法人の青色申告承認申請書の期限 — 設立から3か月を過ぎると、1期目の赤字が消える
「設立の届出は出したけれど、青色申告の申請は出したかな」— 会社を設立したばかりの社長の方に向けて、法人の青色申告の承認申請書の期限の数え方を整理します。期限を過ぎたときに1期目から何が消えるかは、条文の税率で計算した金額で見ていきます。
この記事の要点
- 設立1期目の期限は「設立の日以後3か月を経過した日」と「1期目の末日」のいずれか早い日の前日まで(法人税法122条2項)。4月1日設立なら6月30日
- 期限を過ぎると1期目は白色申告になり、1期目の赤字を2期目以降に繰り越せない(法人税法58条)。赤字300万円を翌期の黒字300万円と相殺できれば法人税は0円、できなければ45万円
- 申請書は法人設立届出書と同じ日に出してしまうのが確実。期末までに承認も却下もなければ、その日に承認があったものとみなされる(法人税法125条)
期限は「設立から3か月」より1日早い — 設立届出書と同じ日に出す
法人の青色申告は、納税地の税務署長の承認を受けた法人だけが使える申告の方式です(法人税法121条1項)。承認を受けるには「青色申告の承認申請書」を出す必要があり、2期目以降は、青色にしたい事業年度の開始の日の前日が期限です(法人税法122条1項)。承認を受けるのは内国法人、つまり会社そのものです(法人税法121条1項)。個人事業のときに青色申告をしていた方も、会社としては改めて承認の申請を出すことになります。
設立1期目だけは別の数え方になります。期限は、設立の日以後3か月を経過した日と、1期目の事業年度終了の日とのうち、いずれか早い日の前日です(法人税法122条2項1号)。設立の日は、設立の登記をした日です(法人税基本通達1-2-1)。
設立1期目の青色申告の承認申請(4月1日設立・3月決算の会社の例)
- 4月1日設立の登記の日が起点
- 5月中法人設立届出書(設立の日以後2か月以内・法人税法148条)と同じ日に出してしまうのが確実
- 6月30日青色申告の承認申請書の期限(3か月を経過した日の前日)
- 7月1日〜1期目の青色申告はできない。2期目から青色にするなら、1期目の末日(翌年3月31日)までに申請
「3か月以内」と覚えていると、最後の1日で間に合わなくなります。
原則
設立1期目に青色申告をするための申請の期限は、設立の日以後3か月を経過した日と1期目の終了の日のいずれか早い日の前日です。
法人税法122条2項1号
ただし
設立の日から1期目の末日までが3か月に満たない会社は、2期目についても、設立の日以後3か月を経過した日と2期目の終了の日のいずれか早い日の前日が期限になります。
法人税法122条2項4号
期限の日が土曜日・日曜日・祝日や12月29日から31日までの日に当たるときは、その翌日が期限になります。
国税通則法10条2項・国税通則法施行令2条2項
期限を過ぎると何が消えるか — 1期目の赤字を翌期に持ち越せない
青色申告の法人は、ある事業年度の赤字(欠損金)を、翌期以降10年間の黒字から差し引けます(法人税法57条1項)。資本金1億円以下の中小法人は、原則としてその期の所得の全額まで差し引けます(法人税法57条11項)。ただし、資本金1億円以下でも、資本金5億円以上の法人などの大法人による完全支配関係がある会社(大法人の100%子会社など)や大通算法人は、差し引けるのが所得の50%までです(法人税法57条1項・11項)。設立1期目は、設立の費用や売上が立つまでの固定費で赤字になりやすく、この繰越がいちばん効く場面です。
ところが、青色申告書を提出しない事業年度に生じた赤字は、災害による損失の部分を除いて、繰越の計算上ないものとされます(法人税法58条1項)。申請の期限を過ぎると1期目は白色申告になり、1期目の赤字は2期目以降の黒字と相殺できません。
相殺できるかどうかで2期目の法人税がどれだけ変わるかを、条文の税率で計算してみます。15%は、資本金1億円以下の法人などの令和9年3月31日までに開始する事業年度に適用される特例の率です(租税特別措置法42条の3の2)。
原則
資本金1億円以下の会社なら、法人税の税率は、所得のうち年800万円以下の部分が15%、800万円を超える部分が23.2%です。
法人税法66条1項・2項、租税特別措置法42条の3の2
ただし
資本金1億円以下でも、資本金5億円以上の法人などの大法人による完全支配関係がある会社(大法人の100%子会社など)は、年800万円以下の部分も23.2%です。
法人税法66条1項・5項
適用除外事業者や通算法人も15%の特例の対象外で、所得が年10億円を超える事業年度は15%ではなく17%です。
租税特別措置法42条の3の2第1項
