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暗号資産(仮想通貨)の確定申告 — 売った・使った・交換したときの所得の計算と、損が出ても給与と相殺できない理由

「ビットコインを少し売った」「暗号資産で買い物をした」— どの取引を申告するのか分からないまま、3月を迎える方が少なくありません。国税庁が公表している計算例を使って、所得が出る3つの場面、取得価額の計算、損失が出たときの扱い、会社員の20万円の線までを順に整理します。

この記事の要点

  • 暗号資産の取引で出た利益は原則として雑所得(その他雑所得)で、総合課税の対象。売却のほか、暗号資産で商品を買ったときや別の暗号資産と交換したときも、その時点の時価と取得価額の差が所得になる(所得税法36条1項)
  • 取得価額は、評価方法を届け出なければ総平均法で計算する。購入の手数料は取得価額に含め、売却の手数料や暗号資産の取引の分を明確に区分できる回線利用料は必要経費になる(所得税法施行令119条の5・119条の6)
  • 雑所得の損失は給与など他の所得と損益通算できない(所得税法69条1項)。翌年以後に繰り越せる純損失の金額は、所得税法69条1項に規定する損失の金額(損益通算の対象になる損失)のうち同条の規定を適用してもなお控除しきれない部分の金額なので、損益通算の対象でない雑所得の損失は翌年にも繰り越せない(所得税法2条1項25号・70条1項。この定義は2028年1月1日施行の改正後の条文でも同じ)。給与1か所で年間収入2,000万円以下の会社員は、給与以外の所得が20万円以下なら所得税の確定申告は要らないが、住民税の申告は別に要る(所得税法121条1項1号・地方税法317条の2第1項)

まず結論 — 利益は雑所得として総合課税、損失は相殺も繰越もできない

暗号資産を売って日本円に換えたときの利益は、2028年1月1日施行の改正前の所得税法では、原則として雑所得(その他雑所得)に区分され、給与や事業の所得と合算した総合課税の対象になります。

原則

暗号資産の取引で生じた利益は、雑所得(その他雑所得)として総合課税の対象になります(2028年1月1日施行の改正より前の譲渡の扱い)。雑所得は、利子・配当・不動産・事業・給与・退職・山林・譲渡・一時のどの所得にも当たらない所得です。

所得税法35条1項

ただし

暗号資産の取引を、社会通念上事業と称するに至る程度で行っていると認められる場合は、事業所得になります。帳簿書類を保存していない場合は、収入金額が300万円を超え、かつ事業所得と認められる事実がある場合を除き、業務に係る雑所得(資産の譲渡から生ずる所得は譲渡所得又はその他雑所得)に当たります(所得税基本通達35-2)。また、2028年1月1日施行の改正後の所得税法には、譲渡所得の基因となる暗号資産を前提にした規定が加わり、雑所得ではなく譲渡所得として計算する暗号資産が出てきます。

改正後の所得税法48条の2・69条

雑所得なので、損失が出た年に、その損失を給与所得などから差し引くことはできません(所得税法69条1項)。翌年以後に繰り越して控除できる純損失の金額は、原則として青色申告書を提出している年に生じたものです(所得税法70条1項)。白色申告の年でも、変動所得の損失や被災事業用資産の損失に係る純損失は繰り越せます(所得税法70条2項)。

この純損失の金額は、所得税法69条1項に規定する損失の金額のうち、同条の規定を適用してもなお控除しきれない部分の金額をいいます(所得税法2条1項25号。この定義は2028年1月1日施行の改正後の条文でも同じです)。

損益通算の対象でない雑所得の損失は、この純損失に当たらないため、翌年以後の利益と相殺することもできません。利益が出た年は申告して納め、損が出た年は何も引けない、という片方向の仕組みです。

売却のほか、暗号資産で商品を買ったときや、別の暗号資産に交換したときも所得が出ます(所得税法36条1項)。日本円に戻していなくても申告の対象になることが、いちばん見落としやすい点です。

所得が出る3つの場面 — 売る・使う・交換する(国税庁の計算例)

国税庁は、4BTCを4,000,000円で買った人を例に、所得の計算方法を示しています。3つの場面を並べると、どれも「譲渡価額から取得価額×数量を引く」という同じ形です。ご自身の取引に、売却のほかに決済や交換は含まれていないでしょうか。

所得が出る3つの場面(国税庁の計算例。4BTCを4,000,000円で買った人の、1回の取引ごとの所得)
場面取引所得の計算
売った0.2BTCを210,000円で売却した210,000円−(4,000,000円÷4BTC)×0.2BTC=10,000円
商品を買った403,000円(税込)の商品の支払いに0.3BTCを使った403,000円−(4,000,000円÷4BTC)×0.3BTC=103,000円
別の暗号資産に交換した1XRP=30,000円のときに、40XRPを1BTCで買った40XRP×30,000円−(4,000,000円÷4BTC)×1BTC=200,000円

商品を買った場面は、暗号資産をいったん譲渡して、その代金で商品を買ったのと同じに扱います。金銭以外の物や権利で収入したときは、その時点の価額が収入金額になるためです(所得税法36条1項・2項)。交換も同じで、手に入れた暗号資産の時価が、手放した暗号資産の譲渡価額になります。

取得価額の計算 — 総平均法が基本、移動平均法は届出をしてから

同じ暗号資産を年に何度も売り買いすると、どの買値を原価にするかが問題になります。所得税では、1単位あたりの取得価額を総平均法か移動平均法で計算し、評価方法を届け出ていない場合は総平均法によります(所得税法48条の2第1項・所得税法施行令119条の2第1項・119条の5第1項)。

