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決算前にできる節税 — 期末1〜2か月で間に合う5つの対策と、決めても間に合わないものの見分け方

決算・申告決算が近い小さな会社の経営者の方へ / 約9分

執筆: 佐々木 俊 (税理士・公認会計士)執筆者について

「今期は利益が出そうだが、決算まであと2か月しかない」— この時期に受ける節税の相談は、期末までに何をしておくかで使えるかどうかが決まります。期末1〜2か月で間に合うものと、決めても間に合わないものを、法人税法の根拠とあわせて整理しました。

この記事の要点

  • 間に合うのは、決算賞与(全員への通知と期末後1か月以内の支給)、40万円未満の資産(期末までに事業で使い始める)、家賃・保険料などの1年分前払い、経営セーフティ共済の加入と掛金の前納、月末が到来した月の社会保険料の未払計上
  • 共通する条件は「期末までに債務が確定していること」か「期末までに払っていること」。注文しただけ・払う予定だけでは損金にならない
  • 役員への賞与は、原則として事前確定届出給与の届出が無ければ損金にならず、決算前に決めても間に合わない(例外は同族会社に当たらない会社だけ)

期末までに何が要るか — 5つの対策の一覧

法人の損金は、原則としてその事業年度の終了の日までに債務が確定した費用に限られます(法人税法22条3項2号)。債務の確定とは、期末までに債務が成立し、給付をすべき原因となる事実が発生し、金額を合理的に算定できることをいいます(法人税基本通達2-2-12)。決算前の対策は、この条件を期末までに満たせるものから選びます。

決算前1〜2か月で間に合う節税策(期末までに要ることと落とし穴)
対策期末までに要ること落とし穴根拠
決算賞与(従業員)支給額を各人別に全員へ通知し、損金経理する。支給は期末の翌日から1か月以内支給日に在職する人だけに払う定めだと、通知に当たらない法人税法施行令72条の3・法人税基本通達9-2-43
40万円未満の資産(少額減価償却資産)取得し、期末までに事業の用に供する。損金経理と明細書の添付納品前・未使用は不可。年間の合計は300万円まで租税特別措置法67条の5
家賃・保険料の前払い(短期前払費用)期末までに払い、支払日から1年以内の役務の分に限る。毎期継続する借入金の利子など収益と対応させるもの、養老保険など資産に計上する保険料は不可法人税基本通達2-2-14・9-3-4
経営セーフティ共済の加入・前納期末までに掛金を払う(前納の申出は希望月の5日まで)解約後2年以内の再加入分の掛金は損金にならない租税特別措置法66条の11
社会保険料の未払計上期末に月末が到来している月の会社負担分を未払計上する決算日が月末でない法人は、決算日を含む月の分を当期の損金にできない法人税基本通達9-3-2

決算2か月前からの進め方

  1. 着地を見積もる

    私は、期末までの売上・経費を見込んで当期の利益を先に出すことをお勧めしています。損金にできるのは期末までに債務が確定した費用に限られる(法人税法22条3項2号)ため、残りの期間で打てる手がここで決まります

  2. 従業員の賞与を決める

    支給額を各人別に決めて全員へ通知し、期末後1か月以内の支給日を決める

  3. 資産と前払いを実行する

    買う資産は期末までに使い始め、家賃などの年払いは期末までに払う

  4. 共済と未払計上を確かめる

    経営セーフティ共済の掛金と前納、月末到来分の社会保険料の未払計上を決算整理に組み込む

決算賞与 — 「全員に通知」と「1か月以内に支給」で当期の損金に

従業員への賞与は、原則として払った期の損金です。ただし、支給額を各人別に、同じ時期に支給を受ける全員へ通知し、その金額を期末の翌日から1か月以内に全員へ払い、通知した期に損金経理していれば、通知した日の属する事業年度の損金にできます(法人税法施行令72条の3)。期末に利益が見えてから決めても間に合う対策です。

注意したいのは通知の中身です。支給日に在職する人だけに払うという定めがあると、その通知は要件を満たしません(法人税基本通達9-2-43)。退職の予定がある人がいても、通知した額は払う前提で組みます。

使用人兼務役員の使用人としての職務に対する賞与も、他の従業員と同じ時期に支給するなら同じ扱いです。別の時期に支給した分は損金になりません(法人税法施行令70条3号)。なお、代表取締役や副社長・専務・常務、合同会社の業務執行社員は使用人兼務役員になれません(法人税法施行令71条1項)。

期末の翌日から1か月以内に全員へ払い切れる資金の余裕は、あなたの会社にあるでしょうか。通知したあとで払えないと、通知した期の損金にはなりません。

原則

役員への賞与は、事前に税務署へ届け出た事前確定届出給与でなければ損金になりません。

法人税法34条1項2号

ただし

同族会社に当たらない会社が、定期給与を支給しない役員に金銭で払う給与は、届出が無くても損金になります。

法人税法34条1項2号イ

決算前に「利益が出たから役員にも賞与を」と決めても、届出の期限は過ぎているため損金にできません。小さな会社の多くは同族会社なので、上の例外に当てはまるかどうかは株主の構成で確かめてください。

