は原則5年、不正があれば7年までさかのぼれます(国税通則法70条1項・5項)。期限内に申告した年分なら、事前通知の前に自分で直せば加算税はかからないので、気づいた誤りは早く直すことをお勧めします。

※件数と金額は国税庁「令和6事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」(令和7年12月公表)の数値です。加算税の割合は令和6年1月1日以後に法定申告期限が来る年分のものです。

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