次の表は、上の「ただし」に当たらない資本金1億円以下の会社について、繰越ができる場合とできない場合の2期目の法人税を計算したものです。
| 1期目の赤字と2期目の黒字 | 青色で繰越できる場合(年額) | 白色で繰越できない場合(年額) |
|---|---|---|
| 赤字300万円 → 黒字300万円 | 0円 | 45万円 |
| 赤字500万円 → 黒字1,000万円 | 75万円 | 166.4万円 |
青色でないと使えないものは、繰越だけではない
| 制度 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 欠損金の繰越控除 | 赤字を翌期以降10年間の黒字から差し引く | 法人税法57条・58条 |
| 欠損金の繰戻し還付 | 赤字の期の開始の日前1年以内に開始した期の法人税の還付を受ける | 法人税法80条 |
| 少額減価償却資産の特例 | 取得価額40万円未満の資産を、買った期に年300万円まで全額経費にする | 租税特別措置法67条の5 |
| 中小企業の特別償却・税額控除 | 機械などを買ったときの特別償却や法人税額の控除 | 租税特別措置法42条の6ほか |
繰戻し還付は、青色申告書である確定申告書を出す事業年度の赤字が対象で、その期の開始の日前1年以内に開始した事業年度の法人税を戻してもらう制度です(法人税法80条1項)。還付の請求は、赤字の期の確定申告書の提出と同時に行います(法人税法80条1項)。設立1期目には前の期がないので使えませんが、2期目以降に赤字が出たとき、前の期に納めた法人税が戻る道が原則として残ります。
原則
繰戻し還付を受けるには、戻してもらう期から赤字の期の前の期まで連続して青色申告書で確定申告をし、赤字の期の青色申告書を提出期限までに出していることが条件です。
法人税法80条3項
ただし
赤字の期の青色申告書を期限後に出したときも、税務署長がやむを得ない事情があると認める場合は、繰戻し還付を受けられます。
法人税法80条3項
災害の日から1年以内に終わる期の、災害で棚卸資産や固定資産などに生じた損失による赤字(災害損失欠損金額)は、戻してもらう期から赤字の期まで続けて確定申告書を出していれば、白色申告や期限後申告でも繰り戻せます。
法人税法80条5項
1期目を白色で申告した会社は、災害損失欠損金額を除き、2期目の赤字を1期目に繰り戻せません。また、令和10年3月31日までに終わる期の赤字で繰戻し還付を使えるのは、解散などの一定の事実が生じた場合や災害損失欠損金額などを除き、資本金1億円以下の会社などの中小企業者等に限られます(租税特別措置法66条の12)。資本金1億円以下でも、大法人の100%子会社などは中小企業者等に当たりません(租税特別措置法66条の12)。
少額減価償却資産の特例は、青色申告書を提出する中小企業者等が取得価額40万円未満の資産を買ったとき、買った期に全額を経費にできる制度です(租税特別措置法67条の5第1項)。上限は年300万円で、1期目が1年に満たない会社は、300万円を12で割って月数を掛けた額が上限になります。パソコンや什器をそろえる設立の年ほど、この特例の出番が多くなります。
ただ、連続して出しているかどうかは、繰越控除を使う期の申告書を出した時点で判定されます。2期目を無申告のまま3期目の申告で1期目の赤字を差し引くことはできず、3期目の申告を出したあとで2期目の期限後申告を出しても繰越は戻りません(国税不服審判所 平成20年3月14日裁決・裁決事例集No.75)。2期目の期限後申告を先に済ませてから3期目の申告をする順番なら条件を満たしますが、期限後申告は青色申告の承認の取消しの事由でもあります(法人税法127条1項4号)。
承認はどう決まるか — 通知を待たなくてよい、却下と取消しの事由を知っておく
承認の通知が届かなくても、心配は要りません。申請した事業年度の終了の日(その事業年度に中間申告書を出すべき法人は、開始の日以後6か月を経過する日)までに承認も却下もなければ、その日に承認があったものとみなされるからです(法人税法125条1項)。設立1期目には中間申告がないので、1期目の末日が区切りです(法人税法71条1項)。出した申請書の控えか、e-Taxの受信通知を残しておけば足ります。
却下されるのは、帳簿書類の備付け・記録・保存が決まりどおりでないとき、帳簿に取引を隠したり仮装したりした記載があると認められる相当の理由があるとき、承認の取消しの通知や取りやめの届出から1年以内に申請したときです(法人税法123条)。設立したばかりの会社で問題になるのは、申請そのものを出したかどうかです。
手続はシンプル — 様式に記入して、e-Taxか書面で出す
青色申告の承認申請の3段階
期限を確かめる
