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「個人事業主のまま社会保険に入れる」サービスにご注意 — 2026年3月の厚労省通知で否認の取扱いが明確になりました

コラム

「個人事業主のまま、法人の役員になって社会保険に入れる」— そんなサービスの案内を目にしたことはないでしょうか。2026年3月に国の取扱いが明確になり、この形の加入は取り消されるリスクがはっきりしました。仕組みと通知の内容、弊所の考え方を整理します。

この記事の要点

  • 個人事業主を法人の「役員」にして社会保険へ加入させるサービスは、実態がなければ資格を取り消されることが2026年3月の厚労省通知で明確になった
  • 役員報酬を上回る会費などを払っている場合、原則として加入は認められない
  • 弊所では国保のままと法人化の比較・試算は行うが、この種のサービスの利用はおすすめしていない

どんなサービスか「役員」の肩書だけで社会保険に入る仕組み

国民健康保険には、会社員の健康保険のような扶養の仕組みがなく、保険料は所得と家族の人数に応じて増えていきます。負担の重さに悩む個人事業主・フリーランスの方は少なくありません。

そこに現れたのが、「個人事業主のまま社会保険に入れる」とうたうサービスです。典型的な形では、運営側が用意した法人(一般社団法人など)の役員に形だけ就任し、低い役員報酬の設定で健康保険・厚生年金の加入を届け出ます。その一方で、役員報酬を上回る金額を「会費」などの名目で運営側へ支払わせる仕組みです。

社会保険料は低く設定した報酬額をもとに計算されるため、国民健康保険・国民年金より負担が軽く見えます。しかし、その法人の経営に実際に関わっていないのなら、それは「肩書だけの役員」です。

2026年3月の厚労省通知 — 判断基準がはっきりした

厚生労働省は2026年3月18日、「法人の役員である個人事業主等に係る被保険者資格の取扱いについて」という通知(保保発0318第1号・年管管発0318第1号)を出しました。まさにこの種のサービスの広がりを受けて、役員の形をとった個人事業主の社会保険加入をどう判断するかを明確にしたものです。

通知は、法人の役員が社会保険の被保険者になれるかどうかを、次の2点を基準に、実態を踏まえて総合的に判断するとしています。

  1. その業務が、実態として法人の経営への参画を内容とする経常的な労務の提供であること
  2. その報酬が、その業務の対価として法人から経常的に支払われていること

そのうえで、役員報酬を上回る会費などを法人側へ支払っている場合は、原則として業務の対価の支払いがあるとは認められないこと、勉強会への参加やアンケートへの回答、単なる活動報告や事業紹介への協力といった程度では経営への参画に当たらないことを、具体例つきで示しました。会費の支払先を関連法人に変えても、実質が同じなら扱いは同じです。

そして、法人に使用されている実態がないことが確認された場合は、資格喪失の届出を出させて被保険者資格を失わせると明記しました。事実と異なる資格取得の届出は、健康保険法48条・厚生年金保険法27条に反するとも指摘されています。

否認されるとどうなるか「安くなった分」より大きな負担が後から来る

資格がさかのぼって取り消されると、その期間は本来の国民健康保険・国民年金に入り直すことになります。保険料の徴収の時効は2年とされているため(国民健康保険法110条・国民年金法102条)、最大2年分の保険料をまとめて請求されるおそれがあります。納付が遅れれば延滞金がかかることもあります。

配偶者やお子さんを健康保険の被扶養者にしていた場合、その資格も一緒に失われます。サービスへ支払ってきた会費が戻ってくる保証もありません。目先の保険料が下がって見えても、後からまとめて精算される危険を抱え続ける形です。

「法人化して社会保険に入る」とは別の話です

紛らわしいのですが、自分の会社を作って社会保険に入ること自体は、正当な選択肢です。自分の事業を法人へ移し、その法人から役員報酬を受けるなら、経営への参画も報酬の実態もあります。通知が問題にしているのは、自分の事業と関係のない他人の法人で「肩書だけの役員」になる形です。

「肩書だけの役員就任」と「自分の法人での加入」の違い
項目肩書だけの役員就任サービス自分の法人を設立して加入
事業との関係他人の法人。自分の事業とは無関係自分の事業を法人へ移す
報酬低額の設定。上回る会費を払う形も事業の利益から役員報酬を受ける
通知後の扱い実態がなければ資格取消実態があれば通常どおり加入

弊所では、個人事業のまま国民健康保険を続ける場合と、法人化して社会保険に入る場合の有利・不利を、税金まで含めた実額で試算・比較しています。その結果「法人化しないほうがいい」という結論を、根拠の数字とセットでお伝えすることもあります。ただ、どちらの道を選ぶにしても、実態のある形で制度を使うことが前提です。肩書だけの役員就任で保険料だけを下げるこの種のサービスは、リスクが大きく、弊所ではおすすめしていません。ご相談を受けた場合も、その旨をはっきりお伝えしています。

すでに加入している方・勧誘を受けている方へ

いま勧誘を受けている方は、「役員として実際にどんな業務を行うのか」「報酬と会費の関係はどうなっているのか」を、通知の基準に照らして確かめてみてください。答えに詰まるようであれば、その加入は長続きしない可能性が高いです。

すでにこの形で加入している方は、時間がたつほど、さかのぼって精算される期間が積み上がっていく心配があります。脱退や国民健康保険への切り替えを含めた現状の整理を、年金事務所や専門家に早めにご相談ください。弊所でも、法人化の試算とあわせたご相談をお受けしています。

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※免責事項: 本コラムは一般的な情報のご提供を目的とするもので、個別の事案に対する税務上の助言ではありません。内容は執筆時点の法令等にもとづいており、その後の改正などにより現在の取り扱いと異なることがあります。正確な記載に努めていますが内容を保証するものではなく、本コラムの情報にもとづいて行われたご判断について、当事務所は責任を負いかねます。実際の手続きやご判断にあたっては、税理士等の専門家にご相談ください。

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