マイクロ法人に向く事業内容 — 職業別の向き不向きと選び方
「マイクロ法人を作りたいけれど、どの事業を法人に移せばいいのか分からない」— そんな段階の方に向けて、法人に移す事業の選び方を整理しました。向くとされる事業の型と、向きにくい事業の特徴を順に見ていきます。
この記事の要点
- 法人に移す事業の条件は「安定した売上・個人の本業との区分・名義の切り替え」の3つ
- 不動産賃貸や顧問契約のような、少額でも毎年こつこつ続く売上が向いている
- 単発の仕事が中心の事業や、資格・許認可が個人に紐づく事業は向きにくい
前提 — なぜ「どの事業を移すか」が大事なのか
ここでいうマイクロ法人は、個人事業を続けながら小さな法人をもう1つ持ち、社会保険はその法人の役員報酬で加入する形(いわゆる二刀流)を想定しています。
この形では、法人に移した事業の売上が毎年の維持費を賄い続ける必要があります。さらに、個人に残す事業と法人に移す事業がきちんと区分できていることが、仕組み全体の前提になります。
つまり「どの事業を移すか」は、金額の損得より前にある入口の問題なのです。
移す事業に求められる3つの条件
このうち1つでも欠けると、後から苦しくなります。売上が不安定なら維持費が賄えず、区分が曖昧なら税務上の説明に困り、名義を移せなければそもそも法人の事業になりません。
向いているとされる事業の型
| 事業の型 | 例 | 理由 |
|---|---|---|
| 資産運用型 | 不動産賃貸、太陽光発電 | 売上が安定していて、個人の本業と区分しやすい |
| 継続契約型 | 顧問契約、コンサルティング | 毎月の請求で売上が読みやすい |
| ストック型 | 広告収入、コンテンツ販売 | 手離れがよく、少額でも続きやすい |
共通するのは「こつこつ型」の売上だという点です。派手に稼ぐ事業ではなく、静かに続く事業のほうが、この仕組みには合っています。
向きにくい事業の特徴
逆に、次のような事業は法人側に置きにくいと考えられます。
- 単発の受注が中心で、年によって売上が大きく波打つ事業
- 資格や許認可が個人に紐づいていて、法人名義に切り替えられない事業
- 在庫を抱える物販(在庫管理と消費税の処理が重くなり、小さな法人の手に余りやすい)
とくに2)は見落としがちです。契約の巻き直しを取引先に頼めるかどうかも、この段階で確かめておきたいところです。
「同じ仕事を2つに分ける」は区分にならない
収入がどちらのものかは、名義ではなく実質で判断されます。業務の中身が同じなら、区分の説明は難しくなります。個人に残す事業と法人に移す事業は、仕事の中身そのものが分かれていることが望ましいのです。
数字の目安 — 維持費を賄えるか
法人側には、役員報酬を月4.5万円に抑えた場合でも社会保険料が会社と本人の合計で年約26.7万円(40歳未満・弊所試算)かかり、赤字でも法人住民税の均等割が年7万円ほどかかります。
移す事業の売上がこの水準に届かないなら、その事業を選ぶこと自体を考え直す必要があります。具体的な最低ラインは、下の関連記事で詳しく整理しています。
まとめ — 事業選びは金額より先の入口
マイクロ法人に向くのは、安定・区分・名義の3条件を満たす「こつこつ型」の事業です。ご自身の仕事のうち、どれなら切り出せそうでしょうか。
どの事業を移すかは、契約内容や取引先との関係で答えが変わります。実行の際は、事前に税理士へご相談ください。弊所でも、事業の分け方と数字の試算をあわせてお手伝いしています。
出典
※本記事の社会保険料は、協会けんぽ(東京)・令和8年度料率・40歳未満の前提での弊所試算です。向き不向きの記述は一般的な考え方の整理で、個々の事業への当てはめは個別の事情によって変わります。
※法人化の前に: 法人化すると、赤字の年でも法人住民税の均等割(年7万円ほど)が毎年かかります。増える事務も決算・申告や設立時の届出だけではありません。毎月の給与計算と源泉所得税の納付、年末調整、社会保険の算定基礎届など、個人事業には無かった手続きが毎年続きます。保険料や税金の差だけでなく、この固定費と手間まで含めてご判断ください。
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※免責事項: 本コラムは一般的な情報のご提供を目的とするもので、個別の事案に対する税務上の助言ではありません。内容は執筆時点の法令等にもとづいており、その後の改正などにより現在の取り扱いと異なることがあります。正確な記載に努めていますが内容を保証するものではなく、本コラムの情報にもとづいて行われたご判断について、当事務所は責任を負いかねます。実際の手続きやご判断にあたっては、税理士等の専門家にご相談ください。