設立の登記の日から3か月を経過した日の前日と、1期目の末日の前日のどちらが早いかを見る
申請書を作る
国税庁の様式「青色申告の承認申請書」に、法人の名称・納税地・法人番号・代表者の氏名などを書く(法人税法施行規則52条)
税務署へ出す
e-Taxソフトで作成して送信するか、書面を1部、納税地の所轄税務署へ持参か送付する。控えか受信通知を残す
承認を受けた法人は、帳簿書類を備え付けて取引を記録し、保存する義務を負います(法人税法126条1項)。記録は、資産・負債・資本に影響するすべての取引を複式簿記の原則に従って整然と明りょうに記録し、その記録に基づいて決算を行う形です(法人税法施行規則53条)。一般的な会計ソフトは複式簿記で記録する作りなので、ソフトで記帳していればこの条件は満たしやすいものです。
まとめ — 出したかどうかを今日確かめる
設立1期目の青色申告の承認申請は、設立の日以後3か月を経過した日と1期目の末日のいずれか早い日の前日が期限で、過ぎれば1期目の赤字は繰り越せません。会社を作ったばかりで「出したかどうか覚えていない」なら、提出した申請書の控えか、e-Taxのメッセージボックスを今日確かめてみてください。
期限を過ぎていたときは、2期目の開始の日の前日(1期目の末日)までに申請を出せば、2期目から青色になります(法人税法122条1項)。1期目の赤字は戻りませんが、2期目以降の赤字は守れます。設立直後に何をどの順で出すかは、下の記事とあわせて確かめてみてください。
出典
- 国税庁 税務手続の案内 C1-19 青色申告書の承認の申請
- 国税庁 タックスアンサー No.5100 新設法人の届出書類
- 国税庁 タックスアンサー No.5762 青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除
- 国税庁 タックスアンサー No.5763 欠損金の繰戻しによる還付
- 国税庁 タックスアンサー No.5759 法人税の税率
- 国税庁 タックスアンサー No.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例
- e-Gov法令検索 法人税法2条(定義。確定申告書には期限後申告書を含む)・57条(欠損金の繰越し)・58条(青色申告書を提出しなかつた事業年度の欠損金の特例)・66条(各事業年度の所得に対する法人税の税率)・71条(中間申告)・80条(欠損金の繰戻しによる還付)・121条(青色申告)・122条(青色申告の承認の申請)・123条(青色申告の承認申請の却下)・125条(青色申告の承認があつたものとみなす場合)・126条(青色申告法人の帳簿書類)・127条(青色申告の承認の取消し)・148条(内国普通法人等の設立の届出)
- e-Gov法令検索 租税特別措置法42条の3の2(中小企業者等の法人税率の特例)・42条の6(中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除)・66条の12(中小企業者の欠損金等以外の欠損金の繰戻しによる還付の不適用)・67条の5(中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例)
- e-Gov法令検索 国税通則法10条(期間の計算及び期限の特例)
- e-Gov法令検索 国税通則法施行令2条(期限の特例)
- e-Gov法令検索 法人税法施行規則52条(青色申告承認申請書の記載事項)・53条(青色申告法人の決算)
- 国税庁 法人税基本通達1-2-1(設立第1回事業年度の開始の日)
- 国税不服審判所 平成20年3月14日裁決(裁決事例集No.75・370頁) 「連続して確定申告書を提出している場合」に当たるかどうかは繰越欠損金を損金に算入する事業年度の確定申告書の提出時の現況によるとした事例
- 国税不服審判所 裁決要旨(繰越欠損金) 昭和58年12月15日裁決(裁決事例集No.26・138頁) 繰越欠損金の記載誤りによる過大控除は繰越控除を行った事業年度で是正すれば足りるとした事例
※本記事は令和8年4月1日現在の法令等によります。法人税の15%の税率は、資本金1億円以下の法人などの令和9年3月31日までに開始する事業年度に適用される特例の率で、それ以後に開始する事業年度は改正がなければ19%です(法人税法66条2項・租税特別措置法42条の3の2)。ただし、所得が年10億円を超える事業年度は15%ではなく17%で、大法人の100%子会社など・適用除外事業者・通算法人はこの特例の対象外です(租税特別措置法42条の3の2第1項)。
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