総平均法は、年初の残高と年中に買った分をすべて足した金額を、その数量で割って1単位あたりの取得価額を出す方法です。移動平均法は、買うたびにその時点の残高と合わせて平均単価を計算し直し、年末に最も近い日の単価を使う方法です(所得税法施行令119条の2第1項)。

同じ取引を総平均法と移動平均法で計算した結果(国税庁の計算例。年間に6.5BTCを4,037,800円で買い、5BTCを5,295,000円で売った場合)
評価方法年末の1BTCあたりの取得価額年末に残る1.5BTCの評価額譲渡原価(年間)
総平均法621,200円931,800円3,106,000円
移動平均法638,400円957,600円3,080,200円

計算例の取引は、3月・6月・9月の3回に分けて6.5BTCを買い、7月と11月の2回に分けて5BTCを売ったものです。買った総額から年末に残る1.5BTCの評価額を引いた額が、その年の譲渡原価になり、売却額からこれと必要経費を引いた額が所得です。買う時期と値段が同じでも、評価方法で譲渡原価が変わることが、この例から分かります。

移動平均法を選ぶなら、届出は最初の年の確定申告期限まで

  1. 初めてその種類の暗号資産を買った日起点。この年分から評価方法を選べる
  2. 12月31日その年の取引を締め、年末の残高を評価する
  3. 翌年3月15日「所得税の暗号資産の評価方法の届出書」を税務署へ(確定申告期限)

届出をしなければ総平均法です。あとから変えるには税務署長の承認が要り、申請は変えたい年の3月15日までです。

必要経費と損失 — 手数料・回線代は経費、損は相殺できない

必要経費になるのは、売った暗号資産の譲渡原価と、売却のときに払った手数料です。インターネットの回線利用料やパソコンの購入費も、暗号資産の売却のために直接必要な部分に限って必要経費になります(所得税法37条1項・45条1項1号・所得税法施行令96条)。回線利用料は暗号資産の取引の分を明確に区分できる場合に限られ、パソコンは使える期間に分けて減価償却します。

損が出た年は、その損を他の所得から引けません。他の所得と通算できるのは不動産所得・事業所得・山林所得・譲渡所得の損失だけで、雑所得の損失は給与所得などから差し引けません(所得税法69条1項)。暗号資産の証拠金取引(レバレッジ取引)も、FXのような申告分離課税の対象から除かれていて、総合課税の雑所得です。

取引の履歴が残っていないときは、国内の交換業者なら年間取引報告書の再交付を頼めます。国外の交換業者や個人間の取引は、銀行口座の入出金と取引履歴、交換業者が公表する相場から自分で確かめます。売った暗号資産の取得価額が分からないときは、売却価額の5%を取得価額として計算することが認められています(所得税基本通達48の2-4)。

確定申告までの4つの段取り

  1. 年間取引報告書をそろえる

    国内の交換業者ごとに交付される。無ければ再交付を依頼する。国外の交換業者や個人間の取引は、口座の入出金と取引履歴から自分で整理する

  2. 計算書で所得を出す

    国税庁の「暗号資産の計算書」(総平均法用・移動平均法用)に報告書の数字を写す。前年から持ち越した分は年始残高に入れる

  3. 必要経費を区分する

    売却の手数料、暗号資産の取引の分を明確に区分できる回線利用料など

  4. 申告書に雑所得として書く

    給与2,000万円以下の会社員は、給与以外の所得が20万円以下なら所得税の申告は不要。住民税の申告は別に要る

令和8年度の改正で決まった方向と、よくある誤解

令和8年度税制改正の大綱には、暗号資産取引業者を通じた一定の暗号資産の譲渡による所得を、所得税15%・住民税5%の申告分離課税にし、損失を翌年以後3年間繰り越せるようにする改正が盛り込まれています。適用は、暗号資産を金融商品取引法の規制の対象にする改正法の施行日の属する年の翌年1月1日以後の譲渡からとされており、それより前の年分は、この記事のとおり総合課税の雑所得です。分離課税の対象にならない暗号資産の所得には、特別控除や損益通算はありません。

まとめ — 申告の要否は、取引の種類と金額を先に確かめる

暗号資産の申告でつまずくのは、計算そのものより「どの取引が所得になるか」の見落としです。売却・決済・交換の3つを年間取引報告書で拾い、総平均法で所得を出し、給与2,000万円以下の会社員なら20万円の線を確かめる、という順に進めれば、申告の要否は決まります。損失が出た年は他の所得と相殺できないので、節税の期待は持たない方が安全です。取引所が多い方、国外の取引所を使っている方、300万円を超える収入がある方は、帳簿の作り方から確かめることをお勧めしますので、早めにご相談ください。

※本記事の取扱いは、令和8年4月1日現在の法令・通達と、令和7年12月の国税庁のFAQによるものです。計算例の金額は国税庁の例をそのまま載せており、実際の所得は取引ごとの価額で計算します。

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※免責事項: 本コラムは一般的な情報のご提供を目的とするもので、個別の事案に対する税務上の助言ではありません。内容は執筆時点の法令等にもとづいており、その後の改正などにより現在の取り扱いと異なることがあります。正確な記載に努めていますが内容を保証するものではなく、本コラムの情報にもとづいて行われたご判断について、当事務所は責任を負いかねます。実際の手続きやご判断にあたっては、税理士等の専門家にご相談ください。

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