原則

役員報酬の月額は、会計期間の開始から3か月以内の改定に限られ、決算前に増額した分は当期の損金になりません。

法人税法施行令69条1項1号イ

ただし

役員の地位の変更や職務の内容の重大な変更などの臨時改定事由による改定は、期の途中でも損金になります。

法人税法施行令69条1項1号ロ

毎年決まった時期に改定していて、その時期が3か月を過ぎることに特別の事情があると認められる場合は、その改定の時期までの改定も認められます。

法人税法施行令69条1項1号イ

40万円未満の資産 — 買うだけでなく、期末までに使い始める

青色申告の中小企業者等は、取得価額40万円未満の減価償却資産を、事業の用に供した事業年度に全額損金にできます(租税特別措置法67条の5)。年間の合計は300万円まで、期限は令和11年3月31日までの取得分です。損金経理と、申告書への明細書の添付が条件です。

なお、以前は取得価額30万円未満・令和8年3月31日までの取得が対象で、古い解説にはその数字が残っています。現行の条文は40万円未満・令和11年3月31日までなので、判断は条文の数字で行ってください。

条件は「期末までに事業の用に供していること」です。注文や納品だけでは足りず、パソコンなら設定して使い始めている、機械なら据え付けて稼働していることが要ります。

家賃・保険料の前払い「1年以内」と「毎期継続」

前払費用は本来、役務の提供を受けた期の損金です。ただし、支払った日から1年以内に提供を受ける役務の分を払い、継続して支払った期の損金にしているときは、支払時の損金にできます(法人税基本通達2-2-14)。事務所の家賃や保険料の年払いが典型です。

条件は3つ。期末までに実際に払っていること、支払日から1年を超える分を含まないこと、毎期同じ処理を続けることです。今期だけ年払いにして来期に月払いへ戻す使い方は、継続の条件を満たしません。

借入金を預金や有価証券に運用する場合の支払利子のように、収益と対応させる必要があるものも対象外です。3月決算の会社が3月に4月から翌年3月までの家賃を払えば1年以内ですが、翌年4月分まで13か月分を払うと1年以内の条件を満たしません。

保険料は、保険の種類にも注意が要ります。会社が保険金の受取人になる養老保険のように、払った保険料を資産に計上する保険は、前払いしても当期の損金になりません(法人税基本通達9-3-4)。解約返戻率の高い定期保険なども、一定期間分の保険料をまとめて前払いしたときはいったん全額を資産に計上し、当期に対応する分だけがその保険の取扱いの対象になります(法人税基本通達9-3-5の2)。

経営セーフティ共済 — 加入と前納で当期の損金を作る

経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)の掛金は、払った期の損金です(租税特別措置法66条の11)。掛金は月5,000円から20万円まで選べ、期末までに加入して掛金を払えば当期の損金になります。前納の申出をすれば12か月分をまとめて払え、中小機構も、毎年度、決算月の前月までに前納を申し出て年度内の損金に最大限算入する例を示しています。

ただし、前納できるのは、掛金の上限800万円に達するまでに掛金月額の2か月分以上の枠が残っているときに限られます。前納は、希望する月の5日までに中小機構に書類が届くと、その月に引き落とされます。決算月に前納したいなら、その月の5日までに申出書が届いている必要があり、12月決算なら12月5日までです。ここで一度、ご自身の決算月と申出の締切を確かめてみてください。

社会保険料の未払計上 — 月末が来た月の分は当期の損金

会社負担の社会保険料は翌月末に納めますが、保険料の計算の対象になった月の末日が属する事業年度の損金にできます(法人税基本通達9-3-2)。3月決算なら、4月末に納める3月分を未払計上して当期の損金にできます。毎期同じように計上していれば、決算整理の1行で済む対策です。

ただし、決算日が月末でない法人は違います。社会保険料の支払債務は、月末に在職しているという事実で確定します。20日決算の法人が1日から20日分を前月の納付実績から見積もって計上しても損金にはならず、決算日を含む月の分は当期の損金にできません。決算日が月末でない会社は、この1か月分を来期に回すことになります。

まとめ — 「期末までに確定・支払・使用開始」の3条件で選ぶ

決算前の節税は、期末までに債務が確定するか、払っているか、使い始めているかの3つで選べば迷いません。決算賞与・40万円未満の資産・前払い・共済・社会保険料の未払計上の5つは、期末1〜2か月でも間に合います。役員の賞与と報酬の増額は、次の期首に向けて準備するものです。どの対策も納税を先に送る効果と資金の流出を伴うため、実行の際は必ず事前にご相談ください。

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